田中のミドル弾で同点に [写真]=慶應スポーツ
文=小林将平(慶應スポーツ)
JR東日本カップ2016第90回関東大学サッカーリーグ戦の前節は試合終了間際に痛恨の失点を許し、逆転負けを喫した慶應義塾大学。この日も23分に先制を許してしまう。しかし、重苦しい雰囲気を田中健太の目の覚めるような一撃で振り払うと、後半は山本哲平、松木駿之介にもゴールが生まれる。試合終盤、相手の猛攻に遭うもこの試合再三好守を見せていた上田朝都を中心に耐えて、試合終了。須田芳正監督が「今シーズン初めて選手たちが本当に思い切って自分たちの力を出してやり切ったというすごく良いゲームだった」と話すなど、上位浮上に向けて重要な勝ち点3となった。
日本体育大学にふがいない逆転負けを喫してから1週間。須田監督は「大幅にメンバーを変える」との宣言どおり、先発メンバーを代えてきた。ディフェンスラインは右サイドバックに手塚朋克を、センターバックには望月大知の相方に豊川功治を起用。中盤では落合祥也が初出場初先発を飾った。渡辺夏彦、田中健は久々の先発となった。そして何よりも大きな変化が、キャプテンマークを井上大が託されたことだ。これらの采配が果たして吉と出るか凶と出るか。
強い日差しが照り付ける中始まったこの試合。序盤から慶應大は順天堂大学に攻め込まれてしまう。5分、手塚のクリアが相手にわたってしまいペナルティーエリアに侵入される。折り返しからシュートを放たれるがここは豊川がブロックし切り抜けた。8分にも縦パスを通されペナルティーエリア内でシュートを放たれるが、これはGK上田が何とかストップ。すると、流れが徐々に慶應大に傾き始める。10分、田中健が右サイドからクロスを入れると、中で山本が合わせにいくが松木と重なってしまいシュートは枠を捉えることができない。17分には井上のクロスが山本の目の前にこぼれる。一対一のシーンだったが、山本はシュートを相手GKに当ててしまい、慶應大は先制のチャンスを逃してしまう。自分たちの流れの中で得点を奪えずにいると、23分に逆に先制点を与えてしまう。再び縦パスから浮田健誠に強引に中央を突破され失点。25分、29分にも相手にシュートチャンスを作られ、チームに嫌な雰囲気が漂い始める。だが、開幕戦以来の先発に燃える田中健がこの重苦しい雰囲気を吹き飛ばした。37分、手塚が右サイドから中央の山本にクロスを入れると、山本の落としを受けた田中健が左足を豪快に振り抜く。目の覚めるような弾丸シュートがゴール左上に突き刺さり、慶應大は同点で前半を終えた。
逆転を目指して後半に臨んだ慶應大だったが、後半開始早々の47分、右サイドを崩されてペナルティーエリア内で一対一の大ピンチ。ここは相手シュートがポストに当たり、失点を免れた。運も味方につけると、ピンチの後にチャンスあり。54分に待望の逆転ゴールが生まれる。宮地元貴がスローインからダイレクトでクロスを上げると、ペナルティーエリア内の山本が反応。見事なボレーシュートがゴールネットに吸い込まれ、慶應大が試合をひっくり返した。2トップのゴールに発奮したのか、66分には松木が魅せる。左コーナーフラッグ付近でのスローインから狭いスペースをドリブルで突破し、最後は相手GKとの駆け引きを制しゴールゲット。リードを2点に広げた慶應大だったが、ここから徐々に「集中力が切れて」(手塚)しまい、順天堂大の猛攻を受ける。75分にはペナルティーエリア手前からミドルシュートを放たれるも上田が横っ飛びでセーブ。何とか耐えていた慶應大だったが、79分にまたしても中央に簡単に縦パスを入れさせてしまい、最後は旗手怜央に決められ1点差に詰め寄られる。その後もミスからピンチを招くが、上田を中心に耐えて同点ゴールは許さず。1点差を守り切った慶應大が3勝目を挙げた。
田中、山本、松木と決めるべき選手にゴールが生まれ、チーム状態は確実に上向いている。ベンチにも好調の加瀬澤力をはじめ、虎視眈々と出場機会をうかがう選手たちが控え、前線のポジション争いは激しさを増すなど好循環が生じ始めた。一方で、この日再三縦パスを入れさせるなど寄せの甘さが目立った守備面はまだまだ改善が必要であり、メンバーも最適解を探している最中といったところか。上位浮上のためにも、そして月末の早慶戦に弾みをつけるためにも「もっと突き詰めて」(井上)、次節こそは今季初の連勝を成し遂げたい。
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