山本哲平(右)の反撃弾も一歩及ばず、慶應大はドロー決着に終わった [写真]=桑原大樹(慶應スポーツ)
JR東日本カップ2016 第90回関東大学サッカーリーグ戦 1部 中盤からようやく調子を上げてきたものの、第10節は11位流通経済大学相手に引き分けた慶應義塾大学。後期の優勝争いに食らいつくためにも、なんとしても勝ち点3がほしいところだ。前節から2トップを入れ替えた慶應大は、6分にCKから豊川功治のゴールで幸先良く先制。その後は駒澤大学の攻撃を防いでいたように見えたが、ボールを奪った後の丁寧さを欠き、リズムを作れない。そして55分、64分とセットプレーで逆転を許してしまう。嫌なムードが続いたが、田中健太の個人技から生まれた山本哲平の同点弾で勢いを取り戻すと、終盤は完全に慶應大ペース。しかし、逆転ゴールまでは至らず、前期最終戦を勝利で飾ることはできなかった。
高い気温の下で行われた第11節。須田芳正監督は「敵の間でボールを受けられる」片岡立綺を得点源の山本とともに2トップに起用し、ボールを大事にするサッカーで勝利を目指した。開始2分で失点を喫した前節とは変わって、慶應大は理想的な入りを見せる。素早い攻撃から駒澤大ゴールに迫ると4分、宮地元貴のロングボールに抜け出した山本からゴール正面の片岡にボールが渡る。片岡が左足で放ったシュートはGKに阻まれたが、このプレーで得たCKが先制ゴールにつながった。
手塚朋克のキックをニアサイドの松木駿之介がフリックすると、ファーサイドにいた望月大知がヘッドで折り返す。最後は豊川が合わせ、計算されたCKからゴールを決め、幸先の良いスタートを切った。しかしその後は攻撃がトーンダウンし、ボールをつなぐ意識を欠き、リズムを作れない。慶應大はカウンターに活路を見出そうとする。37分には、宮地のボール奪取から、負傷した手塚に代わって投入された左サイドの小谷春日がドリブルで切りこむ。最後はパスを受けた松木が右足を振り抜くも、シュートはゴール左へ。前半は1-0で終了。単発ながらも惜しいシュートを放つシーンがあった慶應大に対して、駒澤大のシュートは0本。悪くない展開で前半を折り返す。
しかし後半に入り、ボールを奪った後の丁寧さに欠ける慶應大に対し、駒澤大はサイド攻撃を増やして揺さぶりをかけ始める。55分、遠めからのFKをゴール前に放り込まれると、ヘディングで合わせられて失点。この同点弾で相手は勢いを増し、慶應大はつなぎのミスが目立ち始めてしまう。57分には駒澤大に危険なロングシュートを浴び肝を冷やすと、その後も悪い流れを修正できず、完全に駒澤大ペース。そして64分、左サイドのFKからヘディングシュートを放たれると、クロスバーに当たって跳ね返ったボールを押しこまれ、ついに逆転を許してしまう。
その後も押しこまれ続けた慶應大だったが、何とか失点は許さない。苦しい展開の中で75分に落合祥也に代えて加瀬澤力が投入し、ようやく自分たちのサッカーで点を奪いにいく。その姿勢が実ったのは79分。起点となったのは途中出場でキレのある動きを見せていた田中健太だった。左サイドのエリア近辺でボールを受けると、個人技で相手をかわして右足一閃。これはGKにはじき出されたが、こぼれ球を拾った松木が中に折り返すと、そこに待っていたのは山本。10番の2試合連続ゴールで慶應大が同点に追い付いた。
その後は慶應大が一気に勢いを取り戻し、逆転弾を狙いに行く。左サイドの小谷が立て続けにドリブルの仕掛けからのクロスでチャンスを演出すると、85分には加瀬澤のパスを受けた田中がドリブルでDFをかわしてシュートに持ち込むも、バーの上。87分には裏に抜けだした田中がエリア内で倒されたが笛は鳴らず。アディショナルタイムにはペナルティーエリア前でこぼれ球を拾った山本がシュートを放つもGKの正面。山本は天を仰いだ。結局、3点目を奪うことはできず、2-2でタイムアップ。慶應大は勝ち点1を獲得するにとどまった。
これで慶應大はリーグ5位で前期を終えることに。試合後、監督及びほとんどの選手が口をそろえて悔やんだのは、「自分たちのサッカーができなかった」ということだ。しっかりとパスコースを作り、ボールを大事にしてゴールを目指すというスタイルは、まだ選手たちに染みついていないのだろう。それでも、前期リーグ戦の序盤に比べるとそのクオリティは上がってきている。あとは、前節から続く拮抗した試合で、勝ち切ること。それができなければ、後期の優勝争いに絡むことは難しいだろう。目指している自分たちのサッカーをより成熟させ、「アミノバイタル」カップ2016 第5回関東大学サッカートーナメント大会、後期リーグ戦で勝ち切る力をつけた慶應大の姿を楽しみにしたい。
文=桑原大樹(慶應スポーツ)
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