インカレ出場へ。最終節を全力で戦う [写真]=森本凛太郎(慶應スポーツ)
JR東日本カップ2016第90回関東大学サッカーリーグ戦第21節 慶應義塾大学2-4筑波大学
文=桑原大樹(慶應スポーツ)
前節、早慶戦に勝利して激化する全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)出場権争いを一歩リードした慶應義塾大学は、今節は2位につける強敵・筑波大学と対戦。難しい試合となることが予想されたが、渡辺夏彦と山本哲平のツートップの連携から鮮やかな先制点を奪う。37分にもCKを豊川功治が頭で合わせて追加点。しかし前半アディショナルタイムに1点を返されて少し嫌な雰囲気で折り返すと、後半は完全に主導権を奪われよもやの3失点。屈辱的な逆転負けを喫し、自力でのインカレ出場の可能性が消滅した。
早慶戦の歓喜から1週間。勢いそのままにインカレ出場権をつかみ取りたい慶應大は、前節と同じスタメンを起用。良いイメージを持って、筑波大との一戦に臨んだ。
前半は両チームとも丁寧にパスを回しながらゴールに迫る展開。随所に高い技術を見せる両チームの攻撃陣は序盤から見せ場を作っていく。1分には筑波大が、4分には慶應大の山本がそれぞれペナルティエリア内でシュートを放ちゴールを脅かした。試合が動いたのは7分。豊川が鋭い縦パスを渡辺に通すと、渡辺は巧みな仕掛けで相手DF数人を引き付け、最後は山本に落とす。山本がフリーで狙いすまして放ったシュートは見事ゴール左隅へ。前節の早慶戦でも多くのシュートを放ちながら得点がなくゴールに飢えていたエースの一撃で、慶應大が大きな先制点を奪った。
その後試合は一進一退に。徐々に筑波大がボール保持率を高めていったものの、慶應大も渡辺、山本のツートップが積極的にボールを引き出してリズムを作った。そして次の得点を奪ったのは再び慶應大だった。37分、渡辺が先制点と同じような形で片岡立綺から縦パスを引き出すと、バイタルエリアから右サイドの手塚朋克へ展開。手塚が切り込んで放ったシュートは相手DFにブロックされたが、それで得たCKを豊川がヘッドで叩き込んだ。豊川はこれで今リーグ5得点目。頼れる男の得点でリードを2点に広げた慶應大は波に乗り、直後に試合を決定づけるビッグチャンスを迎える。40分、渡辺が相手DFのパスミスを拾い、ゴール前の山本へ。完全なGKとの一対一の場面だったが、ファーサイドへ流し込もうとした山本のシュートはわずかに枠を外れた。この時点では試合を優位に進める慶應大だったが、ここで試合を終わらせられなかったことが後に響いてくることとなる。良い形で折り返しかけた前半終了間際、右サイドから上げられたクロスをボレーで合わせられ失点。最後に水を差された格好で前半を終えた。
そして後半、試合は完全に筑波大のものとなった。小気味良いパス回しを見せる筑波大に対して、慶應大は前半とは一転、ほとんどボールをポゼッションできなくなってしまった。筑波大は特に慶應大の右サイドを突破し、多くのチャンスを作り出す。そして63分、その右サイドで直接FKを与えると、低い弾道のシュートは壁がブラインドになりGK田野稔明の股を抜けてネットを揺らし、ついに同点に追いつかれてしまう。なんとか流れを変えたい慶應大は67分、前半機能していたツートップに代えてスピードのある田中健太、小谷春日を同時投入。しかしその1分後だった。再び右サイドを破られてクロスを頭で合わせられ失点。一方的な展開で逆転を許してしまった。悪夢はまだ終わらない。73分にも同様に右サイドからのクロスをボレーで合わせられ、4失点目。76分、慶應大は期待の1年生FW多嶋田雅司を投入して得点を奪いにいったが、焦りからか全体がイージーなボールロストを繰り返し、逆にカウンターを幾度も食らう展開に。結局スコアは2-4のまま終了。後半のシュート数は12対0という屈辱的な結果に終わった。
この試合を一言で語るならば、須田芳正監督がしきりに強調した「実力差」という言葉に尽きるだろう。前半、電光掲示板の2-0の表示を見た観客たちは、前半だけで3点を奪い快勝した前節の早慶戦を思い浮かべたに違いない。しかし、リーグ2位のチームとの戦いはそう甘くはなかった。「3-0にしていたら勝っていただろう」と渡辺が語る、40分の山本の逸機。そして前半アディショナルタイムでの失点。勝負所をものにする力の有無が、そのまま現在の筑波大と慶應大の順位に表れている。そう感じざるを得ないゲームであった。とはいえ、リーグ戦はついに最終戦へ。チーム力は1週間で劇的に変わるものではない。慶應大にできることは 、残る一戦に全てを懸けることのみだ。最終節を前に慶應大はインカレ出場圏外の8位。インカレ出場権獲得は他会場の結果に左右されることとなるものの、勝利が求められる。荒鷲イレブンの意地と今シーズンの全てを懸けた、ベストゲームを期待したい。
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