山田暢久のエンジンは温まるのに時間を要する。毎年チーム始動時のキャンプでは超マイペース調整で、傍目にはやる気がないように見える。今季、2013シーズンの宮崎キャンプでも相変わらずの所作で、セカンドチームのリベロに組み込まれて平均的なプレーを繰り返していた。
しかし、浦和在籍20年目を迎えた大ベテランには彼なりの処世術がある。厳しいシーズンを戦い抜くためにはメリハリを付け、常にパワーを温存しておくことが重要なのだと、これまでのサッカー人生の中で理解しているのである。「冬は寒いでしょ。それで夏は暑い。特に暑い中でのサッカーは辛すぎるでしょ。こうなったら1年間、ずっと春か秋ならいいのになぁ」
捉えどころのない言動もまた、彼なりの照れ隠しだ。そうやって冬眠状態を装いながら、常に試合に向けて準備を重ねる。「どこのポジションでもプレーしますよ。いや、サイドはキツイかな。でもね、俺、プロですから。与えられた仕事はキッチリこなします」