サッカーの夢を叶える本 Powerd by I DREAM

テーマ募集

このコーナーでは、選書してほしいテーマを募集しております。時勢に合ったネタ、サッカーとは直接関係のないテーマ等々、なんでもかまいません。ブックディレクターの幅允孝氏が、あなた好みの本をセレクトしてくれます。

サッカーにまつわる経済/経済的効果が気になります

スポーツイベントの経済学―メガイベントとホームチームが都市を変える

原田宗彦(平凡社)

 石原前都知事から猪瀬現都知事に変わる時、焦点のひとつは2020年の東京五輪招致だった。震災復興、景気回復への願いを込めての招致と言われているけれど、なぜ五輪開催が日本の経済のためになるか。本書は、そうしたスポーツイベントとホームチームの存在が都市に及ぼす、経済的な影響力や可能性を論じている。

 五輪商業化の先駆けは、IOC委員長のピーター・ユベロスとアディダス社長ホルスト・ダスラーによって、マーケティングの観点でスポーツを眺めた「スポーツ権益の再販」というビジネスが完成する、84年のロサンゼルス五輪からだ。

 石原前都知事から猪瀬現都知事に変わる時、焦点のひとつは2020年の東京五輪招致だった。震災復興、景気回復への願いを込めての招致と言われているけれど、なぜ五輪開催が日本の経済のためになるか。本書は、そうしたスポーツイベントとホームチームの存在が都市に及ぼす、経済的な影響力や可能性を論じている。

 五輪商業化の先駆けは、IOC委員長のピーター・ユベロスとアディダス社長ホルスト・ダスラーによって、マーケティングの観点でスポーツを眺めた「スポーツ権益の再販」というビジネスが完成する、84年のロサンゼルス五輪からだ。

 98年仏W杯、地元の人々もあまり期待していなかった仏代表チームは、あれよあれよという間にブラジルを下し、優勝を手にした。その時のフランス国内視聴率はなんと93.3%。シャンゼリゼは150万の人で溢れ、シラク大統領はチーム全員と監督にレジオン・ドヌール勲章を授与している。優勝国フランス国内の利益こそ5億フラン程度だったけれど、サッカー連盟の登録者は20万人もの増加があった。一方日本は非開催国ながら1800億円もの特需があったという。国内では五輪、W杯以外にも、ユニバーシアードや各チームのホームタウンでの活動、相撲の地方巡業などもあり、様々なスポーツがただ観る楽しみだけに終わらない意味と経済的・社会的効果を含んでいる。

 著者も最後に触れているけれど、“観る”スポーツの経済効果ばかりが注目されるが、最近のより大きなマーケットとなってきた大人が“やる”スポーツという経済学的視点は、今後ますます重要になってくるだろう。

 

サッカービジネスほど素敵な仕事はない
たった一人で挑戦したFCバルセロナとの取引

浜田満(出版芸術社)

 サッカーにまつわるお金の多くは、選手の給料や移籍金、スタジアムでの入場料、ユニフォームの販売といった現場で生まれている。著者の浜田満は、海外クラブチームの日本展開を請け負う会社でサッカー仕事のキャリアを始め、バルサのライセンス商品の開発、オフィシャルショップの開店等を担当し、『キャプテン翼』の大空翼をFCバルセロナに正式入団させた、驚きの展開にも関わっている。

 その時のつながりを活かし、バルサのソシオ受付の日本代理店として独立。バルサ来日に合わせ、たった3週間の準備期間で臨んだ14日間限定の募集にも関わらず、あっという間に300人の募集があった。その後、来日試合終了後も継続して増加し、日本にファンがいるのかと不安視していたバルサ幹部は喜び、契約は継続となった。

 サッカーにまつわるお金の多くは、選手の給料や移籍金、スタジアムでの入場料、ユニフォームの販売といった現場で生まれている。著者の浜田満は、海外クラブチームの日本展開を請け負う会社でサッカー仕事のキャリアを始め、バルサのライセンス商品の開発、オフィシャルショップの開店等を担当し、『キャプテン翼』の大空翼をFCバルセロナに正式入団させた、驚きの展開にも関わっている。

 その時のつながりを活かし、バルサのソシオ受付の日本代理店として独立。バルサ来日に合わせ、たった3週間の準備期間で臨んだ14日間限定の募集にも関わらず、あっという間に300人の募集があった。その後、来日試合終了後も継続して増加し、日本にファンがいるのかと不安視していたバルサ幹部は喜び、契約は継続となった。

 現在全世界で16万人超が加入しているバルサのソシオ。ソシオになるためには年間€135(当時/年ごとに変動)の支払いが必要であり、浜田は契約1年目のみ、その25%を手数料として受け取ることになっていた。2週間で500人超の加入者があり、当時約230万円(€1=135円)の粗利を得る。そしてバルサも683万円の利益が、これから継続して入り続け、ソシオが増えれば増えるだけ収入は増える。

 カンテラに日本人として初めて入団した久保建英(しかも10歳で!)は、09年、浜田が横浜で開催したFCバルセロナキャンプに参加しMVPに選ばれたことがきっかけだった。久保はおそらく今後、ものすごい数字の金額を稼ぎだすだろう。浜田は自らをファンの代弁者であり、ファンとクラブの結び役だという。大きな産業になればなるだけ、こうした媒介者の存在はますます大事になってくるだろう。

 

サッカーで燃える国 野球で儲ける国
スポーツ文化の経済

ステファン・シマンスキー/アンドリュー・ジンバリスト(ダイヤモンド社)

 気になるタイトルである。最近の天文学的な移籍金の話しだけを聞いていると、サッカーも儲かってるじゃないか! と言いたくなるのだが、儲かっているのは一部のビッグクラブのみで、構造的には儲からないようになっているようだ。

 スポーツを文化的側面と経済的側面から論じた本書は、アメリカ人のジンバリストが野球を、イギリス人のシマンスキーがサッカーを書き、“野球は利益という狭い焦点をもった独占的な産業として発展してきたのに対して、サッカーは競争の激しいクラブを集めた包容力のある連盟として発展してきた”として、論が進められる。

 気になるタイトルである。最近の天文学的な移籍金の話しだけを聞いていると、サッカーも儲かってるじゃないか! と言いたくなるのだが、儲かっているのは一部のビッグクラブのみで、構造的には儲からないようになっているようだ。

 スポーツを文化的側面と経済的側面から論じた本書は、アメリカ人のジンバリストが野球を、イギリス人のシマンスキーがサッカーを書き、“野球は利益という狭い焦点をもった独占的な産業として発展してきたのに対して、サッカーは競争の激しいクラブを集めた包容力のある連盟として発展してきた”として、論が進められる。

 リーグ制と移籍を巡る具体的な数字と逸話がどんどんと展開され、どうにか選手たちに支払う給与を抑えようとする経営者たちの格闘が垣間見える。ヨーロッパに限って言えば、クラブの給与総額の順位がそのままチームの順位になる確率は9割近い。一方野球は、2〜5割程度。サッカーの方が相場との関係が強く、選手は分相応の給与をもらっていることになる。しかし、もし高額の給与を支払い、リーグ降格になった場合、悲惨なことになる可能性が高い。イギリスで支払不能になったクラブは「財産管理」をし、資産を投げ売り、買収先を見つけなくてはいけない。できなければ閉鎖だ。00〜04年、イングランドの92のプロクラブのうち、19が支払不能になり、うち3つのクラブは失敗を繰り返してさえいる。放映権料など、富の再分配をどれだけできるのかなど課題は多い。

 とはいえ独占的で儲けにくい構造だからこそ、自分が愛する弱小チームのジャイアントキリングに大興奮できるのだろうし、世界規模で愛されているのだと思うんだけど。

 

「Jリーグ」のマネジメント
─「百年構想」の「制度設計」はいかにして創造されたか

広瀬一郎(東洋経済新報社)

 元電通マンで、トヨタカップやワールドカップなどサッカー関連のイベントを多数プロデュースしてきた著者。Jリーグ経営諮問委員会の委員も務め、Jリーグを中からも外からも知る人物が書いた、Jリーグ「百年構想」の「制度設計」の裏側。

 93年のJリーグ開幕から20年。今年は、Jリーグの成り立ちを振り返り、制度がしっかりと継続運営可能かどうか検討するにはちょうどいいタイミングかもしれない。どこにどれだけの経費をかけ、売上を確保するのか。普通の企業が当然やることを徹底してやることがどうしたって必要になっている。Jリーグのロゴ制作で、博報堂が最初に1億円と脅しながら3000万円の提案をし、ありえない突っぱね、最終的に1000万に落ち着いた。さすが代理店という“ふっかけ”話しではあるが、開幕前年からJリーグは空前の好景気だった。博報堂は、3年間2億円という公式スポンサー権を8社に何の苦もなく売ってきたのだ。そんな時代でもあったということ。

 元電通マンで、トヨタカップやワールドカップなどサッカー関連のイベントを多数プロデュースしてきた著者。Jリーグ経営諮問委員会の委員も務め、Jリーグを中からも外からも知る人物が書いた、Jリーグ「百年構想」の「制度設計」の裏側。

 93年のJリーグ開幕から20年。今年は、Jリーグの成り立ちを振り返り、制度がしっかりと継続運営可能かどうか検討するにはちょうどいいタイミングかもしれない。どこにどれだけの経費をかけ、売上を確保するのか。普通の企業が当然やることを徹底してやることがどうしたって必要になっている。Jリーグのロゴ制作で、博報堂が最初に1億円と脅しながら3000万円の提案をし、ありえない突っぱね、最終的に1000万に落ち着いた。さすが代理店という“ふっかけ”話しではあるが、開幕前年からJリーグは空前の好景気だった。博報堂は、3年間2億円という公式スポンサー権を8社に何の苦もなく売ってきたのだ。そんな時代でもあったということ。

 驚いたのは、スポーツマーチャンダイジングの見学・研修のために参考にしたのが、ヨーロッパのサッカーリーグではなくアメリカのNFLだったということだ。NFLを参考に具体的な商品展開やアイディアを習得するとともに、「ファンとの接点」という、マーケティングの基礎的な顧客コミュニケーションの制度が作られていった。

 日本のスポーツは“学校体育”的であり、マネジメントの考え方がなかなか育たない土壌にあったという。現在は各地方にクラブができ、育成部門を持つところも増えている。アルビレックス新潟のように、サッカーに限らないスポーツ運営を行い、海外にも目を向けているクラブもある。Jリーグにはまだまだ進化の余地がたくさんありそうだ。

 

ヤバい経済学

スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー(東洋経済新報社)

「90年代のアメリカで犯罪が激減したのが中絶の合法化のおかげとは?」「銃とプールと危ないのはどちらか」「麻薬の売人はなぜいつまでも母親と住んでいるのか」「相撲取りと八百長のインセンティブ」。本書の項目は、こうした気になって仕方がない文言でうめつくされている。

 起こった出来事の表面をすくい、理解したつもりになっていることが、経済学的思考法を使うことで一気に違った顔を見せ始める。原因と結果を、インセンティブ(=人の意思決定や行動を変化させるような要因)を拠りどころに論理的に考えれば、相撲取りが八百長をすることは必然的なことになってしまうのだ。実際、八百長報道が明るみに出る以前、偶然にも本書はそのことを説明してしまっていた。神聖なスポーツと呼ばれる相撲の勝敗ですら経済学で分析できてしまう。

「90年代のアメリカで犯罪が激減したのが中絶の合法化のおかげとは?」「銃とプールと危ないのはどちらか」「麻薬の売人はなぜいつまでも母親と住んでいるのか」「相撲取りと八百長のインセンティブ」。本書の項目は、こうした気になって仕方がない文言でうめつくされている。

 起こった出来事の表面をすくい、理解したつもりになっていることが、経済学的思考法を使うことで一気に違った顔を見せ始める。原因と結果を、インセンティブ(=人の意思決定や行動を変化させるような要因)を拠りどころに論理的に考えれば、相撲取りが八百長をすることは必然的なことになってしまうのだ。実際、八百長報道が明るみに出る以前、偶然にも本書はそのことを説明してしまっていた。神聖なスポーツと呼ばれる相撲の勝敗ですら経済学で分析できてしまう。

 本書にサッカーの話題は登場しない(続編の『超ヤバい経済学』には“サッカー選手になるには何月に生まれると有利?”という項目があるが、これはスポーツ全般に言えそうだ)。本書の射程はサッカーにも応用できるのではないだろうか。例えば、生まれた土地のサッカーチームを応援するヨーロッパのサッカー文化の中で、自分と関係のないチームを応援し続ける人とのその後の違いなど。その街での生きやすさにさえ関わるサッカーとファンの関係を、経済学的に説明する本が待ち望まれる。本気のサポーターは常識はずれであったりして、データが当てにならないことも多そうだけど。

 
幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。
国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやTSUTAYA TOKYO ROPPONGI、LOVELESSなどにおける本のディレクションや、d-labo(スルガ銀行ミッドタウン支店内)などのライブラリー・ディレクションを手掛ける。ほか、編集、執筆、ディストリビューション等、本周りのあらゆる分野で活動中。最近では、渋谷のSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。

BACH : http://www.bach-inc.com

 

スルガ銀行が提供するウェブサッカーマガジン。サッカーから人生まで、すべての夢の、サポーター。あなたのゴールを、アシストします。「『サッカーの夢』を叶える本」コーナーの他に、サッカーと関係のある著名人のインタビュー集「ゆめのはなし」や、ライター竹田聡一郎氏の連載コラム「日々是蹴球」など、充実のコンテンツが揃っています。
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