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大学スポーツを、日本の文化に 加藤琢也(株式会社大学スポーツチャンネル 代表取締役)

2015.12.29
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「エンターテインメントとしての大学スポーツを目指していきたい。そのためにやれることはたくさんあるんです」

 そう話すのは、株式会社大学スポーツチャンネル代表取締役、加藤琢也さんだ。大学スポーツチャンネルは青山学院大学の学生によって組織された企業で、大学スポーツ全体の情報を発信するメディア『CSPark』(College Sports Park)の運営や、動画制作、WEBサイトの作成など、幅広い事業を展開している。

 大学4年生の時に代表を引き継ぎ、現在も大学スポーツ界で活躍する加藤さん。大学スポーツを盛り上げたいと考えた理由、そして、これからの大学スポーツへの想いを語ってくれた。

最初のきっかけは、大学サッカー観戦で感じた違和感

 加藤さん自身、サッカーは小学生の頃からやっていたという。「プレーするだけではなく、サッカー観戦も大好きだった」と話す彼は、ある大学サッカーの試合を観戦した時に違和感を覚えたという。

「『もったいないな』と思いました。高校サッカー界で騒がれていたようなスター選手が、大学サッカーでは注目されなくなっている。これはどうにかしたいと」

 そして青山学院大学に在籍していた時、彼の思いを具現化するきっかけとなる出来事があった。東京都が主催する学生起業家選手権で、加藤さんが所属するゼミの活動が優秀賞を受賞したのである。

「学生が同じ目線で大学スポーツを取り上げ、盛り上げていくのも面白いのではないか」

 そんな先輩たちの思いと、コンテスト優勝で得た資本金を元手に、会社はスタートした。その後、会社を立ち上げた先輩が卒業と同時に離職したため、加藤さんが代表の後を引き継ぐこととなったのである。当時のことを、加藤さんは次のように語る。

「代表を引き継ぐことには不安はなかったですね。それよりも大学サッカーや大学スポーツを良い方向に変えることで、日本のスポーツ界や日本社会を有意義なものにしたい、という思いが強かったです」

独自の新規事業を次々と生み出す

 加藤さんら青山学院大学の学生たちは、何から着手したのだろうか。

「初めは動画制作の事業からスタートしました。大学の広報のやり方が、それまでは紙面で伝えるだけだったんです。今、こういう学生が頑張っていますよ、ということがリアルな形で伝わるようにしたい、というところからスタートしました。その後、青学だけでなく他大学の情報も発信したいということで、『CSPark』を立ち上げました」

 冒頭で述べたように、『CSPark』とは様々な大学スポーツの情報を発信するメディアである。意外にも「それまで大学スポーツ全般を取り上げているメディアはなかった」という。「大学スポーツのことを知ってほしい」という、加藤さんたちの思いから誕生したプラットフォームだ。

 そんな中、各大学の運動部を取材で訪れることが増えた加藤さんは、新たな課題を発見する。

「部活の運営資金が足りないということですね。大学からの援助金もありますが、合宿も基本的には学生が自費で行くので、負担が大きい」

 このような現場の声に応えるために、「サシイレ」というサービスを始めた。

「『サシイレ』は言葉のとおり、部活側が必要としている物資を、支援したい人間が『差し入れ』できるサービスです。部活を応援したいと思っている人は結構いますが、応援の仕方がわからない。その想いを形にできれば良いな、という発想から生まれました」

 現在350以上の部活が登録しており、運営資金の改善だけでなく、選手とサポーターをつなぐ役割もあるのだという。加藤さんは、「選手とサポーターをつなげることは、部活側からの情報発信をする上でも重要なこと」と指摘する。

「プロであれば、選手の頑張りをクラブが公式ホームページで発信できますが、大学は自分たちから発信していくという土壌がまだできていなかったんです」

 そういった考えから『CSParkWEB』というサービスが生まれた。スタイリッシュで見やすいホームページを作成することで、大学の部活における広報の意識が高まり、世代が交代した後でも均一な情報を発信することにつながるのである。

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人の役に立って喜んでもらえることがやりがい

 様々な事業を展開し、多忙な日々を送る加藤さんだが、彼にとっての仕事のやりがいとは何だろうか。

「私自身の喜びのポイントも、自分の行為が相手の役に立ち、喜んでもらえるという他者の喜びから来るものなんです。会社の事業としてやらせていただいていることと同じですね。また、現場の声を引き上げて事業を展開しているので、現場の方と一緒に良い方向に進んでいるという実感はうれしいですね」

 誰かのために、という思いは、大学スポーツの情報発信の枠を超えた活動にもつながっている。

「学生アスリートのキャリア支援の活動も行っています。選手の就職活動のサポートですね。体育会出身の学生さんを求人している企業を呼んで説明会を開くなどの活動をやっています」

 加藤さんたちが学生アスリートの就職活動をサポートしようと考えた理由。それは「自分のキャリアをしっかり考えられる学生が少ないから」だという。

「プロになれる可能性の高い選手であればあるほど、プロになることしか考えていない。セカンドキャリアはプロサッカーの世界でも注目されていますが、今のプロサッカー選手の平均引退年齢は24歳くらい。それで辞めてしまう人がいる中で、将来的にどういう仕事をするのか。サッカーから学んだことを、どう社会に還元するのか。早いうちに考えてほしいと思っています」

目指すはエンターテインメントとしての大学スポーツ

 アメリカでは大学スポーツが非常に盛んである。アメリカのカレッジスポーツの市場規模は、メジャーリーグよりも大きいという。日本とはどうしてここまで違うのだろうか。

「そもそもスポーツを楽しむ文化が違うんです。アメリカでは地域の主要エンターテインメントとして、大学スポーツがすでに根付いているんですよね。サッカーの試合がある日はスタジアムの外でバーベキューを楽しめたり、親子で参加のできるイベントや出し物があったりと、一日中、満喫することができます」

 さらに加藤さんは、「大学スポーツは、楽しむこと以外にも多くの役割を担っていける」という。

「例えば地域活性化につながるという点ですね。大学はプロクラブよりも施設が大きく、地域に根付いていて、ハード面の財産を持っています。そういう部分を生かしながら、地元の皆さんと交流を深めていくことでその地域が盛り上がってコミュニティができて、良い文化を作り上げていくことができればいいですね」

 最後に、大学スポーツ界のために尽力している加藤さんならではの、大学サッカーを観戦する際のポイントを教えてもらった。

「大学サッカーには本当に良い選手がたくさんいるんです。それこそ現日本代表の長友佑都選手や谷口彰悟選手も大学出身ですし。そういう良い選手を見に来てほしいですね。また、大学サッカーは部活ごとに伝統があり、それぞれのストーリーがあります。そういったことにも注目していただけたら面白いと思いますね」

 大学の選手たちや地域の方々と寄り添って、大学スポーツを日本の文化にするという熱意と覚悟。加藤さんと大学スポーツチャンネルは、大学スポーツ界を大きく成長させてくれるだろう。

>>>CSParkはこちらから<<<

インタビュー・文=遠山雄二郎(サッカーキング・アカデミー
写真=小林浩一

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を担当しました。
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