
前回は公園など、屋外の狭いスペースで行える自主トレーニングを紹介しました。今回は家の中でも手軽に行えるメニューを紹介したいと思います。
メニュー内容を考案してくれたのは、ドイツでUEFA ライセンスを取得した経験があり、現在は鹿屋体育大学サッカー部のコーチを務める片山博義氏です。サッカーがうまくなるためのメンタルにつながるポイントも解説していただきました。
①利き足以外を使う室内トレーニング
一つ目のメニューは簡単です。

屋内専用のボールを用意して、利き足ではない側の足(右利きの人なら左足)を使って常にボールに触りながら生活します。足の裏やインサイド、アウトサイドなどさまざまな箇所を駆使し、食卓へ移動するときもドリブルで、食べている最中やテレビを見ているときもボールに足を乗せておきます。これを実践することで、左足の能力が飛躍的に伸びると思う人もいるかもしれませんが……、
「私の経験では、左足がうまくなるというよりも、利き足(右足)がどれだけボールを扱いやすいのかを再認識することが重要です。例えばずっと左手で文字を書いた後、次の日にパッと右手で文字を書くと、すごく右手が書きやすく感じるはず。そうすると上手くなったような気になる。それがポイントです。練習というのは、うまくなった気にさせる、勝てるような気にさせる、上手くなったと実感させるのが大切です。子どもには特に当てはまります」(片山氏)
これはある種の錯覚のようなものですが、サッカーが上手くなったような気になれば、子どもはまた練習をする意欲が沸いてくるものです。子どもの吸収力はスポンジ並なので、それがきっかけで本当の技術が身に付くことはよくあります。
注意点として、左足で扱うボールはサッカーボールか、それがなければ、サッカーボールよりもコントロールが難しいアメフト、ラグビー、バスケットなどのボールを使いましょう。もしも、バレーボールのように軽くて扱いやすいものを使うと、実際にピッチに出たときに逆に下手になったような気持ちになる恐れもあり、ポジティブな錯覚が起きなくなります。サッカーボールになったときに「簡単だ」と思わせることが大切です。
「元日本代表監督のオシム氏が多色ビブスを使って練習したのも同じ効果があります。実際の試合では2色しかないので、試合のほうが状況判断は簡単になります。自分が良い状況判断ができていると実感できるわけです」(片山氏)
ただし、毎日を左足で生活すると、それは逆に過剰なストレスにもなるので、週に1回程度で良いでしょう。例えば日曜日に試合があるのなら、3日前の木曜日くらいに左足で生活しておき、金曜日と土曜日の練習をうまくなった気分で行えば、良いメンタルで試合に臨むことができます。
②バスタオルでバランストレーニング
最後は体幹やバランス能力を鍛えるメニューです。バスタオルを用いて室内で行います。

1.四つ折にしたバスタオルを床に置く
2.片足でバスタオルの上に立つ
3.ボールを軽く投げてもらい、ヘディングやインサイドで返す
バランスボールの代わりに、バスタオルを使ったメニューです。バランスを鍛え、軸足が安定するとボールを蹴るときの姿勢が安定し、キック能力が上がります。運動器具はさまざまなものが発売されていますが、必ずしも器具を買う必要はなく、家にあるものでも工夫すれば十分代用できます。
難易度を上げたいときは、バスタオルの枚数を増やし、よりグラグラと揺れるように調整しても良いでしょう(ただし転ばない程度に)。あるいはバスタオルの上に、両足や片足で飛び乗り、そこから何かポーズを取ったりするのも効果的です(ただしバスタオルが崩れないように紐でくくるなどしておく)。
いろいろ工夫しながら、自主トレーニングにチャレンジしてみてください。
取材・文/清水英斗 イラスト/齋藤正太 写真/サカイク編集部
片山博義//
かたやま・ひろよし
東京都出身。1990年の高校在学中にドイツへサッカー留学し、プロ選手として活躍。96年にケガで現役を引退した後は指導者の道へ。FSVフランクフルトU-19のヘッドコーチなどを務めた実績のほか、Jリーガー数名のプライベートコーチとしても活動中。ドイツでUEFA 指導者ライセンスを取得し、現在は鹿屋体育大学サッカー部のコーチを務めている。
サカイク
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