文/竹田聡一郎
4月2日、「FCソウル対ベガルタ仙台」ソウルワールドカップスタジアム
JリーグとKリーグはどっちが強いのだろうか? アジアチャンピオンズリーグ(以下ACL)を現地取材し、その優劣を肌身で感じようというコラムの、第2回目。
FCソウル対ベガルタ仙台を観に、ソウルワールドカップスタジアムを訪れた。アウェー席は12000W(ウォン/10000W=900円くらい/以下同じ)だった。これはACLで一律料金らしく、いちばん高いS席でも20000Wにすぎない。国内リーグ戦もだいたい同じくらいの金額で、もちろん韓国は物価そのものが安いので一概には比較できないが、チケットの価格面ではKリーグ、ポイントプラス1である。
さてさて試合経過は専門誌などが報じたとおりだ。
5分、いきなりエクスデロにくらった。流麗なワンツーのリターンをそのまま振り抜くボレーで先制。浦和在籍時、あんなに力強く中央に進入してきたっけ? と思わせるパワーとスピードを兼ね備えたゴールだった。
22分、FKでの追加点も林卓人のミスではあるが、キッカーは元Jリーガーのキム・ジュンギュだった。
仙台は出鼻をくじかれたまま、すべてのプレーが後手となってしまい、昨年のリーグ戦で見せたボールホルダーの背中から次々と選手が出現する力強いオフェンスはほとんど見られない。正直、苦しくも退屈なゲームになってきた。
その退屈をFCソウルのサポーターがチクチク刺激してくる。ゴール裏のサポーター軍団のコールはまあいいとして、バックスタンドにお立ち台のようなものを設置し、そこではKARAをこじらせたようなアガシ(韓国語で「お嬢さん」)が3人くるくると踊っていた。
時々、小さいボールをサポーターに向けて投げてプレゼントしたりと、「おい、試合観ろよ」といった感じである。さらには仙台のセットプレー時にはスクリーンに「ブブゼラタイム」と表示され、サポーターはぶーぶかと懐かしくもやかましい。後半にはジェット風船まで飛び出して、もう理解不能である。
ブーイングもブブゼラも含め、すべてのコールやノイズは本来、サポーターから自然発生するものではないのか。アガシはサッカーに必要なのか。それをチームがオフィシャルで仕掛けるのか? それがKリーグの文化なんだと開き直られると困ってしまうんだけど、なんだか僕の考えるサッカーやサポーターの在り方と違う。
そういう意味では500人程度だけど、はるばる杜の都からやってきた仙台サポーターのカントリーロードのほうが2000倍、響いてくる。
結局、試合は仙台がPKを得て1点を返すが、2─1でFCソウルの勝利。交代枠を使い切っていたFCソウルのGKが退場になり、中盤の選手が急造GKとなるなど、反撃のチャンスはあった。最後はヤナギ番長が出てきたが、それなりにピッチをうろうろしただけでフィニッシュまでは至らなかった。
前述のチームが仕掛けるブブゼラ、アガシの謎の踊りなど、FCソウルのチームとしての応援の仕方に共感できなかった。ごみを拾って帰る、Jリーグの仙台のサポーターの姿勢と比較して、「サッカー文化としてだせえ」とか、つついてやろうと思っていたが、負けてしまえばただの遠吠えにしかならないのが非常に悔しい。
試合後、敷地内の街灯をたよりにボールを蹴っている親子がいたので、写真を撮っていると、おっさんが、
「FCソウル、チャンピオン!」
と叫び出した。ちょっとカチンときて言い返そうとしたのだが、今日のゲームでは特に反撃のカードも持ってない。逆におっさん君は続ける。
「シュートゼロ、ノーノー」
だそうだ。ゼロではなかったけど、確かに仙台のシュートは少なかった。
さらに息子のほうは、股の下にボールをくぐらせて悔しがる仕草をして、ニヤニヤしながらわめいている。
「キーパー、ダサい!」
とか林卓人のトンネルのことを言っているのだろう。
でもな、先制点も、追加点も元Jリーガーなんだぜ。お前らはJリーガーの力でJクラブに勝ったんだぜ、と反論しようと思ったけど、言ってて自分がワケ分からなくなりそうだったから、これもやめた。今日のところは完敗だ。ビビンバ食ってマッコリ飲んで寝よう。明日は頼むぞ、太陽王。
●「JK戦争2013」バックナンバー
LCCで飛ぶアジアの戦い 第1回
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サッカー観戦はエアアジア・ジャパンで
成田⇔ソウル(仁川)・釜山に加え、4月26日から中部⇔ソウル(仁川)も就航、
詳しくはエアアジア・ジャパンHPをチェック
http://www.airasia.com/jp/ja/home.page
facebookページからも随時、お得なセール情報を配信中。
http://www.facebook.com/airasiajapan
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、スルガ銀行のサッカーweb「I Dream」で連載中のコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。
twitter:@takedasoichiro