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LCCで飛ぶアジアの戦い 第3回「笛ニモマケズ、PKニモマケズ」

2013.04.11

文/竹田聡一郎

4月3日、「水原三星対柏レイソル」水原ワールドカップスタジアム

  
 さて、全4試合のこのアウェイJKロードであるが、2戦目は柏である。
 思えばこのチームは不思議だ。4年前にJ2に降格したもの、2010年シーズンは年間2敗だけという無双状態で1年昇格を果たし、翌11年は返り咲いたJ1で優勝という、なんとも派手な近年である。
 
 ACLは昨季、初挑戦となり、グループリーグで全州現代に2勝し、ラウンド16で蔚山現代に負けるが、Kリーグ相手に2勝1敗と相性は悪くない。
 
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 この日も16分にレアンドロ・ドミンゲスを起点に田中順也のゴールで先制し、前半をリードして終える。引き分けでもいいアウェーで最高の経過ではある。
 
 しかし、試験も合コンもサッカーも、いつも問題は後半にやってくる。まさか後半45分で4本のPKを取られるとは(しかも、うち3本を外すとは)。

「まあ、手に当たってはいるけどよ、そもそもボックスの外じゃねーか?」という大谷秀和のハンドは菅野孝憲の男気ストップでことなきを得たが、2本目の近藤直也、3本目の藤田優人、4本目のキム・チャンスのプレーは、それぞれ背中に入っただけである。
 
 近藤と藤田にはイエローも出た。そりゃ、多少は押したり引いたりつかんだりしてるだろうけど、そんなのお互いさまというか、それをしないとディフェンスなんてできねーだろ、というレベルである。
 
 どれも僕がJ贔屓ということを差し引いてもファウルと断定できないプレーだった。2本目以降なんて2点以上リードしているんだから、柏のディフェンス陣は微妙なプレーすら避けていた。それなのに主審はいちゃもんのように笛を鳴らした。彼はアジアカップで川島にレッドカードを出したシリア人のモフセン・トーキーさんだという。紳士がウリの僕だからあんまりゲスな想像はしたくないけど、彼の自宅は某家電メーカーで統一されているのではないか。
 
 まあ、邪推はほどほどにして、柏の素晴らしさについて書く。
 とにかく柏は笛にもマケズ、狭いスタンドにもマケズ、PKを外し続けるチョン・テセにもマケズ、アウェーで大きな勝ち点3を勝ち取った。狩野健太があんなに汗のかける選手だったとは知らなかったし、工藤壮人は控え目にいって柏の宝物であろう。栗澤僚一はバランサーとして、スイッチャーとして、さらにはフィニッシャーとしても八面六臂の大活躍だった。レアンドロ・ドミンゲスにボールが入ると、正確には入りかけた段階から狩野と工藤と田中順也が一斉にフリーランを始める連動性の高さは、アジアでも屈指なのではないか。PK砲をくらいながらも6点を奪って圧勝した、いや、アウェーだし、レベルとしては圧勝の上の「テラ勝」とここは呼びたい。アウェー側のスタンドは大騒ぎで柏熱地帯である。
 
 ただ、その形をさらしすぎてしまったかな、という気がしないでもない。この先のノックアウトラウンドでは「10番に前を向かせない」という意志を持って各国クラブがよりハードな警備を敷いてくるだろう。その時に例えば狩野を起点とした変化を産み出せるか、あるいはジョルジ・ワグネルが効果的なサポートで警備を分散させるのか、臨機応変な攻撃のパターンをより多く見せることができれば、それはアジア制覇に直結するだろう。とはいえ、グループリーグ突破は次節にも決まりそうで、現段階でもっとも期待できるJ勢である。いやー、スカっとした。
 
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 帰り道、大木凡人みたいな髪型の若者に日本語で話しかけられた。ボク君という彼はジャーナリスト志望だという。
「おめでとうございます」
「ありがとう。柏、強かったでしょ」
 僕は柏サポではないけど、Jリーグ側として偉そうに応じる。調子に乗って「Jリーグ、強いでしょ。Kリーグより」とまで言うと、ボク君は気分を害したようで、反撃してきた。けっこう流暢だ。
 
「昨日、負けたじゃないですか。帰ったらWikipediaで調べてください。Kリーグが始まったのは1983年。でもJリーグは1993年です。だからKリーグのほうが強い」
 
 むちゃくちゃな理由である。歴史は大切だけど、それを強さと直結するのは短絡すぎる。そもそもお前ら八百長とかやってんじゃねーか、と僕は言う。するとボク君(ややこしいな)は、Jリーグのアジア枠はほとんどすべて韓国人選手に頼っている。だからKリーグのほうが偉いとか食い下がる。
 
 キリがないので、「とはいえ、今日は柏が勝ったんだからな」と僕が言うと、彼は「そうですね。でも来週は全北と浦項がまた勝ちます」と言う。ジャーナリスト志望の彼は来週の2試合も観る予定だという。メールアドレスを交換して別れた。
 
「鹿島の小笠原選手によろしく伝えてください。いい選手だからFCソウルは歓迎します」とのことだ。
 
 ちょっと面倒だけど、いいライバルができた。来週、また会えるだろうか。
 
 アウェー4連戦の旅。仙台が負け、柏が勝った。前半は1勝1敗だ。次週は浦和と広島が渡韓してくる。前者はJ最大のクラブで、後者はチャンピオンである。連勝に期待が高まる。さて、勝利のメクチュを飲みにゆこう。

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●「JK戦争2013」バックナンバー
LCCで飛ぶアジアの戦い 第1回
LCCで飛ぶアジアの戦い 第2回

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著者/竹田聡一郎(たけだ そういちろう)
1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、スルガ銀行のサッカーweb「I Dream」で連載中のコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。
twitter:@takedasoichiro

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