[サムライサッカーキング7月号 掲載]
中学生からセレッソ大阪の育成組織で育ち、プロ1年目から背番号13を背負う。香川真司、清武弘嗣、乾貴士ら世界へ飛び立った偉大な先輩たちの系譜を継ぐ南野拓実は、世界と自身の距離をどう感じ、どんな目標を設定しているのか。純真な視線で見据える青写真について語った。
インタビュー・文=浅野祐介 写真=伊藤 信
充実のプロ1年目やっていけるという手応え
──サッカーを始めたのは何歳の時ですか?
南野 3歳年上の兄の影響で、幼稚園に入る前から遊び感覚でボールを蹴っていました。はっきりとは覚えていませんが、それくらい小さい頃からやっていました。当時はあまりポジションは関係ありませんでしたが、前目のポジションが好きでしたね。
──プロ選手を意識し始めたのはいつ頃ですか?
南野 小さい頃から、ずっとプロを目指してやってきました。中学に上がる時にセレッソ大阪のジュニアユースに入り、現実的に意識し始めたのはその頃からですね。
──今シーズンはプロ契約を結び、開幕から出場を続けています。プロとしての自分には慣れてきましたか?
南野 昨年も2種登録で試合に出してもらっていたので、今年のキャンプの時からすんなりチームに溶け込めましたし、プロとしての生活には慣れましたね。
──昨シーズンは初得点を記録しましたが、そのゴールを改めて振り返ってみていかがですか?
南野 すごく自信になりましたし、「プロの世界でも自分のストロングポイントが通用する」という手応えをゴールでつかむことができました。
──実際に試合に出てみて、ユース年代とプロの違いはどういうところに感じますか?
南野 やはりユースとは違い結果を求められますし、結果を残さなければ生き残っていけません。そういうこだわりはプロのほうが強いですし、自分ももっとこだわっていきたいですね。
──プロの舞台で通じている部分、自信を持っている武器はどういうところですか?
南野 ターンからシュートを打つことや、ゴール前で前を向いてボールを持った時に、相手の嫌なところを突いていくプレーは、ユース時代からずっと取り組んできました。良い形でボールを持つことができれば、プロでも通用するという手応えをつかめているので、ゴールに直結するプレーを増やしていきたいと思います。
──逆に、足りない部分や伸ばしていきたい部分はありますか?
南野 ゴールを取りたい気持ちが強過ぎて、周りを生かせていない部分がまだまだあるので、余裕を持って、冷静にプレーしていければもっと良くなると思います。
──香川真司選手や清武弘嗣選手といったC大阪の先輩が、Jリーグの舞台で活躍し、続々と海外に渡ってトップレベルでプレーしています。南野選手自身は、将来的に海外でプレーすることについてどういうイメージを持っていますか?
南野 世界で活躍している選手が自分のいるチームにいて、すごく身近に感じました。自分もいずれは海外でやりたいという気持ちもありますし、常に高いところを目指してやっています。
──海外のサッカーは見たりしますか?
南野 昨年までは学校と練習があり、あまり見る時間がありませんでしたが、たまに誰かがダビングしたものを見たりしました。
──香川選手のマンチェスター・ユナイテッド戦でのハットトリックは見ましたか?
南野 見ました。
──どういう感想を持たれました?
南野 ゴールに流し込んだ2点目は、相手の動きを見ていて、簡単そうに見えますが、すごく技術が詰まったプレーだと思いました。ああいうプレーはすごいと思って見ていました。
──香川選手のプレーで参考になる部分はどの辺りですか?
南野 相手の間でボールを受けてゴールに向かっていく部分は、世界トップレベルでも上手くできていますし、そういう部分は真似していきたいと思います。
世界と伍して戦うために更にこだわるべき部分
──サッカーは世界中の国でやっていて、世界を舞台に戦える競技だと思います。サッカーで世界を初めて意識したのはいつ頃でしょうか?
南野 U-17ワールドカップで世界の同年代の選手と対戦した時ですね。それまでは世界での自分の立ち位置が分かりませんでしたが、その大会をきっかけに手応えや自分の足りない部分をつかむことができ、良い経験ができたと思います。
──具体的に足りないと感じたのはどういう点ですか?
南野 ゴールに直結するプレーが個人としては少なかったですし、結果もついてきませんでした。貪欲にゴールを狙う姿勢が足りないと思いました。
──前年に行われたAFC U-16選手権では大会得点王を獲得しました。アジアでの戦いは独特の雰囲気があると思うのですが、アジアの舞台における日本の武器は何だと思いますか?
南野 「止めて蹴る」というシンプルな技術やボールを動かして相手を崩せる点は、アジアでもトップレベルだと思います。そういった良いプレーを出せたからこそ、世界大会の切符を獲得できたのだと思います。しかし、アジアでの戦いでは厳しい面が多いですし、すごく良い経験になりました。
──U-17W杯では、グループリーグでフランスに引き分け、アルゼンチンに3-1で勝利しました。いわゆる強豪国と互角以上に渡り合ったと思いますが、自分たちが予想していた展開でしたか?
南野 引き分けを狙って試合に臨んだわけではないですし、勝つためにやっていたので、予想どおりということはないです。ただ、強豪国だからといって名前負けもしませんでしたし、自分たちのプレーをすれば絶対に結果がついてくると信じてやっていました。
──ベスト16でブラジルを相手に、惜しくも2-3で敗れました。勝敗を分けたポイントはどこにあったと思いますか?
南野 世界との差を最も感じたのがブラジル戦でした。ワンチャンスをものにする決定力の高さやシュートに持っていく力強さは、今の自分と比べてみても足りなかったと思います。だからこそ、そういう部分にこだわっていかないと世界では戦っていけないと思いますね。
──チームとしてはどういう部分で通用し、どういう部分で伸ばしていく必要があると思いますか?
南野 技術に関しては通用していましたし、もっと伸ばしていければいいと思います。足りない部分は、ゴールへの貪欲さやシュート技術といった細かい点がまだまだだと思いますね。
──海外の選手で目標にしている選手、参考にしている選手はいますか?
南野 特別にはいませんが、海外だけではなく香川選手や清武選手など、いろいろな選手を見て、良いプレーをやってみようという感じです。
──海外で好きなリーグや見ていて楽しいリーグはありますか?
南野 日本人選手はドイツに多く行っていますが、それがきっかけでブンデスリーガを見るようになりました。観客も多いですし、ああいう雰囲気の中でやりたいと感じますね。
先輩の活躍に刺激を受けながら世界の大舞台を目指す
──C大阪から先輩たちが世界へ旅立っていますが、世界で通用する選手の条件は何だと思いますか?
南野 日本人の良さである技術の高さや運動量、チームに徹するプレーを、出していければいいと思います。
──南野選手自身が幼い頃から取り組んでいて、現在に生かされている練習やメニューはありますか?
南野 中学、高校の時はきつい練習が多いと思います。自分もきつい練習を乗り越えました。その時に培われた運動量は今にも生きていますし、きつい練習の中で正確な技術を発揮できるかということを意識してやっていました。一つひとつのパスやトラップを意識してやっていれば、絶対に生きてくると思います。
──このインタビューを見て、「それでもきつい練習ってさ……」と思う人もいると思います。南野選手の場合は、きつい練習でどのようにモチベーションを上げて取り組んでいましたか?
南野 強い気持ちを持ち、「このトレーニングが自分の力になっている」と思ってやっていました。それでもきついですが、チームメートと声を掛け合い、自分がチームメートを引っ張っていくという気持ちでやっていました。前向きな気持ちで取り組めばプラスになると思います。
──挫折の経験はありますか?
南野 うまくいかない時もありますが、あまり考えずにすぐに切り替えます。「明日があるから」というか、どんどん切り替えていましたね。
──同世代の日本人選手でライバル視している選手はいますか?
南野 セレッソには海外に移籍した選手もいますし、今のチームメートにもオリンピックを経験している選手がいます。ライバルではないですが、いろいろなことを聞いたりしています。そういう選手たちが感じたことを聞いて、意識してやっていくことがレベルアップにつながると思うので。自分のチームから海外に移籍した選手がいるということは刺激になりますね。
──先輩には積極的に話を聞いたりするんですか?
南野 はい。ユース出身の先輩たちが多く、良い意味で上下関係がないので。
──外から見ていても良い関係に思います。一番話しやすい先輩は誰ですか?
南野 タカ君(扇原貴宏)は話しやすいですし、声を掛けてくれます。昨年トップに上がった時も、優しく声を掛けてくれました。タカ君だけでなく、ユース上がりの先輩たちはみんな気を遣ってくれますし、そのおかげでチームに溶け込めたと思います。
──今シーズンは、正式にプロ1年目です。どういうシーズンにしたいですか?
南野 1年目とは言っても、年齢は関係ないですし、結果を求められる世界なので、積極的に自分をアピールしていきたいです。その中でチームに貢献していくことが大切だと思うので、貪欲にやっていきたいと思います。
──将来的にはどういうプレーヤーになっていたいですか?
南野 自分の最大の目標は、世界のビッグクラブの中心選手としてプレーすることなので、まだまだやることがいっぱいあります。まずはJリーグで優勝することが目標なので、しっかりやっていきたいと思います。