<a href='https://www.soccer-king.jp/sk_column/article/119198.html'>植田直通(鹿島アントラーズ)「継続は力なり」</a>
[サムライサッカーキング7月号 掲載]
テコンドー仕込みの圧倒的な空中戦の強さ。センターバックとして比類なきポテンシャルを秘める植田直通は今、プロ1年目の壁の前で必死にもがき、自己を研鑽している。継続することを何よりも大切にする“練習の鬼”は、掲げた目標に向かって真っ直ぐに進んでいる。
インタビュー・文=浅野祐介 写真=佐山順丸
あえて飛び込んだ強豪校で培った強い気持ち
──まず始めに、サッカーを始めたのは何歳の頃ですか?
植田 小学校3年生の時ですね。友達に誘われてサッカークラブに入りました。
──その当時ポジションはどこをやっていましたか?
植田 ポジションは、あまりこだわっていませんでした。攻撃も守備もどちらもやっていました。
──高校はレギュラー争いの激しい大津高校という強豪に進学しましたが、強豪校を選んだ理由を教えてください。
植田 中学校では部員数も少なく、レギュラー争いがなかったため、試合に出ることが当たり前でしたが、あまりそういう環境が好きではありませんでした。熊本で強豪といえば大津高で、100人以上の部員がいる中で、11人しか出場できない、という激しいレギュラー争いの中に身を置きたい、そこでレギュラーを勝ち取りたいと思い、進学を決めました。
──自信はありましたか?
植田 下手でしたが、先輩のプレーを見て吸収し、ステップアップしていければいいと思っていました。少しは時間が掛かるとは思っていました。
──高校3年間を振り返ってみて、一番成長したと思うのはどういった部分でしょうか?
植田 高校2年生の時に、高校選手権の県予選の準決勝で負けたんですね。先輩たちには本当にお世話になっていたし、そこで自分としてもすごく悔しい思いをしたので、自分たちの代で絶対に借りを返そうと思いました。その後は「すべてのタイトルを獲得する」というモチベーションの中でやっていました。
──技術もそうですが、気持ちの面で成長したということですか?
植田 そうですね。高校サッカーは気持ちだと思っています。
──プロとして初めてのシーズンはいかがですか?
植田 高校とは違い、意識もレベルも高いです。簡単に試合に出られる環境ではないですが、先輩たちのプレーを盗み、自分のレベルを上げていきたいです。日々の練習を継続してやっていきたいですね。
──プロ意識を学ぶという点では、とても良いクラブに入ったと思いますが、自分を高めるための環境として、鹿島アントラーズいかがですか?
植田 センターバックのポジションは人数も多く、レギュラー争いが激しいです。毎日の練習が競争ですし、日々レベルが上がっていると感じますね。
──プロの舞台で通用すると自信を持って言える武器は何でしょうか?
植田 対人プレーとヘディングは誰にも負けない自信があります。
──逆に、伸ばしていかなければいけない点はどこでしょうか?
植田 技術というか、パスなど、一つひとつの基本的なプレーの精度を上げていきたいです。
世界と対面する中で得た自信と課題
──サッカーというスポーツは、世界という目標をイメージしやすい競技の一つだと思います。植田選手が初めて世界を意識したのはいつ頃でしょうか?
植田 初めて世代別の日本代表として海外の選手と対戦した時ですね。海外の選手は身体が大きかったですが、国を代表している身として絶対に負けたくないと、がむしゃらにやっていました。
──緊張しないタイプと聞きましたが、代表の試合でも緊張はしませんか?
植田 気合いで紛らわしています。
──そういう紛らわし方は初めて聞きました(笑)。2010年にはAFC U-16選手権に出場し、ベスト4に進出しました。アジアの舞台で戦って何か感じたことはありましたか?
植田 1点の重みを感じましたね。自分がDFとしてピッチに立っている中で、1失点で負けてしまう試合もあったので、やはり無失点で終えなければいけないと思いました。
──海外の選手と対峙してみて、日本のFWと異なる点はありましたか?
植田 海外の選手のほうがやりやすいと感じました。日本人はすばしっこいですが、海外の選手は縦に力で突破してくることが多いので、自分としてはそういうタイプのほうが合っていますね。
──真っ向勝負を挑んでくる世界のFWのほうがやりがいがあると。
植田 相手がパワーをストロングポイントにしている場合が多く、そういう部分では僕も負けられないというプライドがあります。
──11年にはU-17ワールドカップに出場し、ベスト8に進出しました。この大会ではどういうことを感じましたか?
植田 チームが一つになれば、コンセプトを表現できて、それを試合で出すことができるというのを実感できました。
──ベスト8では、ブラジルに2-3で惜しくも敗れました。勝敗を分けたポイントはどこにあったと思いますか?
植田 最初に3失点をしてしまったのが大きかったと思います。3失点すると攻撃もあきらめがちになってしまいますし、ディフェンスは最低でも1失点に抑えておかなければいけません。2点取って勝てないというのは、ディフェンスの責任だと思っています。
──大会を通じて、チームとして通用した部分と、伸ばしていかなければいけない部分を教えてください。
植田 ポゼッションでは上回っていたと思いましたし、そういう部分での崩しは良かったと思いますが、個人的にはもっと自信を持ってやれていれば、ブラジル相手にも引かずにやれたと思いました。
──強豪を前にしてひるんでしまう瞬間があったということですか?
植田 相手がブラジルということで、あのカナリア色のユニフォームに怖気づいていたかもしれません。それを力に変えて、「強い相手こそやってやろう」という気持ちでできれば良かったです。
──大会でどういうものを得ることができましたか?
植田 いろいろな国と戦って、国によってストロングポイントが違うことを実感しました。ロングボールを蹴ってくるチームには、自分のヘディングは通用しましたし、自分が苦手なすばしっこい相手に対しても、どういう対応をしたら止めれるかを肌で感じることができて、学ぶことがたくさんありました。
今試合に出るだけでなくその先のステップも見据えて
──目標にしている選手や参考にしている選手はいますか?
植田 バルセロナの(カルレス)プジョルですね。
──それはなぜですか?
植田 闘志というか、気持ち的な部分が大好きですね。あの身長であそこまでヘディングが強い選手はいないと思うので、尊敬しています。
──海外のサッカーを見たりしますか?
植田 サッカーはあまり見ませんね。普段は映画とかしか見ないです。だから選手も全然分かりません(笑)。それこそ、バルサとかしか知らないので、強いて言うならリーガ・エスパニョーラは好きかもしれません。
──ちなみに最近見た中で面白かった映画は何ですか?
植田 映画とはちょっと違いますが、この前、1週間ぐらいかけて『プリズンブレイク』(米ドラマ)を全部見ました。こんなに面白いものはないんじゃないか、というくらいはまりました。
──テコンドーをやっていたというのは本当ですか? かなり有望な成績も残されたと聞きましたが。
植田 やっていましたね。全国大会にも出場しましたし、韓国で行われた世界大会のようなものにも出場したことがあります。
──テコンドーを始めたのはなぜですか?
植田 保育園の時の園長先生の旦那さんが指導してくれて、小学校2年生から、親の勧めで始めました。小学校6年生までやっていました。
──最終的にはサッカーを選択しましたが、決め手は何でしたか?
植田 実はテコンドーが大嫌いで、無理やり行かされていたんです(笑)。練習も日曜日の15時ぐらいから19時ぐらいまであって、小学生なら遊びたい時間ですよね。それが嫌でしたね。中学校に進み、サッカー部に入ることを理由にしてやめました。
──テコンドーがサッカーに生きている部分はありますか?
植田 結構ありますね。チャージの際の強さだったり、ボディコンタクトがある時には、テコンドーの経験が生きていると感じます。
──サッカーの話に戻ります。世代別で世界の舞台で戦った経験を踏まえ、どういう選手が世界で通用する選手になっていくものだと思いますか?
植田 やはり意識が高くなければ上にはいけないと思っています。どんなことでも毎日続けるという継続性がある選手でなければ、上にはいけないと考えています。自分も今、ベンチ外で、残り組のメンバーで練習をやる時も、「監督からベンチ外の選手の出来を試されている」という気持ちを持ち、意識を高くやっています。いつかはチャンスが回ってくると思いますし、そのチャンスのために継続してやっていきたいと思っています。
──鹿島では柴崎(岳)選手を始め、比較的年齢が近い選手も既に主力としてプレーしています。植田選手にとってそうした近い年代の存在はどういうものでしょうか?
植田 年齢が近い先輩たちが試合に出場しているのを見ると、「自分も早く試合に出て一緒にプレーしたい」という思いになりますし、そういう選手にいろいろ話を聞いて、吸収したいと思います。練習中から、見て学ぼうと思っています。
──同年代でライバル視、意識している選手はいますか?
植田 代表で一緒にセンターバックをやっていたヴィッセル神戸の岩波(拓也)は、J2ですが試合に出ています。自分も早く試合に出て、負けないように成長したいと思います。
──植田選手は将来的にどういうプレーヤーになりたいですか?
植田 チームに貢献できるような選手になりたいです。ディフェンスが良ければタイトルが取れる、という部分もあると思うので、絶対に点を入れさせないことを心掛け、チームのために体を張って止めたいです。あとは攻撃陣を信じ、自分も点を取れる時は取る選手になりたいですね。
──今シーズンも半分を消化しました。残りはどんなシーズンにしたいですか?
植田 最初は我慢が必要だと思いますし、毎日の練習が競争だと思っています。プロの世界は結果がすべてだと思うので、先輩でも関係なくガツガツいって、監督にアピールし、少しでも早く試合に出れるようにしたいです。