苦難を乗り越え、ブレイクを果たしたタウンゼンド「想像以上の出来事が起きている」

[ワールドサッカーキング1121号掲載]

あまりにも鮮烈なイングランド代表デビューだった。ワールドカップ出場へ向けて大事なモンテネグロ戦、スタメンに大抜てきされたアンドロス・タウンゼンドはクラブでの勢いそのままに豪快なゴールを奪ってみせた。ローン移籍を繰り返したキャリア初期、その苦難を乗り越えて快足ウイングがついに表舞台へと躍り出た。

インタビュー・文=クリス・ヘザラル Interview and text by Chris HATHERALL
翻訳=田島 大 Translation by Dai TAJIMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

 今、イングランドで最も勢いのある若手選手は誰か。この問い掛けに、多くのファンが「アンドロス・タウンゼンド」と答えるだろう。

 2013-14シーズンのプレミアリーグ序盤、タウンゼンドはトッテナムの切り込み隊長として、アーセナルで大活躍を見せるアーロン・ラムジーと注目を二分した。スピードに乗ったドリブル突破、とにかくシュートへ持ち込もうとする積極的な姿勢は、チームに多くの決定機と勝利をもたらしている。

 この活躍をイングランド代表監督のロイ・ホジソンが見過ごすはずもなく、10月に行われたモンテネグロとのワールドカップ予選で念願の代表デビュー。この試合でスタメンに大抜てきされたタウンゼンドは後半に目の覚めるようなロングシュートをたたき込んで、自らのデビュー戦に華を添えた。

 今シーズン開幕前まで無名だった22歳が、紆余曲折を経てたどりついた日の当たる場所。「僕は長いこと辛抱して頑張ってきた。そして、ようやくスポットライトを浴びることができた。だから、絶対にこの舞台から降りたくない」。まばゆいスポットライトの下でタウンゼンドの真のキャリアがスタートした。

想像以上の出来事が起こっている

――今シーズンはトッテナムでレギュラーに定着し、イングランド代表でも一躍ヒーローになった。トッテナムから何度もローンに出されていた頃、今の自分が想像できた?

タウンゼンド 夢として思い描いてはいたけど、自分がトッテナムで毎週のように試合に出られるようになるなんて、開幕前のサマーキャンプの時期ですら想像もしてなかった。イングランド代表で2キャップを刻んでいるなんてなおさらさ。想像以上の出来事が起こっているんだ。ただ、今後もこの素晴らしい日々を持続できるかはすべて自分の頑張り次第だと思っている。

――君はトッテナムから実に9回もローンに出された。プロの世界で成功できるかどうか心配にはならなかった?

タウンゼンド 確かに不安はあった。それでも前向きに考えて、自分の力を信じるしかなかった。とにかく成長しようと努力し、毎日が勉強だと思い続けたよ。

――今シーズンのブレイクは何がきっかけだったのかな?

タウンゼンド 努力だよ。それから、自分に信頼を寄せてくれる人たちとの出会いだ。例えば、アンドレ・ヴィラス・ボアス監督だったり、QPRのハリー・レドナップ監督だったりね。ヴィラス・ボアスは他の経験豊富な選手をよそに僕にチャンスをくれた。そして昨シーズン後半戦、レドナップはQPRにローンで加入した僕に信頼を寄せてくれた。あれは僕にとって運命の分かれ道だった。レドナップは僕にプレミアリーグで定期的にプレーする機会を与えてくれたんだ。あそこで活躍することができたからこそ、トッテナムに戻って来てから良い形でシーズンのスタートを迎えることができた。彼への感謝の気持ちは一生忘れない。

――君はこの夏、賭博関与によってFAから謹慎処分を受け、U-21欧州選手権に出場することができなかった。それが来年の夏はブラジルにいるかもしれない。想像できる?

タウンゼンド ご存じのとおり、今年の夏は悲惨な思いをした。U-21代表の一員として欧州選手権に出場するチャンスがあったのに、最終的には出られなかったからね。でも、結果的にオフをリラックスして過ごせたし、新シーズンに向けての準備に専念できた。必ず強くなって戻って来ようと思っていたし、実際にそれができたと自負しているよ。

――2014年の夏は全く違うものになりそうだね。

タウンゼンド 今はまだ、来年のことは考えられない。ここで浮かれてたら意味がないからね。とにかく今はクラブでのプレーに集中する。トッテナムで全力でプレーしていれば、シーズン終了後にご褒美が待っていると信じている。

――君は真面目なんだね。

タウンゼンド 僕はフットボールのために生きている。飲みに行ったり、パーティーを開いたりするタイプじゃない。フットボールだけで十分なんだ。例えば、土曜日の夜は家に帰ってテレビでリーガ・エスパニョーラを見ている。常に“フットボール漬け”なのさ。だからこそ、そのフットボールで大きな舞台に立てるようになったことを本当にうれしく思っている。

すぐに消えてしまう選手にはなりたくない

――ボールをキープすることよりも、常に仕掛けることを優先する君のプレースタイルには何か懐かしさを感じる。見ていて楽しいよ。

タウンゼンド そう言ってくれるとうれしいね。僕はピッチに立ったら常に楽しもうと思っている。「何かやってやろう」と考えているのさ。だから仕掛けていく。そしてクロスを入れたり、シュートを狙ったりするんだ。最近はそれがうまくいっている。代表デビュー戦で1ゴール1アシストを記録することができたのも、そのおかげだよ。

――君は誰が相手でも臆さないタイプのようだ。

タウンゼンド 相手が誰であろうと僕は自分のプレーをするだけさ。どんな相手に対してもドリブルで仕掛けてシュートを狙う。それが僕なんだ。

――今や“時の人”になったわけだけど、ライフスタイルも大きく変わったのでは?

タウンゼンド そんなことはない。僕は全く浮かれてないよ。僕には的確なアドバイスをくれる家族がいる。彼らが僕を天狗にさせてくれないんだ(笑)。これまでに何人もの選手が素晴らしいキャリアのスタートを切りながら、その後に消えていったよね。僕はそうはなりたくない。注目の的になって話題にされるのはうれしいけど、地に足をつけなくちゃいけない。浮かれていたら、トッテナムではすぐにメンバーから外されちゃうよ。

――昔からの友人にもいろいろと言われているのでは?

タウンゼンド みんな良くしてくれている。応援メッセージをくれるんだ。家族と友人には本当に感謝している。

――ツイッターのフォロワーも大幅に増えたんじゃない?

タウンゼンド 新しいフォロワーが2万人ほど増えたよ。素敵なメッセージも送られてくるから、感謝の気持ちでいっぱいさ。

――君のフォロワーの中に有名人はいる?

タウンゼンド 何人かいるよ。元トッテナムのガリー・リネカーとかね。それに多くの元代表選手たちからも応援メッセージをもらっている。

トッテナム、イングランド代表での活躍により、スポットライトを浴びたタウンゼンドが、今後への意気込みを語る。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング1121号でチェック!

モバイルバージョンを終了