ルーキーイヤーで29試合5得点。優勝争いに加わるチームの主力としてプレーし、リーグ新人王の栄誉にも輝いた。しかし、南野拓実は「足りない、悔しいシーズンだった」と言い切る。掲げた理想に向かって寸分のブレもなく前を見続ける新星は、激動の1年目を冷静に分析し、そしてある想いを口にした。
写真=今井卓
抱いた悔しさと数字へのこだわり
──まずはリーグ戦を振り返ってください。チームはアジア・チャンピオンズリーグに一歩届かず4位、個人としては新人王を獲得しました。
南野 すごく悔しいシーズンになりました。チームとして目指していた優勝に届かなくて、振り返ればもったいない試合、取りこぼした試合が多かったように思います。個人としても、満足のいく成績を残せませんでした。
──どのへんが満足のいかない成績だったのでしょう。
南野 単純にゴール数という数字ですね。そこがないと評価されないと思っていますし、そこを見れば、まだまだだなというのはひと目で分かります。(レヴィー)クルピ監督からも常にそこを意識しろと言われていたので、まったく足りないと思っています。
──今シーズン、具体的に目標に掲げた数字はあったのですか?
南野 二桁得点ですね。そこに到達できなかったので、まだまだやるべきことがあると思っています。
──二桁に届かった原因というのはどう分析しています?
南野 別にチャンスがなかったわけじゃなくて、決められるチャンスがあったのに決めきれなかった。そこを決めていたらおそらく二桁にいっていただろうし、チームの順位も上にあったはずです。決めきるというところに、もっとこだわっていかないといけないですね。
──ただ、最終節でのプレーは素晴らしかったですね。来年につながる1試合だったんじゃないでしょうか?
南野 ケガから復帰して、チームも優勝争いに入っていく中で、試合に関わらせてもらっていたので、自分的にもすごく充実していましたし、最後まで気持ちが切れずにやれました。やっていく中でケガの怖さもなくなってきましたし、最後はいいコンディションで戦えていましたね。
──あと5試合あったら二桁いけたんじゃないですか?
南野 そうですね。自分の中でもやっぱり最後の試合が一番手応えがありました。来年につながると思うので、良い形で終われて良かったなと思っています。
──プロとしてのルーキーイヤーを終えて、もっとできたはず、という感覚ですか?
南野 まだまだやらなければいけないと思っています。(柿谷)曜一朗君が20点以上取っている中で、そこに全然追いついていけてないですし、曜一朗君一人に負担がかかった形になってしまったので。新人王をいただいたことは素直にうれしいですし、自信につながるとは思いますけど、イメージしていた結果よりは全然です。来年は2年目で、一番難しい年だなんて言われたりもしますけど、もっと結果を出していかないといけないと思っています。
ノートに書いた理想に向かって
──来年はブラジルW杯も開催されますね。
南野 すごく出たいですね。来シーズンの開幕からバリバリやっていかないと難しいとは思いますが、それを狙っているので、どんどんチームで結果を残していきたいです。僕はプロなので、年齢がどうこう関係なく、そこを目指すというのは普通なこと、当たり前のことだと思っています。
──11月のオランダ戦、ベルギー戦は見ましたか?
南野 はい。やっぱりすごい良いサッカーしていましたし、ああいう強豪相手でも、日本のストロングポイントを出せばうまく戦えるなと。
──あの中に入ってプレーする姿というのはイメージしましたか?
南野 というよりは、やっぱり曜一朗君とか(山口)螢君とか、同じチームの選手が出ているのを見たら、なんか、うずうずするというか。自分もここでやりたいと、今まで以上に強く思うようになっていますね。そしてW杯に出たいです。それくらいじゃないと、自分が目指している世界には辿り着けないなと。
──自身が目指している世界、理想の姿が明確に描いていると。
南野 はい、ノートに書いています。中学生くらいから始めたものなんですけど。そんなに定期的なものじゃなくて、ふとした時に、思ったことを書き込む感じです。印象に残っているプレーとか、その年の目標とか。やっぱり自分のビジョンを明確に持って、それに向かってやっていかないと成功しないのではないかと。成功した人ってそういうのやっていますよね? 真似じゃないけど、そういうのが大事なんじゃないかなと思って始めました。
──そのノートに立ち返って、気持ちを新たにすることもあると。
南野 そうですね。時折見て、ここから逆算したらまだ足りてないなとか、そういう感じで見ています。けっこうモチベーションになるんですよ。中学生くらいのときに始めて、けっこううまくクリアしてこれました。
──現実的な目標というよりは、現在地から高めの目標に設定する感じですか?
南野 本当の理想ですね。だからできなかったことも当然あります。今年だったらチームで優勝することでした。ただまあ、無理だったことは無理だったって、けっこう割り切るんですけど。
──ちなみにそのノートに書かれてある来年は?
南野 ブラジルに行くと書いてあります。
新たな武器を手に
──ブラジルでそのセレッソカラーのスパイクを履いてプレーしたいですね。
南野 そうですね。もうこの新しいプレデター リーサルゾーンはバッチリですね。このピンクのカラーがめっちゃ気に入っています。
──ピンクはやっぱり好きな色ですか?
南野 私服に取り入れたりとかっていうのは、ちょっときついかなって思いますけど、やっぱり好きですね。街中でピンクを見ると、あぁ、セレッソやって思います。
──このスパイクはカラー的にも機能的にも自分に合っていると。
南野 そうですね。何がすごいのって、雨の日というか、どんなピッチコンディションの時でもまったくタッチが変わらないんですね。それは自分のプレースタイルにとってすごく大事なことなんです。天然皮のスパイクだと、中でズレたり、外の皮が伸びたりすることもよくあると思うんですね。でもこれは人口皮だからそういうことがなくて、なおかつすごく足馴染みがいい。僕のプレースタイルとして、ターンすることがけっこう多いので、皮が伸びないというのは大事ですね。このスパイクを履いて、ブラジルを目指してやっていきたいです。