8日、ミランは本拠地のサン・シーロで日本代表MF本田圭佑の入団会見を行った。アドリアーノ・ガッリアーニ副会長とともに会見に臨んだ本田は、全て英語で自身の思いを語った。また、会見後には日本から多数駆けつけた取材陣の質問に答えている。
[写真]=Getty Images
本田圭佑、ミラン入団会見全文
―ミランへ来て、最初の数日の印象は?
本田圭佑 わくわくしていますし、幸せです。
―背番号10の意味は理解している?
本田圭佑 夢が1つ叶いました。本当に嬉しかったです。12歳の時、いつかサッカー選手としてセリエAで背番号10をつけ、プレーしたいと作文に書きました。だから、ここに来て10番が欲しいと願っていました。実現できると分かったときは本当に嬉しかったです。ここまで移籍を手助けしてくれた、特にガッリアーニやガンディーニ、兄弟、家族に感謝しています。ですから、自分が何者であるかをピッチで示したいと思っています。僕のキャリアがここで終わる可能性もありますが、それは今日始まったばかりですから、頑張りたいです。
―12日のサッスオーロ戦出場は?
本田圭佑 まだわからないです。1カ月試合に出ていないし、ミランはビッグクラブですから、本当に準備をしなければいけないと思います。少し時間が必要かもしれません。
―どうしてミランが夢だった?新しいチームでどうプレーしたい?
本田圭佑 ミランにきて、チャンピオンになりたいと思っていました。とくかくチャンピオンズリーグで勝つことしか考えていません。
―過去の在籍選手でお気に入りの選手は?
本田圭佑 全ての選手を知っています。子供の頃からTVで毎週ミランの試合を見ていました。セリエAは当時から日本でも有名で、世界最高のリーグでした。だから1人を挙げるのは難しいですね。好きな選手がたくさんい過ぎて、挙げられないくらいです。
―ミランでさらに何を学びたい?
本田圭佑 いろいろ期待されていると思います。その期待に応えたいです。ゴールもアシストもしなければいけないし、最善を尽くします。とにかくチームのために最善を尽くす、それしかないと思います。
―ミランは低迷しているが、その現状をどう見る?
本田圭佑 先ほども言った通り、得点、アシスト、守備とやることをやるだけです。チームは悪い状態とは思っていないし、自分の状態もいいです。何をすれば、チームメートと噛み合うかはイメージしています。プレーしていけば、さらに改善すると思っています。
―ミランに来たことは自身にどんな影響が?
本田圭佑 多くのインタビューの中でも受けましたが、自分に必要なのはサッカーをすることだけです。どこの街に住むか、どこでプレーするかは関係ありません。どこでもしっかりとトレーニングし、休養して、ベストを尽くして試合に勝つ。それが今の自分に一番重要なことです。そして、クラブもいろいろサポ―トしてくれています。
―ポジションはどこでやりたい?
本田圭佑 どこでもできます。でも選べるならトップ下です。そこが一番得意なポジションなので。
―サッカー選手ということを常に意識して行動しているように見えるが、純粋に?それともあえて?
本田圭佑 両方ですね。この性格は生まれつきなので。加えて、今のような行動をとれるよう、自分で律してきたこともあります。
―過去に入団したデイヴィッド・ベッカムと同じような歓迎を受けているが、プレッシャーはあるか?
本田圭佑 すべきこと、それはピッチでしっかり結果を残すことです。もちろんファッションも好きだし、子供たちに夢や勇気を与えることも好きだし、仕事だと思っています。ですから、プロサッカー選手はこういう人なんだと模範を示せるようにしたいと思っています。それが自分の目指す姿ですし、やるべきことだと思っています。
―イタリア、ロシア、日本のサッカーの違いは?ミランでのプレーに懸念はあるか?
本田圭佑 イタリアはディフェンシブで戦術的なイメージがあると思います。自分の強みは攻撃だと思っていますが、イタリアでプレーする際は色々と守備でもサポートしなければいけないと思います。90分で何ができるかを、しっかり学んでいきたいです。
―どれくらいのクラブからオファーがあった?ミランを選んだ理由は?
本田圭佑 心の中のリトル・ホンダに聞きました。『どのクラブでプレーしたいのか?』と。そうしたら『ミランでプレーしたい』と答えたんです。それが決断した理由です。
―サングラスを常にかけている理由は?視力に問題?
本田圭佑 1000回以上も聞かれた気がしますが、常に答えているように、単なるファッションです。
―サムライ魂とは何?
本田圭佑 サムライに会ったことがないので(笑)。だからそれがあるかは何とも言えません。ただ、日本の男性は決してあきらめないし、しっかりとした規律を持っています。それは私も常に大事にしようと思っていますし、示そうとしています。それがサムライ魂ではないでしょうか。
―アタランタ戦ではガッリアーニの横で観戦したが、落ち着いていたように見えたが?
本田圭佑 まだ始まったばかりで、全てに満足するわけにいかないです。これからトレーニングをして、チームのために結果を出していかなければならないと考えていました。チームの勝利はもちろんうれしかったですが、私が勝ったわけではないです。これからやらなければならないことがあるので。
―長友佑都からの助言は?
本田圭佑 イタリア人はサッカーを良く知っていて、うまくいかないとすぐ批判されると教わりました。だから、常にいいプレーを続けなければいけないと感じました」
―夏にミランへの移籍が破談となり、どう思っていた?
本田圭佑 難しいということはなかったです。CSKAの選手でしたし。8月に来られれば良かったかもしれませんが、コンディションを整え、CSKAのために戦うことに集中していました。1月に来れたわけですから問題ないと思っています。
―ブラジル・ワールドカップの意味は?
本田圭佑 コンフェデ杯ではイタリアに負けました。だからW杯ではイタリアに勝ちたいですね。まずはグループを勝ち上がることが大事ですが、W杯ではぜひイタリアと試合をして勝ちたいです。
―アルベルト・ザッケローニ監督からアドバイスは?
本田圭佑 ミランはイタリアでトップ中のトップ、全てのクラブのトップだと言われました。でも全てはまだ始まったばかりなので、まずはしっかりとプレーして、ペースを維持することが大事だと言われました。
―ミラノでは住む場所など、どのように生活していきたいのか?
本田圭佑 とても美しい街です。古い建物が並び、日本とは風景が全く違います。レストランにも何軒か行きましたが、とても美味しく、気に入りました。面白そうな場所は行ってみたいし、おススメのレストランがあったら教えてください。
―同僚となるカカ、マリオ・バロテッリについては?
本田圭佑 世界でもナンバーワンの選手たちです。そうした選手とプレーできることを嬉しく思います。彼らと一緒にプレーすることで、いろいろと学びたいですね。もし、うまくやれれば、今年は難しいかもしれませんが、来季はチャンピオンになれると思います。
[写真]=Getty Images
入団会見後、ミックスゾーンでの一問一答
※1つめの記者団に対しての一問一答
―ミランの選手となった実感はあるか?
本田圭佑 あるっちゃあるし、ないっちゃない。中途半端な感じですよね。プレーするまではその実感は100%自分の中には沸いてこないんじゃないかと。(記者:自信は?)自信がないと10番は要求しないでしょうし。その駄目だった時の反動も全て理解しているわけなんで。でもこれが自分が全て求めていたものだと思うとすごい気持ちいい。これの待遇に見合う選手になれるチャンスを求めたからこそあるわけで。求めていなかったら、そこにたどり着こうと思わないですし、おそらく調子悪いと自分から逃げていくだろうし。もう逃れる環境にはないんでね。ある意味で、ここからとてつもないプレッシャーと、最初にピッチに立った時から付き合っていきたいと思います。
―プレッシャーと満足感という相反するものがあるが、今回はここ数年でスペシャルな出来事か?
本田圭佑 満足という言葉は僕はあまり使わないんですけど、ホッとしたというのは当然あったし、それはW杯に行くことが決まった時だったり、CSKAで最後の年にしてリーグ優勝ができたりとか、そういう時にはいくつか手ごたえを持ってきましたけど、満足したという経験はやっぱりまだない…当然ないし。今日の出来事もそうだった。でもそれは満足というか、自分の感情に芽生える可能性があれば、追い求めていきたいなと思いますね。
―会見では緊張したか?
本田圭佑 それはないと思いますね。冷静でいると僕は思っているんですけれど。ようやく始まったなという気持ちです。終わってからするんでしょうね。
―W杯へ向けての1日が今日から始まっていくが?
本田圭佑 W杯は自分にとっての大事なポジションであるし、それに向けてやっているという事実はある。ただW杯のためだけにサッカーをやっているわけではないんで、すべてバランスよく自分が納得いく形で結果を出していきたいと思います。
―夢は抱きながらプレーしていくのか?
本田圭佑 ここで話すべきことじゃないので。自分の中にいろいろある小さな頃から思い描いている夢っていうのはありますけれど。後に皆さんに話すことができたら…。
―ミランの今のチームをどう思う?
本田圭佑 テクニックの部分で言えば、もう少しアグレッシブに戦うべきだと感じているので。それはディフェンス陣もアタック陣もそうですよね。それをするには、やっぱり普段の練習からやっていかないと。試合前のミーティングで『今日はアグレッシブに行こう』と言ったからってできるものではない。当然そんなことは全員わかっていると思うんで、厳しい目を普段から自分たちに向けていかないと、満足する結果というものは見えてくることはできないでしょうね。
―イタリア語はロシアで勉強を始めていたようだが、今後、どのようにして習得していくつもり?
本田圭佑 どうですかね。別のインタビューでも答えたんですけれど、けっこう英語をしゃべれる選手、スタッフも多かったんで、僕がイタリア語を話す必要があるかってところだと思う(苦笑)。しゃべれない人もいるので、必要があれば覚えなければならないですし、レッスンしていかなければならないですね。
※2つめの記者団に対しての一問一答
―移籍を決め、W杯も半年後だが、プレッシャーは?
本田圭佑 プレッシャーは感じるべきだと思っているので。逆にプレッシャーがないと、意味がないので、そのプレッシャーがデカいことは事実ですけど、だからこそ大きく飛躍できると信じています。楽しんでいきたいなと思っています。このプレッシャーとうまいこと付き合いながら。
―長友選手もイタリアでプレーしているが、イタリア語は?
本田圭佑 長友のイタリア語はうまいんですか?(記者:まあまあです)彼は僕がとっさに英語でしゃべりかけても、英語で返してくるセンスがあるので、やはりイタリア語でもそれですぐに習得したんでしょうね。うまくインテルの選手と付き合っているんじゃないかなと思いますけど。僕に関しては、ちょっとずつやっていければいいかなと思っています。
―チームメートで一緒にプレーするのが楽しみな選手は?
本田圭佑 攻撃陣の選手とはやってみたいですね。みんなとやりたいと思っています。
―規模の大きい、日本語ではない記者会見に緊張したか?
本田圭佑 緊張していないと言うとウソになるんでしょうけど、思ったほど緊張はしなかったですかね。(記者:言いたいことを言えた?)まだまだですかね。日本語だと、あと3時間はしゃべれたと思います。
―10番をつけるプレッシャーや刺激は?
本田圭佑 逆に質問したいのは、目の前に10番をつけるチャンスがあって、違う番号を選びますか?っていう話ですよ。僕はそのチャンスが目の前にあって、喜んで自分から要求しましたし、選ぶときにプレッシャーのことは何も考えなかったです。それは後から来る重圧でしょうし、これからのことだと思います。でも、後悔することはないと思います。
―長友選手とはここ数カ月コミュニケーションを取っていた?
本田圭佑 佑都とは普段から連絡を取ってはいますので、この話が決まってから取り始めたということはないので、特別頻繁に取っているとかではないです。これからチャンスがあれば聞ければと思います。
―小さい頃から夢見ていたミランへの移籍が決まった思いを改めて。また、子供たちへのメッセージを
本田圭佑 僕自身、ここに来るまで時間がかかったと思っているんですけど、1つ子供たちに伝えたいのは、1つ1つ階段をしっかり登れば、いずれたどり着けるんだというところは、証明することができたのではないかと思います。それを子供たちの夢や希望にしてもらって、これから僕よりもさらにでっかい夢を持ってもらって、日々練習に励んでほしいなと思います。
―遠回りをして学んだこと、振り返って?
本田圭佑 面白いことに、時間はかかってしまったんですけど、必然なんですよね。2年前に仮にここに来られたとしても、2年前の僕じゃたぶん、この重圧を乗り切れたかどうかは、わからないです。これは結果論なんですけど。今だからよかったのかなと。モスクワでの4年間というのは、馬鹿にできないなと思います。