“新指揮官”アーノルド監督が加えるプラスアルファ
■開幕戦・仙台予想先発
FW 18.ウイルソン
MF 6.角田 誠/17.富田 晋伍/19.武藤 雄樹/10.梁 勇基/8.マグリンチィ
DF 15.鈴木 規郎/5.石川 直樹/2.鎌田 次郎/25.菅井 直樹
GK 1.桜井 繁
■3月1日14時キックオフ ベガルタ仙台 vs アルビレックス新潟(ユアスタ)
今季からグラハム・アーノルド監督を迎えた仙台。新指揮官はこれまで6年間チームを指導してきた手倉森誠前監督のベースを引き継ぐと宣言した一方で、ボールの追い込み方、奪った後の組織的展開などでチームにプラスアルファを加えている。この新しい組織的な動きがどこまで浸透しているのかは、新体制で開幕戦を迎えるチームにつきものの不安材料ではある。特に、昨季課題だった攻撃面が試される一戦だ。仙台は近年の新潟戦では三戦連続で無失点の敗戦を喫しているからである。また、昨季までの正GK林卓人が抜けたぶん、激しいポジション争いを経てピッチに立つGKのパフォーマンスが未知数だ。
一方、プラス材料としては、まずは新加入選手のコンディションが軒並み良いことがある。ニュージーランド代表のマグリンチィや、J経験者の武井択也、鈴木規郎、八反田康平は戦術理解度が高く、動きも軽快だ。また、序盤から負傷者に悩まされた昨季に比べれば、昨季からリハビリ中の上本大海と蜂須賀孝治を除く全選手が、大きな負傷もなく開幕を迎えられそうだ。クラークフィジカルコーチのテンポよい「フィットネス・トレーニング」が心身ともにチームの状態を上向きにしている。
そして最後に、どの時代でもチームを後押ししてきたホーム・ユアテックスタジアム仙台の存在がある。クラブ創設20周年を迎える今季も、このスタジアムはチームにとって心強い存在となるだろう。(板垣晴朗)
即戦力のDF補強に成功 目標はACL出場権
■開幕戦・新潟予想先発
FW 20.川又 堅碁/16.岡本 英也
MF 10.田中 亜土夢/8.レオ・シルバ/4.舞行龍ジェームズ/18.成岡 翔
DF 19.金 珍洙/17.宋 株熏/3.大井 健太郎/27.松原 健
GK 1.黒河 貴矢
例年、主力が何人も移籍する新潟だが、今季はGK東口順昭(G大阪)、MF三門雄大(横浜FM)の2人に抑えられ、昨季の“セカンドステージ王者”となったチームの骨格が維持されていることが何よりの好材料だ。加えて1月のAFC U-22選手権に出場した松原健、ソンジュフンと即戦力のDF2人の補強にも成功。高円宮杯プレミアリーグで頂点を極めた流経大柏から加入したボランチ小泉慶も、度胸満点のプレーぶりでキャンプからアピールしており、フィールドプレーヤーに関しては守備陣の強化が順調に進んでいる。
ただGKの競争はベテラン黒河貴矢がリードしているが、新加入の守田達弥、4年目の渡辺泰広含め横一線。GKのフィードからの切り替えの速さは、得意の速攻を繰り出すためには不可欠なだけに、決め手となる人材が誰になるのか気になるところだ。また韓国代表に招集され、キャンプ途中から合流したキムジンス、キャンプ途中から別メニューでの調整となっている磐田から新加入の小林裕紀のコンディションがどこまで上がってくるかも注目される。昨季23得点でリーグ得点ランク2位と大ブレイクした川又堅碁は、今季厳しくマークされることが予想されるが、攻撃陣は顔触れが変わらず、連係を深めて局面を打開していきたいところだ。
ACL出場圏内という高い目標を設定した今季。より速く、より強く、より正確に、サッカーの精度を高めることがテーマだが、開幕からのつまずきは厳禁。スタートダッシュが大きな鍵を握っている。(編集部)
昨季の堅守をベースに助っ人FWも補強 勝ちきれるチームへ
■開幕戦・甲府予想先発
FW 10.クリスティアーノ
MF 27.阿部 翔平/5.マルキーニョス・パラナ/8.新井 涼平/2.福田 健介/18.下田 北斗/11.ジウシーニョ
DF 6.佐々木 翔/4.山本 英臣/26.青山 直晃
GK 22.岡 大生
■3月1日14時キックオフ ヴァンフォーレ甲府 vs 鹿島アントラーズ(国立)
昨季の甲府は後半戦に限ると10位相当の勝ち点を挙げている。総失点数も少ない方から数えて2番目で、実質5バックの慎重な戦いが成果を出した。今シーズンは城福浩監督が引き続いて指揮を執るだけでなく、主力選手の多くが残留。堅守のベースを維持できたことは、大きなプラス材料だ。課題の攻撃はJ2栃木で16点を挙げたクリスティアーノが加入。昨季のエース・パトリックは技術面に難があり、極端に低いシュート決定率が得点力不足を招いていた。しかし身体の強さと技術を兼備したクリスティアーノの加入で、攻撃のクオリティは上がるだろう。甲府はまた有力な新人選手の補強にも成功している。キャンプ中のTMでは左利きの司令塔・下田北斗(専修大)が主力組でプレーし、松本大輝(法政大)も交代出場で得点を量産。大卒新人が例年レギュラーに定着しているチームだけに、今季も新戦力の台頭が期待できそうだ。
最大のマイナス要素は柏好文の移籍。走力と突破力、対人の強さを兼備する彼はサイドの主導権を取るために貴重な存在だった。またGKも期限付き移籍だった河田晃兵がG大阪へ復帰。岡大生と荻晃太の選択になるが、いずれも安心してJ1の守護神を任せられる域には達していない。前線も駒は昨年より揃ったが、人が入れ替わった分、連携の構築に時間がかかる。
昨年の引き分け試合が「13(J1最多)」という“勝ちきれない”チームカラーの克服は容易でない。(大島和人
)
昨季は7年ぶりの無冠 王座奪還への課題はFW層
■開幕戦・鹿島予想先発
FW 11.ダヴィ
MF 40.小笠原 満男/20.柴崎 岳/13.中村 充孝/28.土居 聖真/25.遠藤 康
DF 15.昌子 源/4.山村 和也/5.青木 剛/22.西 大伍
GK 21.曽ヶ端 準
7年ぶりにタイトルを逃した鹿島はアウェイ甲府戦で開幕を迎える。昨年、1分1敗と一度も勝てず、特にアウェイでは0-3と完敗を喫しただけに、開幕スタートを決めるには難敵との試合を制したい。
ただ、このオフに海外に移籍した大迫勇也の穴は大きい。攻撃の形は定まらず、ダヴィを得点源として中心に据えたいという思惑も、そこまでうまく進行できていない。福岡とのPSMではハットトリックを決めたものの、大迫ほどの決定力を期待するのは難しそうだ。ゴール数を伸ばすためには、ダヴィにどれだけ良いボールを供給できるかにかかっていそうだ。ダヴィ以外の選択肢だと新人の赤﨑秀平がいるが、チームに馴染むにはもう少し時間がかかりそう。先発はダヴィとなるだろう。
とはいえ、磐田から加入した山本脩斗が膝を痛めているものの大きなケガ人もなく開幕を迎えられそうだ。その代わりを務めている昌子源もTMではまずまずのプレーを見せている。また、宮崎キャンプで体調不良を訴えていた柴崎岳もパフォーマンスを戻してきた。体重が戻るのはまだだろうが、プレーに支障はなさそうだ。FWの選手層が薄そうだが、野沢拓也や本山雅志をFWで起用するプランが去年から継続。ボール扱いの名手2人が前線にいることで、次々とカウンターを繰り出すことができるようになる。まずは手堅く守って先取点を奪い、巧妙な選手交代で逃げ切りを図りたい。(田中滋)
名将がJ屈指の『個性派軍団』に導入した3バック 組織的サッカー築けるか
■開幕戦・名古屋予想先発
FW 16.ケネディ
MF 15.本多 勇喜/8.ダニルソン/38.枝村 匠馬/19.矢野 貴章/10.小川 佳純/11.玉田 圭司
DF 6.刀根 亮輔/4.田中 マルクス闘莉王/3.牟田 雄祐
GK 1.楢﨑 正剛
■3月1日14時キックオフ 名古屋グランパス vs 清水エスパルス(豊田ス)
名古屋・新時代のベースが決まった。西野朗監督の哲学は“選手の適正や特性がチームのスタイル”を作るというもの。長い時間をかけて選手たちの適正を見極めた末、導入したのが、3バックシステムである。一からのスタートである以上、当然ながらスタイルの浸透度は高くない。タイキャンプ中に行われたトヨタプレミアカップ・ブリーラムユナイテッド戦では完敗に近い内容となった。練習試合でもなかなか点を奪えておらず、得点力不足の不安は、昨年から抱えたままと言える。また、WBなどはコンバートも考えられるため、不安要素は多い。選手たちの柔軟・順応性は必至だ。
しかし、好転した点も多い。昨季までは練習量が少なく、戦い方が定まらないことも多かったが、今季はハードなメニューが課され、戦術練習の量も激増。ポジション争いも激化しており、指揮官も「競い合ってタフにやれれば、ものすごい可能性も感じる」と言う。何より、選手の特性を熟考した上での攻撃システム。田中マルクス闘莉王のリベロ起用など、J屈指とも呼ばれる“個”が組織的に活かされる。選手間の距離を縮め、より試合を支配するためのスタイルに変わる日は遠くないはずだ。
かつてG大阪で黄金期を築いた指揮官。その初年度に導入したのが、宮本恒靖をリベロに配した3バックシステムだった。あれから12年、「緻密で組織的な攻撃的サッカー」を掲げる名将が、今度は名古屋の地で黄金期を築く。(編集部
)
長身FW補強でサイド攻撃に磨きをかける
■開幕戦・清水予想先発
FW 9.長沢 駿
MF 6.杉山 浩太/20.竹内 涼/11.高木 俊幸/18.ノヴァコヴィッチ/10.大前 元紀
DF 17.河井 陽介/4.カルフィン・ヨン・ア・ピン/3.平岡 康裕/28.吉田 豊
GK 1.櫛引 政敏
昨季はバレーに対し「再びJリーグで活躍できるのか」という疑問を持ったまま開幕を迎えることになったが、今年はその心配はない。ノヴァコヴィッチという、日本にすっかりとアダプトしたFWの補強に成功した。加えて、予想以上の活躍を見せそうなのが、熊本、京都、松本で修業を積んだ長沢駿。レンタルから復帰し、ノヴァコヴィッチと合わせてこれまで練習試合6試合で8得点を挙げるなど、昨年よりも得点力がアップした印象だ。一方で守備の顔ぶれはほとんど変わりがなく、昨年のような混乱は少ないと思われる。
ネガティブな部分は、伊藤翔(横浜M)の流出がまず挙げられる。攻撃はもちろんのこと、献身的な運動量でファーストディフェンダーとして重要な役割も担っていただけに、その影響が心配される。また、今季は前に190cm超のFWが揃っているがために、中からの組み立てが省略されてしまう傾向にある。もともとサイド攻撃が売りのチームだが、今年はさらに特化しているようだ。それは得点がとれなくなった場合のリスクマネジメントという意味では問題になるかもしれない。しかも、その方向性が正しいかどうかをはかるためのPSMは昨年2試合を行ったが、今年は大雪の影響もありJ1チームとの真剣勝負ができないまま、開幕を迎えることになってしまった。(田中芳樹)
J最強攻撃陣を武器に 目指すは悲願の初タイトル
■開幕戦・C大阪予想先発
FW 8.柿谷 曜一朗/10.フォルラン
MF 2.扇原 貴宏/6.山口 蛍/13.南野 拓実/5.長谷川 アーリアジャスール
DF 14.丸橋 祐介/23.山下 達也/4.藤本 康太/17.酒本 憲幸
GK 21.キム・ジンヒョン
■3月1日14時キックオフ セレッソ大阪 vs サンフレッチェ広島(長居)
エジノ、ブランコが期待通りの働きを見せなかった昨季に比べ、フォルランを筆頭に外国籍選手の力はアップした。左右両足から放たれるフォルランのシュート精度と威力は昨季までのC大阪にはなかった強力な武器。セットプレーからの得点も増えるだろう。攻撃陣の選手層という点でも昨季より厚みを増している。柿谷曜一朗、フォルラン、杉本健勇、南野拓実、長谷川アーリアジャスール、ミッチ・ニコルス、楠神順平、永井龍を擁する前線はリーグ屈指の陣容だ。また、始動からの練習を見るかぎり、今季はたっぷりと走り込んでおり、チームとしても、個々としてもスタミナ面で昨季より上がったはずだ。
指揮官がレヴィー・クルピからランコ・ポポヴィッチに変わったことで、戦い方にも変化が見られそう。攻撃では状況判断を早く、1本1本のパスにこだわりつつ、ゴールを目指す。守備では引いて構えるのではなく、ボールを失った瞬間から切り替えを早くし、高い位置からプレスをかける。このやり方がすぐにフィットするかは、特に開幕からしばらくは未知数だ。藤本康太と山下達也の昨季のレギュラーコンビがキャンプでは満足に練習に加われていないだけに、リーグとACLを並行して戦う序盤、守備陣の層の厚みという点での不安も拭い切れない。また、フォルラン獲得というビッグな補強に成功し、他クラブからのマークが強まると思われるだけに、それらの包囲網を打ち破っていけるかも、目標であるタイトル奪取に向けての大きな鍵になるだろう。(編集部)
3連覇に挑む王者 過密日程に不安も好調さ維持
■開幕戦・広島予想先発
FW 11.佐藤 寿人
MF 27.清水 航平/30.柴﨑 晃誠/6.青山 敏弘/14.ミキッチ/10.髙萩 洋次郎/9. 石原 直樹
DF 4.水本 裕貴/5.千葉 和彦/33.塩谷 司
GK 1.林 卓人
成熟。この言葉がピタリとくるプレシーズンの広島であった。練習試合では富山に2-0、熊本に4-0(主力組)。攻守共にスコア以上の内容を見せつけ、仕上がりの良さを実感させた。特に守備は、昨季は平均失点0.85とリーグ最低失点を演出した「強固なブロック」に加え、前からボールを取りにいくオプションを準備。拮抗した展開を打開する武器を手に入れた。
さらに特筆すべきは、若手の台頭だろう。練習試合2試合で4得点を記録した野津田岳人をはじめ、スピードの浅野拓磨、高さの皆川佑介、アイディアの川辺駿と成長株が目白押し。「今年の若手はすごい」と青山敏弘が唸るほどの勢いに、期待は集まる。
また、主力の状態もいい。髙萩洋次郎・石原直樹・青山が好調を維持して得点を重ね、エース佐藤寿人も順調。連覇の主役たちに新戦力が割って入るのは容易ではない。ただ、痛いのは負傷者の存在だ。サイドの新戦力として期待を集めた柏好文が左ハムストリングス筋を損傷。さらに中盤の支配者・森﨑和幸や今季に復活を期す森﨑浩司も練習中に負傷し、いずれも開幕戦出場は微妙な情勢だ。
開幕戦はゼロックス杯から続く3連戦の3試合目であり、連戦による疲労の蓄積は否めない。天皇杯決勝進出によって準備期間が昨年よりも約2週間、短くなったことも、調整を難しくしている。成熟のチームが実力を発揮できるか否か、コンディションが全ての鍵を握りそうだ。(紫熊倶楽部 中野和也)
選手層に厚み 指揮官のマネジメント力に期待
■開幕戦・鳥栖予想先発
FW 11.豊田 陽平
MF 14.藤田 直之/28.高橋 義希/10.キム・ミヌ/22.池田 圭/25.早坂 良太
DF 13.安田 理大/20.ヨ・ソンヘ/36.菊地 直哉/15.丹羽 竜平
GK 33.林 彰洋
■3月1日14時キックオフ サガン鳥栖 vs 徳島ヴォルティス(ベアスタ)
昨季は開幕から苦しんだが後半戦の快進撃の立役者となった林彰洋と菊地直哉が残留し、今季の立ち上げからチームの構築作業に加わっているのは心強い点だろう。2人の残留に加え、安田理大や谷口博之といった日本代表経験を持つ実力者の補強に成功し、全体の層も厚くなっている。また、全体の層が厚くなったことに起因して各ポジションの競争も激しくなっている。特にボランチは藤田直之、高橋義希、岡本知剛、谷口、チェ・ソングンの5人が2枠を争う激戦区となっている。ユン・ジョンファン監督にとっても嬉しい悲鳴と言えるだろう。昨年はケガ人も続出したがここまでケガ人も出ることなく開幕戦に向けての準備ができているのも強みだろう。
一方で懸念すべき点はエース豊田陽平のポジションをカバーできる人材の薄さか。万が一、エースが負傷した際には同タイプのFWがおらず戦い方の変更を強いられることになる。層が厚くなった反面、選手の好不調を見極め、スタメンをどう選んでいくか。ユン監督のマネジメント力が試される難しさは出てきたはずだ。そして、その中で出場機会を得るのが難しくなっていく若手選手たちをいかに育てていくのか。昨季には無かった難しさをどう指揮官がクリアしていくのかには注目が集まる。(編集部)
若手の経験不足は昇格請負人・小林監督の手腕で補う
■開幕戦・徳島予想先発
FW 9.ドウグラス/11.津田 知宏
MF 14.濱田 武/16.斉藤 大介/20.大﨑 淳矢/18.宮崎 光平
DF 3.アレックス/2.福元 洋平/5.千代反田 充/23.小暮 大器
GK 1.松井 謙弥
今季の特徴は『新加入選手6名の平均年齢が21.5歳』という点。両側面の見方もできるが、まず良い面としては、小林監督の言葉にもあるように「守備の時間が多くなる試合が予想される」という点で練習から若い選手が豊富な運動量でチームを牽引している。2つ目に「伸びたい・試合に出たい」という気持ちが強い若い選手の加入でポジション争いが熾烈になり、既存選手にも良い競争が生まれている。3つ目は入団時にレアンドロ・ドミンゲス(柏)の弟として話題となったクレイトン・ドミンゲス。まだまだ未知数の選手だが、宮崎キャンプの練習試合ではトップ下のポジションで2得点をあげた。適性のポジションは模索中のようだが、前線で足元に収めることができ、新たな攻撃のバリエーションが生まれそうだ。
逆に不安要素としては、1つ目に新加入選手は若さゆえに経験不足が否めない点。2つ目は、昨年までボランチでプレーしていた柴崎晃誠が広島に移籍した点。もちろん、競争が生まれ新たな活性化が期待できるという見方もできる。しかし、積み上げてきたものを開幕までの約1ヶ月半で完成させるのは容易ではないだろう。3つ目は、大卒初年度ながら昨年チームで唯一全試合出場を果たした藤原広太朗(右SB)の昨季終盤に負った怪我の治療が開幕に間に合わなさそうな点だ。
しかし、徳島を含め過去に3度チームを昇格させた名監督が何も策を練ってこないはずはない。その手腕に期待したい。(編集部)
既存戦力にピンポイント補強 指揮官6年目のチーム力が強み
■開幕戦・柏予想先発
FW 11.レアンドロ
MF 22.橋本 和/7.大谷 秀和/28.栗澤 僚一/13.高山 薫/9.工藤 壮人/10.レアンドロ・ドミンゲス
DF 5.増嶋 竜也/3.近藤 直也/4.鈴木 大輔
GK 21.菅野 孝憲
■3月1日15時キックオフ 柏レイソル vs FC東京(柏)
今季の柏は適材適所の補強によってチームのバリエーションは確実に増した。個の力でゴールを奪えるレアンドロ、縦へのスピードが魅力の高山薫、球際の競り合いに強く、中盤でボールを奪い切れるハン・グギョンと、昨年までの柏に欠けていた持ち味を持つ選手が加わったことはチームの戦い方の幅を広げる意味では非常に大きい。また、今年はACLの出場がないのは残念だが、チームはそれを前向きに捉え、開幕まで十分な準備期間を得られ、リーグ戦に集中できることをメリットだと考えている。さらにネルシーニョ体制は今年で6年目を迎え、これは現在のJリーグでは最長。大谷秀和、近藤直也、工藤壮人、菅野孝憲らを中心にしたチームの骨格は依然として変わらず、継続性やコンセプトの浸透という部分では、他のクラブに比べて一日の長がある。
懸念があるとすれば、“優勝請負人”として柏の国内3大タイトル獲得に大きく貢献してきたジョルジ・ワグネルのような経験豊富な名手を放出したことで、紙一重の勝負の際に微妙な精神的な脆さが出てしまわないかどうか。それに全体の人数が27選手と少ないにもかかわらず、キム・チャンスと藤田優人が怪我で開幕から出遅れるのは明らかに痛手。1、2年目の若い未知数の選手も多いため、仮に主力選手に怪我人が多発した場合は、その穴を果たして埋め切れるのかなど、選手層に一抹の不安は残る。(鈴木潤)
代表クラスの守備陣で牙城築き イタリアサッカーを体現できるか
■開幕戦・FC東京予想先発
FW 14. 武藤 嘉紀/11.エドゥー/9.渡邉 千真
MF 4.高橋 秀人/8.三田 啓貴/38.東 慶悟
DF 6.太田 宏介/3.森重 真人/5.加賀 健一/2.徳永 悠平
GK 20.権田 修一
昨季8位のFC東京はJリーグ初のイタリア人指揮官、マッシモ・フィッカデンティ監督を招聘。クラブ初のリーグタイトル獲得に向け、攻撃的なパススタイルを堅持したまま、堅固で繊細な守備戦術を採り入れ、結果重視の現実路線に大きく舵を切った。中心軸を担ったルーカスは引退、長谷川アーリアジャスールはC大阪へ移籍したが、ドイツや韓国、中国で活躍した左利きのブラジル人ストライカーのエドゥーの補強に成功。前線の陣容は厚く、昨季17得点の渡邉千真、完全復活を期す平山相太、ドリブラーの河野広貴、ルーキーの武藤嘉紀、ベテランの石川直宏といった実力者たちが3トップを争っているが、昨季までの攻撃水準には達していない。
高橋秀人、東慶悟が並ぶ中盤では、宮崎・都城キャンプで右肩脱臼の重傷を負った米本拓司の長期離脱が痛すぎる。ただ、最終ラインにはリーグ最強と言っていい顔ぶれがそろっており、徳永悠平、太田宏介の両翼に加え、センターには日本代表の森重真人が健在。190センチの新加入マテウス、日本代表の権田修一とともに、高く、堅牢な牙城を築きそうだ。
フィッカデンティ監督は徹底したフィジカル強化と戦術の浸透を図っているが、攻守にわたって浸透度はイマイチ。変革の途上にあるだけに、選手たちの適応力が大きな鍵を握ることになるだろう。(編集部)
「J1復帰一年目で優勝」を目標に掲げるも エースの長期離脱が大きな痛手
■開幕戦・G大阪予想先発
FW 20.佐藤 晃大
MF 15.今野 泰幸/27.内田 達也/10.二川 孝広/7.遠藤 保仁/13.阿部 浩之
DF 4.藤春 廣輝/8.岩下 敬輔/5.丹羽 大輝/21.加地 亮
GK 1.東口 順昭
■3月1日19時キックオフ ガンバ大阪 vs 浦和レッズ(万博)
2012年以来、2年ぶりにJ1復帰となるG大阪。昨年はJ2を圧倒的な力で勝ち上がった攻撃サッカーの雄を率いる長谷川健太監督は「J1でも攻撃的に戦い、優勝争いをしたい」とJ1復帰一年目での優勝を目標に掲げている。
攻撃的なスタイルを維持しながらもチームが昨年目指したのは確固たる守備戦術の構築だ。「J1に上がってもチームベースは大きく変えない」と指揮官は公言しているが、チームはJ1仕様への転換に向けて東口順昭や米倉恒貴、ブラジル人FWリンスらピンポイントで実力者を補強。選手層は確実に上積みされている。特に東口は即レギュラーが確定で、最終ラインがより安定感を増すのは間違いない。
昨年はCBとボランチの併用だった今野泰幸も今年はボランチに専念させる方針で内田達也とのコンビはバイタルエリアに安定感をもたらしている。一方で今季のFWの軸として期待されていた宇佐美貴史が19日に左腓骨筋腱脱臼で全治8週間。開幕を前に前線の再構築を迫られている。即戦力として期待されているリンスも適性ポジションの見極めがやや遅れており、開幕スタメンは微妙な状況だ。今季も遠藤保仁を前線で配置する事が濃厚だが、宇佐美の離脱によりFWの層が薄いのも気掛かりだ。(編集部)
今季も『ミシャサッカーの申し子』獲得に成功 守備面の立て直し図る
■開幕戦・浦和予想先発
FW 30. 興梠 慎三
MF 3.宇賀神 友弥/22.阿部 勇樹/8.柏木 陽介/14.平川 忠亮/9.原口 元気/20. 李 忠成
DF 5.槙野 智章/4.那須 大亮/46.森脇 良太
GK 21.西川 周作
昨季と最も大きく異なる点は、チームの最後尾に日本を代表する守護神がドンと構えることだ。シュートストップの技能に優れ、足元のスキルも抜群に高い西川周作は、ビルドアップを大切にする浦和にとってこれ以上ない最高の人材だ。
攻撃の駒として李忠成が加わったのもプラス材料だ。広島時代にミシャサッカーで結果を残した実績があるのは心強い。1トップとトップ下をこなせるというのも大きく、選手起用の幅がグッと広がった。特に興梠慎三、原口元気、李の新たな1トップ2シャドーの形は、大きな可能性を秘めている。ミシャ監督の志向する攻撃サッカーは時間の経過とともに磨きがかかっており、昨季はリーグ最多得点を記録したが、今年は破壊力のさらなる向上も期待できる。
一方、今季開幕を迎える上で気になるのはやはり守備面だ。昨季は拙い対応が目立っただけに、選手も指揮官も改善すべきポイントとして意識している。攻撃サッカーを貫く浦和では“攻めている時の守備”が鍵を握るため、練習ではリスクマネジメントを意識した取り組みがなされていたが、それを実戦で活かせるか。また、新加入の青木拓矢に出遅れ感があるのも気掛かりだ。チーム始動直後に足首を捻挫するなど出だしで躓き、コンディション調整を強いられることもしばしば。ただでさえ馴染みのないミシャサッカーに適応していくための時間が必要なのに、本人ももどかしい思いを抱いていることだろう。(神谷正明)
“俊輔頼み”からの脱却へ 1トップに不安残す
■開幕戦・横浜FM予想先発
FW 9.矢島 卓郎
MF 8.中町 公祐/27.富澤 清太郎/11.齋藤 学/10.中村 俊輔/25.藤本 淳吾
DF 5.ドゥトラ/4.栗原 勇蔵/22.中澤 佑二/13.小林 祐三
GK 1.榎本 哲也
■3月2日13時キックオフ 横浜F・マリノス vs 大宮アルディージャ(日産ス)
10年ぶりのリーグ制覇を狙う横浜F・マリノス。昨季はクラブ新記録となる開幕6連勝を飾り、上位への足掛かりをつくった。今季もスタートダッシュを成功させられるか。今季からJ1名古屋で攻撃を牽引したMF藤本淳吾が加入。左足からの正確なシュートやパスは、MF中村俊輔に頼り気味だった攻撃に新しいオプションを加える。
ベンチの層も厚くなった。ボランチ、右サイドバックをこなせる三門雄大、左サイドバックとして攻撃の起点となれる下平匠が控え、流れを変えるカードがそろう。藤本と右MFの定位置を争う兵藤慎剛もこのまま黙っていないだろう。樋口体制3年目を迎え、不動のレギュラーも盤石だ。昨季リーグ2位の31失点を支えた中澤佑二、栗原勇蔵の両センターバックは健在。攻守の鍵を握る中町公祐、富澤清太郎のボランチコンビも宮崎キャンプから順調な動きを披露し、簡単には崩れそうにない。
一方で、昨季チーム得点王(16点)のFWマルキーニョスがJ1神戸へ移籍した。最強助っ人の抜けた穴をカバーできるのか。さらに開幕前には新加入の伊藤翔が右臀部の違和感を訴え、藤田祥史も左足首を捻挫とFW陣にケガ人が相次いだ。J1川崎から加入した矢島卓郎に掛かる負担は重い。リーグ開幕戦とはいえ、22日の富士ゼロックス・スーパーカップ、26日のアジア・チャンピオンズリーグの全北現代(韓国)戦と続く、文字通り最初の過密日程の中で迎える。初陣となる大宮との体調面の差にも不安を残している。(編集部)
家長獲得で新生・大宮誕生へ
■開幕戦・大宮予想先発
FW 11.ズラタン
MF 23.金澤 慎/5.カルリーニョス/9.チョ・ヨンチョル/41.家長 昭博/10.渡邉 大剛
DF 26.村上 和弘/17.高橋 祥平/2.菊地 光将/27.今井 智基
GK 1.北野 貴之
大熊清新監督を迎え新たな体制で戦う大宮。しかし、まだチームのベースが完成するには少し時間がかかりそうだ。昨シーズンの不安要素であったサイドハーフのバックアップ。左は補強により解決したが、右サイドは渡邉大剛のみというのが現状だ。水戸で左サイド・トップ下の活躍が多かった橋本晃司、新人・泉澤仁らが両サイドのバックアップになることが予想されるが、2人とも左サイドが本職。右サイドでの大きな活躍はまだ望めない。さらに青木拓矢、下平匠が抜けたことが想像以上に大きく、スタイルの違うボランチ陣でどこまでカバーできるか。下平は実はボールの落ち着きどころだったため、そこを誰がどう補うかは今シーズン通しての課題となりそうだ。
だが、好材料も多い。今季加入の目玉である家長昭博は、トップ下での起用が予想される。持ち前のセンス、経験を兼ね備えた家長の加入は大きなプラスだ。DF渡部大輔は「昨年までショートカウンターでの攻撃が主だったが、アキ(家長)くんのところで溜めができるので、昨シーズンはあまりできなかった厚みのある攻撃が今シーズンは可能」と話す。大宮従来のカウンターと家長のクリエティブな攻撃がかみ合えば新しい大宮サッカーが見れるだろう。
全体的に去年よりも計算できる選手が増え選手層が増えたのもプラス要素だ。特に守備陣には経験豊富かつ複数のポジションがこなせる選手が多数いる。(上野直彦)
選手入れ替えの影響少 自慢の攻撃陣健在
■開幕戦・川崎F予想先発
FW 13.大久保 嘉人
MF 34.パウリーニョ/16.大島 僚太/10.レナト/14.中村 憲剛/11.小林 悠
DF 23.登里 享平/4.井川 祐輔/5.ジェシ/3.田中 裕介
GK 21.西部 洋平
■3月2日16時キックオフ 川崎フロンターレ vs ヴィッセル神戸(等々力)
風間体制3年目。指揮官が掲げるボールを失わないサッカーも浸透しており、昨年はリーグ3位。チーム力にさらに磨きをかけてACLを含めた初タイトルを目指す。戦力補強ではパウリーニョ、森島康仁らを獲得。ただそれ以上に大きいのが、主力選手が軒並み残留したことだろう。昨年は選手の入れ替わりがあった影響でチームでの共通理解や組み合わせの見極めに時間を要してしまいシーズン序盤は低迷。スタイルに馴染んだ選手をベースに戦えるのは大きいといえる。
最大のストロングポイントは、やはり攻撃力。昨年のリーグ得点王・大久保嘉人や中村憲剛、レナトといったリーグ屈指の攻撃陣は健在。特に大久保にとっては古巣・神戸を迎える一戦となる。宮崎キャンプでの対戦でもゴールを決めており、開幕戦でも恩返し弾を期待したいところだ。
懸念材料と言えるのが、コンディション面だろう。仕上がりはおおむね順調だったが、開幕2週間前、関東地方を襲った大雪により清水とのプレシーズンマッチでは、出場予定だった主力組を温存。急遽、YSCCとの練習試合を組むなどして主力組はコンディションを調整したが、この影響がどう出るのか。1月26日にはACLで貴州人和(中国)戦があり、いきなりタイトな公式戦連戦となる。(いしかわごう)
J経験豊富なブラジル人トリオを擁し 5年連続白星スタート狙う
■開幕戦・神戸予想先発
FW 18.マルキーニョス
MF 16.チョン・ウヨン/6.シンプリシオ/13.小川 慶治朗/10.森岡 亮太/7.ペドロ・ジュニオール
DF 3.相馬 崇人/14.増川 隆洋/19.岩波 拓也/2.高橋 峻希
GK 22.山本 海人
2012年シーズンの屈辱から、1年のJ2生活でのチーム再生を経て、今季、J1のステージに戻ってきた神戸。「タイトルを狙う」という、クラブが未だ果たしたことのない目標に向かって、決意の2014年シーズンを迎える。その初戦は、かつてクリムゾンレッドのエースとして君臨し、昨季にはJ1得点王にも輝いた、大久保嘉人を擁する、川崎とのアウェイ戦。等々力の地から、新たな航海へと出発する。
引き続き安達亮監督が指揮をとるチームにおいて、今季最大の特長は、タレント揃いの攻撃陣。284試合135得点という輝かしい実績を持つマルキーニョスをはじめ、ペドロ・ジュニオール、シンプリシオといったJ経験豊富なブラジルトリオを獲得。彼らに、昨季飛躍を遂げた小川慶治朗、森岡亮太ら若き才能が絡んだときには、川崎にも負けないだけの、多彩で破壊力抜群のアタッキングサッカーが展開されるだろう。キャンプや開幕前のトレーニングでは連係面を深めることに時間を費やし、徐々にコンビネーションも上がっている様子。さらに、例年に比べて負傷離脱者が少ないことは、チームにとって明るい材料だ。
ただし、昨シーズンの守備の要だったエステバンが抜けた穴を、どのように埋めていくかは、今季の課題。早速、川崎の強力攻撃陣を相手に、増川隆洋ら新DF陣の実力が試される。また、攻撃に比重がかかっている現状、特にブラジルトリオの守備については、キャンプ中に課題が露呈。これを開幕戦までにどのように修正できているかも、見どころの1つだ。さらに、昨年、今年と、キャンプ中の練習試合では大久保にもゴールを許すなど、川崎に2連敗。いまや相手のエースになった男をいかに止められるかが、勝敗に大きく直結する。それでも、川崎戦は、11年、12年と、3勝1分けの負けなし。この相性も味方に付けて、開幕戦は5年連続となる白星発進を達成したいものだ。(編集部)