「開幕に向けて、壮行会をしてはどうかな?」
今シーズンより奈良クラブのメインスポンサーになっていただいた丸産業の丸敏幸社長が提案してくれた。今まで在籍したJクラブでは当たり前のように行われていた行事やのに、奈良クラブでは開催したことがなかった。
「奈良クラブをスポンサードしてくれている会社同士の親睦も深められるしね。費用は会費制にして皆さんに協力してもらえればいいんだから」
Jクラブでは招待するケースが多いけれど、一人8000円の会費をいただいて、奈良ロイヤルホテルで壮行会を開催させてもらった。
背番号順に名前とポジションを紹介した後に、勤務先の会社紹介をした。これは地域リーグならではやと思う。
「大和農園で大根を作っている瀬里です。よろしくお願いします」
「丸産業で経営企画部に配属されました鶴見です。これから仕事を覚えます」
ちなみにこの瀬里康和と鶴見聡貴のブログは、めちゃくちゃ笑えるから、ぜひ読んでみて。俺より面白いから、ちょっと嫉妬してるもん(笑)。
http://s.ameblo.jp/naraclub-info/entry-11805111587.html?frm_src=favoritemail
http://s.ameblo.jp/naraclub-info/entry-11816337814.html
こんな形で選手紹介をしていく中、俺がレポーターになって、それぞれの会社の関係者に普段の勤務状況などを聞いて回った。
「松岡先生、橋垣戸と三浦のゴリラ&ブサイクのコンビはちゃんと働いていますか?」
以前、コラムに書かせていただいた、まつおかクリニックの院長先生に聞いた。
「いやいや、本当に助かっていますよ。奈良クラブの門番でもある二人が、当院の守りについてくれているんですから心強いです」
こんな風にサッカー選手ではなく、社会人としての働きぶりをたくさんの会社の関係者の方が褒めてくれた。
「皆さん、今日は普段の頑張りをご両親に見てもらいましょう。あと、家でのみんなのお利口さんぶりを、先生が聞いていきますからね」
そんな光景にお遊戯会の発表会を思い出して、懐かしい感覚を覚えた。選手たちは自分が働く会社の方々が来てくれてうれしそうやったし、都合がつかずに来ていただけなかった選手は寂しそうやった。
「うちの父ちゃん母ちゃん、仕事で来れないって」
「ゴメンね、先生たちがもっと早く予定を伝えることができたら、都合をつけてもらえたかもしれないのに」
「いいんだ、いつも僕のためにいっぱい働いてくれているから。次は絶対に都合をつけて来てくれるって言ってくれたから」
選手たちの気持ちは、こんな感じやったんやろうね。
今回、本当に良かったと思ったのは、選手を見守っていただいている会社関係者の皆さんが、自分の子供を見守るように接してくれていると感じられたこと。選手たちも親みたいに慕っている姿が微笑ましかった。
サポーターも駆けつけてくれた。コールリーダーの生駒くんが県リーグから応援しているサポーターの想いを代弁した。
「スポンサーの皆様。奈良クラブをスポンサードしていただきありがとうございます。僕たちサポーターが恩返しできることは、選手の後押しとして声援を送ることしかありませんが、どのチームに負けない気持ちでサポートしますので、これからも奈良クラブをよろしくお願いします」
何十人ものサポーターも会費を払って参加してくれて、会場で選手とチームのコールをしてくれた。
「奈良劇場総支配人の岡山です。選手、スタッフ、サポーター、スポンサーのみんなが一つにならないとJFLに昇格できません。だから、勝った後に繰り広げる勝利のラインダンスをみんなで踊って絆を深めましょう。皆さん、壇上に集まってください」
肩書きに関係なく、奈良クラブに関わるみんなが肩を抱き合った。
「右足から上げてください。踊りに自信のない方はシュナイダー直伝のタオルを振り回して盛り上げてくださいね。いきますよ!」
奈良のために。君を愛する俺たちの気持ち止まらない。歌い続けよう。ラララ奈良のために。
ラインダンスの足並みが揃った時、みんなの心が一つになった。みんなが笑顔で奈良クラブのために踊り続けた。JFL昇格をつかみ取るために。
4月12日、関西リーグが開幕する。
選手みんなが口にする。「選手人生を懸けて、JFLに昇格します。応援お願いします」と。プロサッカー選手になれない自分の現状を変えるために、働きながらでもサッカーを続ける男たち。
「昇格請負人の名前を懸けて、JFL昇格を果たします」
もう一度Jの舞台に返り咲くために。奈良クラブは関西リーグで優勝して、地域リーグ決勝大会で勝ち上がるために戦います。
応援、よろしくお願いします。
1978年4月24日生まれ。大阪府出身。
初芝橋本高卒業後、テスト生として横浜Mへ。打点の高いヘディングとガッツ溢れるプレーが評価されてプロ契約を勝ち取ると、デビュー戦から3試合連続ゴールを記録して一気に頭角を現した。大宮、横浜FM、C大阪、川崎F、福岡、柏、仙台と渡り歩く中、川崎F時代に始めた試合後の“岡山劇場”でサポーターの心をつかむ。柏時代には日立台のゴール裏でサポーターともに応援したこともある。09年に移籍した韓国・Kリーグの浦項ではACLを制し、FIFAクラブW杯で3位に入った。11年から昨シーズンまで札幌に在籍し、今夏からアマチュア選手として奈良クラブへ加入。J1通算64試合6得点、J2通算214試合20得点。