[ワールドサッカーキング1405号掲載]
レジェンドとしてクラブ史に悠然と名を残す彼らも、始めからサポーターに愛される存在だったわけではない。試練を乗り越えた末の“覚醒”――そして彼らは伝説になった。
文=フットメディア Text by Footmedia
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images
モナコでヴェンゲルの抜擢を受けた有望なウイングは、ユヴェントスで期待に応えられずに苦しんでいた。だが1999年、ロンドンでヴェンゲルと再会を果たすと、センターフォワードへのコンバートを機に眠れる才能が開花する。
ガナーズのシャツを身にまとって積み重ねたゴールはクラブ歴代最多の「228」。無敗優勝を始めとする2000年代のクラブ黄金期は、プレミアリーグ得点王を4度獲得したアンリの活躍とともにあった。電光石火のスピードとクールなフィニッシュ。幾度となくチームを勝利に導いてきた彼は08年、ファン投票による「クラブ史上最も偉大な選手」に選ばれている。
2011年にはその功績を称えられ、エミレーツ・スタジアムの前に銅像が建てられた。アンリは落成式で目に涙を浮かべながらこうコメントしている。「アーセナルには心の底から感謝したい。『一度グーナーになったら生涯グーナー』。ずっと言ってきたことだけど、これからも僕はそう言い続けるよ」
スタジアムに向かってひざまずき、ガッツポーズするその銅像は、02年のトッテナム戦で決めた自陣からのドリブルシュートの直後に見せたゴールセレブレーションを模している。グーナーたちはスタジアムを訪れるたびに、伝説として今なお語り継がれるアンリのスーパーゴールを思い出している。