「奈良劇場総支配人」奈良クラブ岡山一成のJリーグへの道:第十六回

 関西社会人1部リーグの前期が終わり、奈良クラブは首位のFC大阪と勝ち点1差の2位で折り返すことになった。

 8チームの総当たりで、4勝2分け1敗の勝ち点14。終盤に3連勝をすることができて良かった。

 開幕戦のバンディオンセ加古川戦は序盤に2失点しながら、このビハインドを同点に追いつき、俺自身も同点ゴールを入れた。続くレイジェンド滋賀FC戦では決勝ゴールを決めて、今季初勝利でホームで勝利のラインダンスを披露することができた。

 3戦目のアミティエSC京都戦で前期唯一の敗戦となる初黒星を喫してしまい、チームの真価が問われる一戦になったのがFC大阪との4戦目やった。お互い意地がぶつかり合った試合は0-0に終わったけど、本当に死闘を尽くした戦いやった。

 その後は関大FC2008、アルテリーヴォ和歌山、阪南大クラブに3連勝してチームに勢いが出てきた。シーズン序盤は守備陣の健闘がチームを支えたけど、FW陣にゴールという結果がついてきて、良い雰囲気になってきた。

 関西社会人リーグは1位にならないと地域リーグ決勝大会に出れないので、もう一つも落とすことはできない。

 だから、6月14日(土)14時から鴻ノ池陸上競技場で行われるバンディオンセ加古川戦は、絶対に勝って勢いをつけたい。ブラジル・ワールドカップも大事な戦いやけど、奈良クラブにとっては14日は絶対に負けられない戦い。みんな鴻ノ池陸上競技場に足を運んで、一緒に闘って勝って、ラインダンスをみんなで踊ろうぜ。待ってるな。

 最後にアルテリーヴォ和歌山と対戦した時に、同じ年の永井雄一郎との会話を載せておく。

「この年までサッカーを続けてるとは思わなかったし、まさか関西リーグで対戦するとは……」

「俺は地元が関西やから、最後にサッカーする上で関西でやりたかったけど、永井はゆかりのない和歌山でやる決断をしたな。お前やったら選手以外でもいくらでもあったやろうに」

「やっぱりサッカーしたかった。アルテリーヴォが誘ってくれて感謝している。そうだ、勝っても負けても、試合後にユニフォーム姿で写真を撮ろうぜ。この年までサッカーを続けてる仲間として」

 試合後、お互いの健闘を称えて、ピッチで写真を撮った。Jリーグでは絶対にできないことや。

「ユニフォーム交換する?」そう問いかけると、

「いや、支給されている枚数が決まっているから……」

 そうだった。Jリーグの名残りがあったけど、俺たちは地域リーガー。自分たちの立ち位置を考慮して交換しなかった。
どんな環境でも、どんな状況でも、俺たちはサッカーやれる幸せを噛み締めている。同じ年の同期が引退して新たな夢に進んでいる中、現役にしがみついている自分に問いかけたくなる時もある。そんな時に永井の頑張ってる姿が、俺の励みになってくれている。お互い体にいろいろなボロを抱えているけど、ボロボロになるまで、サッカーやれるだけやろうぜ。

岡山一成(おかやま・かずなり)
1978年4月24日生まれ。大阪府出身。
初芝橋本高卒業後、テスト生として横浜Mへ。打点の高いヘディングとガッツ溢れるプレーが評価されてプロ契約を勝ち取ると、デビュー戦から3試合連続ゴールを記録して一気に頭角を現した。大宮、横浜FM、C大阪、川崎F、福岡、柏、仙台と渡り歩く中、川崎F時代に始めた試合後の“岡山劇場”でサポーターの心をつかむ。柏時代には日立台のゴール裏でサポーターともに応援したこともある。09年に移籍した韓国・Kリーグの浦項ではACLを制し、FIFAクラブW杯で3位に入った。11年から昨シーズンまで札幌に在籍し、今夏からアマチュア選手として奈良クラブへ加入。J1通算64試合6得点、J2通算214試合20得点。
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