所属クラブでの活躍を誓った酒井
[ワールドサッカーキング1409号掲載]
ブラジル・ワールドカップでは出場機会を与えられなかった。様々な悔しさが交錯する中で浮かび上がったのは、自己の存在を強く印象づけるための前向きなエネルギーだ。
インタビュー・文=田中亮平 写真=嶋田健一
大舞台での経験が世界との差を埋める
――ブラジル・ワールドカップ(W杯)を終えて、今の心境をお聞かせください。
酒井 チームとして結果が出せなかったことはもちろんですが、僕個人としても試合に出られなかったことは非常に悔しかったですね。その現実を受け入れて、これからいろいろなことをやっていかなければいけないなと思いました。ただ、今すぐにこの課題を克服すれば試合に出られる、という単純なものでもなくて、監督が変わったり、チームメートが変わったり、いろいろな状況の変化がある。その中で、その時必要なものに取り組んでいくことが大事なのかなと。
――ドイツのように結果を出したチームと、出せなかった日本。その差はどういうところにあると思いますか?
酒井 うーん……本当に、サッカーは難しいなと。例えば大会前に戦ったコスタリカは、確かに良いチームだなとは思いましたけど、後半に失速する感じがあったし、ミスが多いなという印象もあった。けれど本番では違って、日本よりも良い結果を残しましたよね。どこで、なぜ、差が生まれてしまったのかと考えてみても、なかなかピンとこないんです。
――明確に差が分からないというのは、普段ドイツでプレーしているからでは? W杯は決して予想を超えるものではなかったと。
酒井 そういう驚きみたいなものは、どのチームを見ても感じませんでした。ただし、もちろん個人の差というのは絶対的にありました。各国のスターは、明らかにレベルが違いましたね。苦しい局面を迎えた時に、それを打開する個がいるかどうか。コートジボワールの(ディディエ)ドログバも、コロンビアのハメス・ロドリゲスも、明らかに違いを生み出せる選手でした。大会全体で見ても、そういう個がいるチームが目立った気がします。でも、日本にはそういう選手がいなかった。少ないではなくて、いないのが現状だと思います。
――それはブンデスリーガでの日常でも感じることですか?
酒井 そうですね。代表に入っていないような選手でも、そういった能力、雰囲気を感じさせる選手はゴロゴロいます。そういうものを肌で感じられるという部分で、やはり海外でプレーするのは大事なことだと思っています。
――日常のレベルを上げていかなければならないと。
酒井 僕ももう若くないですからね。W杯では同世代の選手たちがたくさん活躍していました。ちょっとドイツでプレーして、それで満足してしまう選手ならそれでいいかもしれないけど、僕はもっと成長して、もっと活躍したいですし、クラブをステップアップしていきたいという気持ちを持っています。だから、少し焦りも感じています。やはりW杯のような大会で活躍する選手は、すごい経験を積んでいますよね。実際、今大会の日本代表の中で一番パフォーマンスが良かったのは間違いなく(内田)篤人君でした。篤人君はチャンピオンズリーグをたくさん経験しているからこそ、大舞台で本領を発揮できた。そういった選手がいかに増えていくかというのも、4年後を考えた時には大事な要素なのかなと思いますね。
――そのために、酒井選手個人としてどういう部分にテーマを置いていきますか?
酒井 シュトゥットガルトで3シーズン目になりますが、これまでは「自分を出したい」という気持ちを持ちながら、どうしてもチーム状況や流れに合わせて、良さを出せずにシーズンを終えている感じがありました。なので、まずはそこを変えたいなと。もっとアピールするというか、「俺はここにいるんだ」というものを見せていきたい。ガンガン前にいって、守備もしっかりやる。自分の売りを試合でどれだけ出せるか。その先に、次のステージが見えてくると思っています。