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【特別インタビュー】カレン・ロバートが語るタイリーグ…そして、自身のセカンドキャリア

2014.10.04
カレン・ロバート

ジュビロ磐田からロアッソ熊本、オランダのVVVフェンロと選手生活を重ね、タイのスパンブリーFCに移籍したカレン・ロバート。日本に一時帰国した時間を縫って、原宿のカフェでインタビューを敢行した。
インタビュー・文=永田 到

タイで過ごすプロ生活

タイと日本では、同じアジアといっても大きく環境が異なるが、中でもプレーに大きな影響がありそうなのが気候の違いだ。バンコクを基準に見ていくと、年間の平均気温が29.1度で、平均湿度が76.2パーセント(在タイ日本国大使館の発表による)。東京はそれに対して平均気温が16.3度で平均湿度が62%(気象庁の発表による)。プレーのコンディションにも大きく影響しそうな感じがするが、現地ではどのようにしてこの暑さをしのいでいるのだろうか。

「そもそもタイでは日が照ってる時間を外して、たいてい涼しい時間帯に練習するようなスケジュールになってるんですよ。練習開始時間が午前8時とか、夕方5時だったりします。だから練習をしていても、めちゃくちゃ暑いという感じではないですね」

ただ長いシーズンの中で、強烈な日光が差すこともあれば、日本では考えられないくらいの大雨にも時折見舞われることもある。「8月に行われたリーグ戦で、大雨のせいでドリブルをしようにも全然進まない。『こんな状態でも試合をするんだな』……って感覚でしたよ。あれはもう最悪でしたね(苦笑)。ピッチ上に大きな水たまりが出来て、ボールがそこに沈んでいるような状態です。この試合、普通のドリブルだとまともに前に進めなかったんで、ストイコビッチが現役の頃に(1994年のジェフユナイテッド戦で)見せたようなリフティングドリブルをやろうとしたんですよ。相手選手に防がれてすぐ吹っ飛ばされましたけどね」

スタジアムの観客席の屋根は、スタジアムによってあったりなかったりするのが現状で、天候は試合をスタジアム観戦しに行くファンにとっても重要な問題だ。「ファンは(お国柄)すごくカラフルな色の傘を持ってきて、雨が降ったらそれを差しています。タイのファンは天候対策をしっかりしてるなと思いますね」

経済レベルではASEANの中の新興国という位置づけになっているタイだが、設備環境にはまだまだ難があるというのが実情だという。「1度だけ、カップ戦で3部のクラブと試合をしたことがあるんですが、スタジアムにナイター照明が無いということがありました。日が落ちてからだと真っ暗になってしまって試合が成立しないので、日が照っている午後3時キックオフでした。その時だけですね、本当にヤバイなと思ったのは」

こうした天候や設備の違いに加えて、プロサッカー選手としての生活感覚にも、タイと日本の間では依然として大きな違いがあるようだ。「やはりタイ人はお酒が好きですね。楽しく生活をしながらサッカーもする、という感覚なんだと思います。日本人みたいにサッカーで(プロの選手として)成功をおさめたい、という意識は薄いですね」

本拠地スパンブリーから、バーやクラブ等、遊び場が充実した首都バンコクまでは車移動で約1時間半、約110kmの道のりだ。スパンブリーFCでは、連戦が続く期間はバンコクへ遊びに行くことが禁止されている。しかし規則を無視して「遠征」に出てしまう選手も中にはいるという。

「ちゃんと試合明けにオフをあげるから、それまでは我慢しろよってことをスタッフから言われているのにバンコクへ遊びに行っちゃう。それで誰かの彼女に声をかけてケンカになって、目を怪我して問題になった選手もいました。普段の生活からルーズですね。僕は普通にやってるつもりでも、周りから真面目だなっていわれますね。自分では真面目だと思っていないんですけどね。お前らがルーズなだけじゃないか、って言いたいけど言えない、みたいな状態です」

「お酒って飲むと疲れちゃうんで、実はあんまり好きじゃないんですよ」というカレン・ロバートの境遇に、共感を覚えるサッカーファンは少なくないはずだ。会社組織で働く一般人の我々にとっても、体調のことを考えると、無理やり誘われている飲み会に行くのにはあまり気乗りしないことも多い。しかし会社内で仕事を円滑に進めていくためには、気持ちをこらえて参加した方が、同僚と仲を深められていい。こうした仕事とプライベートの中間のジレンマを、カレン・ロバートはサラッと受け流す術を身につけている。

「確かに飲みに誘われますけど、僕はたいてい『行かない』って言って断っちゃいますね。そのかわりに、練習が始まる前、お昼にチームメートとコーヒーを一緒に飲みに行くくらいですね。タイ人はコーヒーが好きなんで」

英語だけでも充分やっていける

ここ数年タイへ移籍する日本人選手が目立つ中、選手同士や監督とのコミュニケーションは何語で行われているのか。スパンブリーFCではタイ語ではなく、むしろ英語の方が一般的に使われているという。「経済的に豊かになってきていることもあって、外国人枠の選手もいるので、チーム内では英語でコミュニケーションを取っていますね。タイ人でもレベルは低いですけど英語を話せる人もいるんですよ。(タイ語を使わない)自分も全くストレス無く生活できてるんで、英語だけでも大丈夫ですね。今の監督はブルガリア人で、その前の監督もブラジル人で、両方とも英語を話してたっていうこともあって。ミーティングも監督がまず英語で話をして、その後タイ語に通訳される、という流れになっていますね」

北アイルランド人を父親に持つカレン・ロバートは、英語圏のイギリスでのプレーに強い憧れと想い入れを持っていることを隠そうとしない。プレミアリーグを「別格」と表現した上で、「僕としては本当の意味でのイギリスのリーグだと思っているチャンピオンシップ(イングランド2部相当)への移籍を狙っていきたい」という。スパンブリーはイギリスとの接点がどうやら比較的強いようで、それを足がかりにして欧州の舞台に返り咲く可能性にも期待できる。

既に見据えている未来

現在29歳のカレン・ロバートが、既にセカンドキャリアを見据えながら現在取り組んでいるのが、サッカースクール「ローヴァーズ」だ。既に千葉県の佐倉市と白井市に拠点を抱え、登録会員数は現在約100名を数える。ここへさらに10月からは木更津市も拠点に加える形で活動をしていくという。英語学習とサッカーのトレーニングをかけあわせたプログラムを準備しているという取り組みは、カレン・ロバート本人の訴える語学習得の必要性や、イングランドに対する強い思い入れが反映されていることが見て取れる。

スクールの総合責任者で、カレン・ロバートとは市立船橋高校時代のサッカー部員仲間でもある松川氏は、スクールの合宿での偶然の出来事を明かしてくれた。「スクールの合宿で、市立船橋高校時代の合宿所に偶然行ったんです。はじめは気づかなかったんですよ。でも合宿の初日の晩御飯でスコッチエッグが出てきたんです。スコッチエッグを食事で出す合宿所なんてあまり見かけませんよね?だから『あぁ、ここ来たことある場所だ!』と。それで壁を見渡したらU-19かU-20日本代表時代のカレンのポスターが貼られてあったんですよ。食堂の女将さんに声をかけたら、『カレン選手→カレンくんのスクールで来てくれたんですか!』って感激して懐かしがってくれてましたね。高校時代にはご飯を絶対に3杯食べなきゃいけないってルールがあったんですよ。それで食堂には苦しい思い出があったんですが、スクールで子どもたちと一緒に行って楽しい思い出に変わったのはよかったですね」

カレン・ロバートが今なお海外でプレーする一方、旧知の仲間と進めてきた取り組みは、母国日本で着実に根を生やしつつある。タイでのプロ生活を経たその先に、イングランドでプレーするという強い想いは実現するのか。そして日本の子どもたちにどんな影響を与える存在になっていくのか。その未来は刮目に値する。

ROVERS FOOTBALL ACADEMY ローヴァーズフットボールアカデミー

カレンロバートが代表をつとめるアカデミー。千葉県佐倉校、白井校に加えて10月20日に木更津校をイオンモール木更津内にオープン予定。ヨーロッパのメソッドを取り入れ、世界に羽ばたくサッカー選手を育成する。映像分析による指導や英会話指導など、先進的な育成プログラムに基づいての指導を計画。なお、利用施設はフットサルコートとしてのレンタルも可能。イオンモール内のBBQ場やサーキット場とのパック→コラボレーションプランも充実させていく予定。

ローヴァーズフットボールアカデミー
http://rlepta.com/
ローヴァーズフットサルスタジアム
http://www.rovers.co.jp/

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