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【熊田喜則氏(INAC神戸レオネッサ監督)インタビュー前編】U-19日本代表のアジア選手権敗退に見る日本サッカーの問題点とは?

2014.12.15

4大会連続で逃したU-20W杯出場権…日本サッカーが抱える課題とは

AFC U-19 Quarter Finals - Japan v North Korea
インタビュー・文=清水英斗
写真=Getty Images

 10月に行われたU-19アジア選手権は、カタールの初優勝で幕を閉じた。2015年にニュージーランドで行われるU-20ワールドカップの出場権を得たのは、カタール、北朝鮮、ミャンマー、ウズベキスタンの4カ国。一方、日本代表は準々決勝の北朝鮮戦でPK戦の末に敗れ、4大会連続でU-20ワールドカップへの出場権を逃すこととなった。

 この大会の開催国となったミャンマーでは、日本サッカー協会(JFA)のアジア貢献事業として、2011年8月から熊田喜則氏(※)が同国女子代表の指揮を執った。その熊田氏に、今回のU-19日本代表の敗退について所感を述べてもらった。
(※編集部注:熊田氏は三菱養和サッカークラブ、大阪学院大学などの日本国内で指導に携わったほか、ブラジルのパラナサッカートレーニングセンター、2010年には韓国の大慶大学やFC.KOREAでコーチを務めるなど、国際経験が豊かな日本人指導者である。同氏はJFA公認S級ライセンスや、ブラジルサッカー協会公認ライセンスを保持。2013年にはミャンマー女子代表での実績が評価され、ASEAN最優秀女子監督賞を受賞している。なお、今年10月からINAC神戸レオネッサの新監督に就任)

「ASEAN(東南アジア諸国連合)で行われる大会は、技術や戦術云々ではありません。例えば、サンパウロFC(ブラジル)なら、練習場に3種類の芝のグラウンドが用意されて、次に戦う相手のグラウンドに合わせた練習をしているわけですよ。ミャンマーの場合、ネピドーのナショナルスタジアムの芝は4カ所存在する。しかし、ASEANの芝は葉が大きく、粘っこい芝が普通で、ティフトンの芝(踏圧、擦り切れによる回復力が強く、サッカー場をはじめとする競技場での利用が増えている)を使っているところは少ないんです。今回の視察で気付いた人は少ないと思いますが、試合前に水を撒いていました。ミャンマーには長い雨季があります。6カ月も続く雨季の間に練習してきたので、その状態を作ったのだと思います」

「そのような環境下で、日本のポゼッションサッカーをどのように変えていかなければならないのか? 『芝の状態により、日本のサッカーができなかった』では、指導者として駄目だと思うんです。小学3年生、4年生の時にパス練習ばかりやらせているチームがあるけれど、最近の選手は足下でどうやってプレーすればいいのか、分からなくなっている選手が多いように思います」

「ブラジルの選手はなぜ、いつも劣悪なピッチを苦にすることなく、プレーできているのか? これだけではないかもしれませんが、劣悪なピッチに対する経験の差がひとつの答えになるのでは? 日本サッカー協会では、大会開催予定地で意図的に事前合宿を行っていますが、芝を工夫したピッチを備えた施設を国内に用意することも必要ではないでしょうか」

 意図的に劣悪な芝を作ること。もし、そのような施設があれば、A代表から世代別代表、ACLを戦うクラブなどがアウェー戦対策として利用できる。また、そのようなピッチ環境でプレーできるか否かも、メンバー選考に影響を与えてしかりだ。今後、アジア各国の台頭が予想される中で、日本が考えなければならない課題だろう。

海外挑戦のきっかけとなった“スペシャリスト”との出会い

 ASEANやブラジルをよく知る熊田氏だが、そもそも海外で指導したいと思ったきっかけがあるそうだ。
 
「パラナサッカートレーニングセンターでU-12を見た時のことです。名前は忘れたけど、以前フラメンゴで有名選手だった70歳近くのコーチがいて、その人が本当に良い選手ばかりを作るんですよ。彼は昼休みに一生懸命、ストレッチボードのような斜めにした木みたいなものを作っていました。その人はおじいちゃんだから、もうボールを強く蹴れないわけ。トラップしてシュートとか、そういう練習をやらせようとしても、自分がボールを浮かすことができないわけです。そこでどうするか? その斜めに作ったボードにボールをぶつけて、子供のところに浮いた球がいくようにしたんです。感動しましたよ。球出しのためだけに、昼休みにずっとその装置を作っていたんですから。スペシャリストですよね。子供たちにボールを出すのも、20本や30本じゃない。200本、300本、400本とボールを蹴らなきゃいけないんです。でも、力がないからできない。そこでどうするのか。その発想がすごいですよね」

“蹴れないからできない”ではなく、“どうすればできるのか”を工夫する。これは芝の話にも通じるだろう。

「我々は“できない”で終わってしまう。できないから、手で持って蹴ったり、投げたりする。でもやっぱり、地面に置いて蹴ったボールとは違うんですよ、回転が。おじいちゃんコーチは、それがわかっているんです。その工夫の仕方がブラジルの人は違う。私もそういう指導のスペシャリストになりたいと思い、海外へ行こうと考えました。自分を必要とするところがあるのなら、そこでやりたい。日本でもシンガポールでもエジプトでもよかった。言葉はそこへ行った時に覚えればいい」

 この話を聞いて思うのは、我々は創意工夫が足りているのだろうか、ということ。今大会の敗因として考えられる部分もあるだろう。それは本当に“仕方がない”ことなのか? 本当に文化や環境のせいなのか? できない理由探しをしていないだろうか? 仮に問題があったとしても、工夫してカバーするチャンスはあったのではないか? 今一度、自らに問い直す必要がある。

「例えば、日本の選手たちにハングリーさをどうやって持たせるか。現在の指導の中では、これをやってはいけない、あれはダメとか言うけれど、アギーレ(現日本代表監督)も選手をひっぱたいているでしょう(※著者注:ベネズエラ戦でPKを与えた水本裕貴の頬を叩いたシーンは映像にも残っている)。世界で実績を残した監督が選手をひっぱたいて、ガッと選手の中に入っていくんですよ。もし、今の日本が勝負強さを育てにくい環境だとするなら、なおさら指導者が意識して工夫しなければいけないのでは?」

 日本の指導者育成プログラムは、アジアでは他に類を見ないほど充実している。その一方、マニュアル化されたことで画一的に繰り返すだけの指導者が増えていないだろうか? 目の前の選手を、工夫して伸ばすことができる指導者が減っていないだろうか? あるいは、有能な指導者をスカウトするダイレクターの仕事は十分に行われているのか? 「強い国は何か工夫をしている」と語る熊田氏の指摘には、日本が反省すべき点がいくつもあるように感じられる。

インタビューの後編では、熊田氏がミャンマーで取り組んだ指導の日々をお届け。

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