7年半ぶりに息子が家に帰ってきた!!
多くのロス・コルチョネロス(アトレティコ・サポーターの愛称)がまるで実家に自分の家族が久々に帰ってきたような歓迎ぶりだ。フェルナンド・トーレスのアトレティコ・マドリードの復帰が決まった。12月30日にマドリードのバラハス空港に到着すると多くのサポーターが出迎え、背番号19のユニフォームもオフィシャルショップで多くの人が買い求め、1月4日のビセンテ・カルデロンでのお披露目式では4万人を超える観客が集まった。地元紙は数日トーレス一色だった。まさに“ブーム”といった現象だ。
アトレティコのサポーターにとって、フェルナンド・トーレスは特別な存在だ。11歳からカンテラに所属し、トップチームでキャプテンを務めた彼を誰もが愛している。まさにクラブのシンボルであり、象徴だ。それは彼がイングランドに渡ってからも変わらなかった。トーレスが違うユニフォームを着てビセンテ・カルデロンに帰還すると観衆はそれまでと変わらない声援を送った。たとえ違うユニフォームを着ていても、その愛情が変わることはなかった。そんなストライカーが1人のサッカー選手としてさらに成熟して帰ってきた。30歳であり、まだ引退するには多くの時間を残している。老け込むには早い。ロス・コルチョネロスの期待は膨らむばかりだ。
果たして彼はこの愛情に、その期待に応えることができるのか。
トーレスはリヴァプールに移籍する時にこう語っていた。
「アトレティコ・マドリードがそのクラブに値するポジションについた(タイトルを争うチームになった)時に、戻れることを期待したい」
「リヴァプールはここで達成できなかった目標を提起した」
「チャンピオンズリーグで対峙できればいいな」
アトレティコ・マドリードはタイトルを勝ち取れないと感じていたトーレスはひとりのスポーツ選手として、タイトルを争うチームへの移籍を望み、退団した。
移籍したリヴァプールでは、多くのゴールを量産。プレミアリーグ史上最高移籍金額でチェルシーに移籍。チェルシーではあざ笑われることもあったが、ヨーロッパリーグ、チャンピオンズリーグを勝ち取り、スペイン代表でもワールドカップ、欧州選手権を2度制覇した。選手としてこれ以上ない実績と経験を身につけた。
その間にアトレティコ・マドリードも変貌している。トーレスの移籍金でセルヒオ・アグエロ、ディエゴ・フォルランを獲得したのを皮切りに徐々に強化を図り、ディエゴ・シメオネ監督を迎えたチームはラダメル・ファルカオ、ジエゴ・コスタと偉大なストライカーを抱えてヨーロッパリーグ、そして昨シーズンはリーガを制覇した。さらにはチャンピオンズリーグのファイナリストとなった。トーレスが退団してから7年半の間に彼が言う「タイトルを争うクラブ」にアトレティコ・マドリードは変貌した。
チェルシーに移籍してからゴールを決めることもよりも外すことがニュースとなっていたトーレス。依然として世界でトップレベルのストライカーと認知されている彼だが、近年はシーズンで30得点を奪う活躍を見せていたわけではない。ゴール数も少なく、チェルシーでも、ミランでも絶対的なレギュラーを確保できなかった。パフォーマンスは低調だった。だからこそ、アトレティコ・マドリードに復帰できたという事実もある。そんな彼がサポーターから多大な愛情を受けているとはいえ、欧州でタイトルを争うクラブで依然として活躍できるのか。
「ディエゴ・シメオネがトーレスを復活させるだろう」
「自分の愛するアトレティコ・マドリードでプレーするという特別なモチベーションが必ず彼を復活させるだろう」
マドリッドの街角では、そんな希望的な観測を含めた声もあれば、現実的な声もある。
「マリオ・マンジュキッチの代わりだ」
「シメオネはローテーションを敷くから、起用はされるだろうが、あくまでの数分の出場だろう」
トーレスはアトレティコ・マドリードにとって愛されるだけでなく、タイトルを争う上で大きな戦力となるのか。ロス・コルチョネロスが期待するような、レアル・マドリードにとってのクリスティアーノ・ロナウド、バルセロナにとってのリオネル・メッシとなるのか。