日本代表と対戦するヨルダン代表の注目選手とシステムの見方
~AFCアジアカップ2015に挑む日本代表の対戦国(3)~
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日本代表は16日、イラク代表に1-0で勝利した。パレスチナ戦に続き勝ち星を挙げた日本だが、グループリーグ突破は20日に行われるヨルダン代表との一戦に関わっている。
12日にヨルダンはイラクと戦って0-1で敗れた。大会2試合目となった16日のパレスチナ戦は5-1の完勝で試合を終えた。1勝1敗の成績は、日本との結果によってグループリーグ突破の可能性を残した。
日本は、ヨルダンとの試合で引き分け以上なら、イラクの成績に関係なくグループリーグ首位通過が決まる。もしもヨルダンに敗れた場合は、グループリーグ敗退の危機も可能性としてある。
日本とヨルダンとイラクの3つの国が勝ち点6で並んだならば、アジアカップのレギュレーションに従って順位が定まる。それは、該当するチーム間の(1)勝ち点(2)得失点差(3)総得点の順で決まるのだが、もしもそれでも並んだときは、グループ全体での(4)得失点差(5)総得点の順で順位を確定することになっている。
ヨルダンはイラクに勝てなかった。そして、勝利したイラクに日本が勝っている。だから、日本が有利だとは絶対にならない。なぜならば、2013年3月26日、ブラジルW杯アジア最終予選で、ザッケローニが率いた日本代表は、1-2でヨルダン代表に敗れているからだ。つまり、いかなる状況でも油断は禁物だという教訓を、あの試合で教えてくれたのである。
ヨルダンは、勝利を目指して挑んでくる。もしかしたら、イラクよりも手強いかもしれない。
ヨルダン代表のシステム
ヨルダン代表のレイ・ウィルキンス監督は、1956年9月14日にイングランドのヒリングドンで生まれる。ウィルキンス監督はプレーヤーとしても知られている。1997年に現役を引退するまで、プレミアリーグのチェルシーやマンチェスター・ユナイテッドなどで活躍する。指導者としては、フルハム監督を務めた後で、チェルシーのコーチとしてチームを長く支えてきた。そして、2014年9月3日にヨルダン監督に就任する。
16日に行われたパレスチナ戦を見れば、[4-4-2]の中盤がダイヤモンド型のシステムが採用されている。DF陣は、イラク戦と違ったメンバーを使ってきて、全体的に攻撃的な選手構成を敷いている。対日本との戦いでは、イラク戦同様にDF陣にテコ入れがあると思われるが、システムは中盤がダイヤモンド型を取ってくると考えられる。
パレスチナ戦で4得点と大活躍したのは、背番号20番のFWアル・ダルドゥールである。そして、アル・ダルドゥールと2トップを組むFWディーブは、1点目と2点目を生んだアシストを記録している。また、3点目のアシストは右サイドハーフのアルサイフィであり、5点目は右SBのザーランのアシストによる。
攻撃的な役割を担った選手が得点とアシストに絡んだパレスチナ戦によって、ウィルキンス監督は、代表歴88試合18得点のFWアハマド・ハイールをスタメンで起用するかどうか難しい選択を迫らせることになった。
ポゼッション率がパレスチナよりも劣っていたことからわかるように、ボールを保持して攻撃するという戦術を取らない。ボールを奪ったらサイドから早めにクロスを上げるというやり方をする。また、ゴールから多少距離があっても、かまわずにシュートを打ってくる。
パレスチナ戦でトップ下を務めた背番号8番のムルジャは、システムにフィットしていなかったので、ハイールをFWにしてディーブをトップ下にもってくるかもしれない。足が速くてパスセンスがあるディーブは、日本にとって要注意な選手だ。
ここまで述べてきた彼ら以外の注目選手を簡単に紹介しよう。
ヨルダン代表の注目選手たち
注目選手 背番号10番 FWアハマド・ハイール
ヨルダン代表のエースストライカーの31歳になったベテラン選手。スピードで相手DFを置き去りにして、コンタクトプレーにも強いフィジカルをもつ印象がある。先に述べたブラジルW杯アジア最終予選で、日本が敗れた試合で決勝点を挙げた。果たして、日本戦でスタメン出場をするのかどうか。
注目選手 背番号9番 FWマフムード・ザタラ
U-23ヨルダン代表では絶対的エースだった存在。そのときはシステムが[4-2-3-1]だったので、最前線の1トップを務めていた。身長185センチの高さを生かしたヘディングが武器。24歳になった大器は、今大会で片鱗を発揮できるのか。
注目選手 背番号8番 MFサイード・ムルジャン
本来のポジションは、DFの前に構えるCHである。パレスチナ戦では、ダイヤモンド型のトップ下を務める。
19歳のときにA代表に呼ばれて、ここまで60試合近く出場している。現在25歳となったムルジャンは、チームに絶対に欠かせない選手に成長したと言える。パスセンスに優れ、相手を潰す守備力をもつCHとしては理想的なプレーヤーである。
[4-3-3]と[4-4-2]の対比
【日本がボールを持っているとき】
(1)日本のDFが4人に対してヨルダンのFWが2人なので、ビルドアップの際に4対2で数的優位になれる。
(2)ヨルダンのSHが縦に前進してこない限り、日本の両SBはフリーになれる可能性がある。
(3)中盤の配置を細かく見れば、日本の逆三角形の3人に対して、ヨルダンはMF1人とCH1人なので3対2で日本が数的優位になれる。
(4)日本のインサイドハーフの2人は、ヨルダンのCH1人の間になるので2対1で日本が数的優位になる。
(5)日本の3トップの両サイドに対して、ヨルダンの両SBは1対1の数的同数になる。1対1で対面しているが相手を躱せばフリーになれる。
(6)日本の3トップの真ん中にいるFWが、ヨルダンのCB2人と1対2の関係にある。日本にとって数的不利な状態だが、ヨルダンの2人のCBの間にポジショニングすれば相手の守備が難しくなる。
【日本がボールを持っていないとき】
(1)日本のFWは真ん中に1人いるが、ヨルダンのCBは2人なので1対2の数的不利になる。
(2)中盤の全体像を見れば、日本はMFが3人に対してヨルダンのMFは4人なので3対4の数的不利になる。
(3)日本のインサイドハーフが2人に対して、ヨルダンのCHは1人なので数的不利になるが、日本の2人の間に立つのでマークが難しくなる。
(4)日本のCH1人とヨルダンのMF1人がマンツーマンになる。
(5)ヨルダンの両SHがフリーになれる可能性がある。
(6)日本のCBの2人とヨルダンのFW2人が数的同数でマンツーマンの状態にある。
ここまで記してきたことを念頭に置いて、日本対ヨルダン戦を楽しんでもらいたい。予選2試合を見れば、日本が勝ってグループリーグ首位通過が強力だと思われる。
この試合での日本の注目選手は香川真司である。
(表記の説明)
GK=ゴールキーパー
DF=ディフェンダー
CB=センターバック
SB=サイドバック
WB=ウイングバック
CH=センターハーフ
MF=ミッドフィールダー
WG=ウインガー
FW=フォワード
CF=センターフォワード