[ワールドサッカーキング3月号掲載]
「今回のインタビューは趣向を変えて、チームメートを紹介してほしい」我々がそうお願いすると、ケヴィン・グロスクロイツは笑顔でうなずき、「検閲が掛かるかもしれないね(笑)」とおどけてみせた。とにかく陽気で、取材中も終始笑顔。たった5分一緒にいただけで彼がなぜチームメートやサポーターから愛されているのかが理解できた。ドルトムントきってのムードメーカーが、自身と仲間たちを語り尽くす。
インタビュー=国井洋之
通訳=円賀貴子
写真=ムツ・カワモリ、ゲッティ イメージズ
一度ボルシアの人間になったら、生涯ボルシア人なんだ
――チームメートを紹介していただく前に、まずは自己紹介からお願いします。日本のファンはあなたに対して、闘志溢れる選手、ドルトムントへの強い愛情を持った選手という印象を抱いてますが、実際にはどうですか?
グロスクロイツ 確かにピッチ上での僕はかなり熱いかもね。クラブとファンのために、とにかくすべてを出そうと思ってプレーしているから、一度ピッチに入るといつもアドレナリンでいっぱいなんだ。でもピッチの外での僕は、チームのムードメーカーみたいなところもあると思う。こう見えて、僕って結構優しいんだよ(笑)。
――プレーヤーとしての自己評価はどうですか?
グロスクロイツ いつも100パーセントでプレーする。例えば一対一の局面で決して手を抜かない。そして、チームのために絶対に諦めずに戦う。それが僕のプレースタイルだと思う。
――あなたの特徴の一つとして、複数のポジションをこなすポリバレント性が挙げられます。過去にはGKも経験していますよね?
グロスクロイツ よく知っているね(笑)。確かに僕はほとんどすべてのポジションでプレーしたことがある。でも、それは僕が器用だからではないよ。大切なのは、どのポジションだろうと常に全力を出すってことなんだ。僕は監督が必要としてくれるのなら、どのポジションでだって喜んでプレーする。
――あなたは少年時代からドルトムントの熱狂的なサポーターとしてゴール裏に通っていたと聞いています。改めて、ファンになったきっかけを教えてください。
グロスクロイツ 4歳の時に親父に連れられて、初めて南側スタンドで試合を見た。それ以来、時々見に来るようになって、7歳の時に年間シートをプレゼントしてもらったよ。それからはホームゲームは全部見に行ったし、親父と一緒にミラノやロッテルダムのアウェーゲームにも行った。14歳になる頃には一人でアウェーゲームに出掛けるようになってたよ。一度ボルシアの人間になったら、生涯ボルシア人なんだ。僕の中に他のクラブなんて存在しない。
――ドルトムントに入団した経緯は?
グロスクロイツ 僕はそれまで3部リーグや2部リーグでプレーしていたんだけど、ある日、代理人から電話が掛かってきて「ボルシア・ドルトムントが君を欲しがっている」と言われたんだ。何も考えずに「行きます!」と即答したよ(笑)。その結果、僕は夢をかなえて、今こうして君たちと話している。まあ、ドルトムントの選手としてプレーしている今も、僕はこのクラブの熱狂的なファンなんだけどね。
――あなたのクラブ愛を表すエピソードとして、こんな話を聞いたことがあります。シャルケ戦後、香川選手が内田篤人選手とユニフォーム交換したことに、あなたは激怒したそうですね。この話は本当ですか?
グロスクロイツ 確かあの時は、シンジにこう言ってやったんだ。「友達なのは分かるけど、これはダービーマッチなんだぞ!」ってね。その話は事実だよ(笑)。
――日本でも香川真司選手と仲がいいということは有名なんですけど、まずは香川選手からお願いします。
グロスクロイツ シンジ?すごくヒドいヤツだよ!って言うのは冗談(笑)。シンジは僕の親友さ。僕らはいつもロッカールームでふざけ合っている。とにかく帰って来てくれてうれしいよ。シンジは帰るべくして、帰るべきクラブに帰って来た。面白いヤツだし、親切だし、本当に優しいヤツさ。そうそう、シンジはビールが飲めなくてね。ちょっと飲むだけですぐにダメになってしまうんだ。ドイツでは致命的だよね(笑)。
――同じ日本人ということで、ドルトムントには丸岡満選手もいますが?
グロスクロイツ どうやら僕は日本人とかなり相性が良いみたいだ(笑)。ミツもすごくいいヤツで、面白いヤツだよ。シーズン前の夏合宿には彼も来てたんだけど、ダンスやラップがうまいのにビックリした。ミツはシンジと同様にすごくいい選手だよ。これからがすごく楽しみだ。
主将のマッツ・フンメルス、9年をともにするマルコ・ロイスやユルゲン・クロップ監督について語ったグロスクロイツのインタビューの続きは、ワールドサッカーキング3月号でチェック!