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●UEFAチャンピオンズリーグ決勝戦で注目すべきポイント-バルセロナ編-
イタリア・セリエAを勝点87で優勝したユヴェントス。イタリア杯でも2-1で勝利して優勝したユヴェントス。6月6日に行われる今シーズン最大のサッカーイベントであるUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦で勝利して、セリエA、イタリア杯、CLと3冠を達成しそうなユヴェントス。終盤を迎えた今季の欧州サッカー界の景色は、ユヴェントスのサッカーの話題で染まることになるだろう。きっと誰もがそう感じることになるに違いない。
ここまでの文章は、前回のコラム「UEFAチャンピオンズリーグ決勝戦で注目すべきポイントーバルセロナ編ー」とほぼ同じ形式である。数字と大会名とクラブ名を変えただけだ。しかし、この後に続く内容はまったく違うものになる。それが、バルセロナとユヴェントスのチーム内部で起こっている差異とも表現できる。つまり、バルセロナのルイス・エンリケ監督とユヴェントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督では、選手やサポーターに対する影響力の違いや置かれた立場の違いがあると言えるのだ。
周囲の懐疑から始まって信頼を勝ち得たアッレグリ監督
2010-11シーズンを2年連続7位という順位で終えたユヴェントスは、名門クラブ復活への足がかりとしてクラブ出身選手のアントニオ・コンテを監督として招聘した。コンテは就任会見で「過去にない新しいものを取り入れる必要はない」と宣言する。彼は、キーワードとして「ハードワーク」を謳って選手たち全員に厳しく要求していく。フィジカルとメンタルの強度さを選手に追求し、戦術的にはメカニックできっちりと型にはまったやり方を実行させた。
コンテが監督として最後のシーズンとなった2013-14シーズンは、なんと勝点102という驚異的な数字を挙げて、ユヴェントスを3連覇へと導いた。こうして実績を積み重ねてきたコンテが、2014年7月に突然チームを去ることになって、監督を引き受けたのが現監督のアッレグリである。
アッレグリ監督は、就任当初は「機能しているものに手をつける必要はない」と述べて、コンテが採用していた[3-5-2] のシステムを踏襲する。しかし、10月29日に行われた第9節のジェノア戦に0-1で敗れると、次節のエンポリ戦から[4-3-1-2]にシフトチェンジした。このシステムは、アッレグリ監督の得意とする配置なのだが、特に、ディフェンダーの前に3人の中盤を並ばせる布陣にはこだわりを持っている。3人が攻守・守攻に渡って、どのように連携していくのかをテーマにしているのである。
アッレグリがユヴェントスの監督になったときには、多くのサポーターから懐疑的な意見がもたらされた。実際に、試合前の紹介のアナウンスに対して、スタジアムにいるサポーターは何の返答もなく沈黙していた。しかし、チームの成績が結果に反映されるに従って、スタジアムにはアッレグリコールが聞こえるようになっていった。
コンテとアッレグリのサッカーの違いは、コンテよりもポゼッションしながらゲームを組み立てていき、得点を奪うフィニッシュの部分では、攻撃陣のアイディアに任せるというやり方をとる。「アイディアに任せる」と言っても、何でも自由にやらせるというのではなく、サッカーの原理原則に忠実に従わせている。第一に相手の裏を狙い、次にピッチの中央を攻略して、さらにサイドから攻撃する。その組み合わせにおいては、選手のアイディアに任せるということである。
ジュネーヴ大学大学院文学部言語学科終了。青森県出身。『サッカープロフェッショナル超分析術』『サッカープロフェッショナル超観戦術』(カンゼン)『大宮アルディージャの反逆』『俺にはサッカーがある』( 出版芸術社)。『サッカー批評』(双葉社)「田中順也TJ リスボンからの風」を連載中。Web「サッカーキング」でコラムを執筆。
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