構成=波多野友子 写真=兼子愼一郎
将来、サッカー関係の仕事に就きたいと考えているけれど、どんな業種や職種があるのかよくわからない……。そんな疑問を抱いている人にぜひ読んでいただきたいのが、この連載『サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた』です。
今回のインタビュアーは、古山啓太(ふるやま・けいた)さん。男子・女子サッカーの専門学校「JAPANサッカーカレッジ」のサッカービジネス科2年生で、卒業後はサッカーに携わる業種で働きたいと考えています。今回は「株式会社ニューバランスジャパン」の山崎祐仁(やまざき・ゆうじん)さんに、実際の仕事内容や一緒に働きたい若手像などについてお話を伺いました。山崎さんは、マルアーヌ・フェライーニ(マンチェスター・ユナイテッド)やアドナン・ヤヌザイ(マンチェスター・ユナイテッド)など、各国のスター選手とアスリート契約を締結したスポーツブランドでマーケティングやプロモーション業務を統括しています。
サッカー業界で、御社はどんな取り組みをしているのですか?
2月にフットボール業界への参入を果たしたのですが、ヨーロッパではリヴァプール、ポルト、セビージャ、セルティック、ストークの5チームと、Jリーグでは、サガン鳥栖、モンテディオ山形とサプライヤー契約を結びました。ニューバランスが誇るプロダクトの良さを最大限に発揮し、選手たちのパフォーマンス向上に貢献できるよう様々な角度から取り組んでいます。そのプレーを目にしたフットボールファンの人たちにも、実際に使用してもらえるような魅力的なアプローチを計画しています。
実際に山崎さんは、どんな仕事をしているのですか?
当社の商品を多くの人に知ってもらうためのマーケティングや、広告の企画・制作、広報・PR活動がメイン業務です。そこで現在、私はチームを統括する役割を担っています。具体的には、広告代理店と打ち合わせをしてテレビCMなどの広告を制作したり、完成した広告を、自社サイトを始め他のメディアとどう連動させるかについて企画・実行しています。
フットボールに関しては、2月にロンドンで行われた参入発表イベントの様子を、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSを駆使して配信しました。サッカー専門の各メディアとも情報を連携させ、サッカーファン、あるいはニューバランスファンに、当社がフットボール業界で新たなチャレンジを開始するというニュースを広く知ってもらえるよう取り組んでいます。後発だからこそ、いかに他社とは違うアプローチができるか工夫した結果、SNSユーザーなどからポジティブな反応を引き出せたのはうれしかったですね。
ニューバランスジャパン社を志望した理由を教えてください。
学生時代から、履くだけではなくコレクションして楽しむくらいスニーカーが好きでした。就職活動を始めるにあたって、せっかくなら自分の興味のあることに関われる仕事がしたいと思い、当社に応募しました。
実は学生時代、自分には一つ強みがあって……。当時、まだビジネス分野であまり普及していなかったパソコンやインターネットに、かなり詳しかったんです。秋葉原で部品を購入しては、パソコンを自作したりしていました。入社面接の自己PRの時「近い将来、インターネットでシューズを販売する時代がくると思う。自分は大好きなニューバランスのシューズを履いて、ネットで営業がしたい」と話したことを覚えています。今だから言えることですが、希望どおりの会社に就職することがゴールじゃないんですよね。学生の皆さんは、入社してから何をやりたいか、というビジョンを持って就職活動に臨む姿勢が大切だと思います。
最近、日々の業務が実を結んだと感じたことはありますか?
ニューバランスのシューズが、多くの女性に受け入れられたことですね。数年前まで、スニーカーってスポーツ以外の目的では、女性にまったく人気がなかったんですね。それが、2012年頃から女性の間でファッションとしてのスニーカーが流行り出しまして。そのタイミングを逃さず、人気読者モデルの女の子にシューズを履いてもらって、雑誌とのタイアップ企画や個人ブログでの拡散を仕掛けたところ、一気に大ブレイクしたんです。PRとソーシャルの両面がうまく連動し、成果が出せたのだと思います。
サッカーにかかわる仕事のどんなところが楽しいですか?
フットボール参入に先駆けて、マルアーヌ・フェライーニやアドナン・ヤヌザイらヨーロッパの契約選手たちに、当社のシューズを履いてプレーをしてもらったんですが、いち早く発見したフットボールファンたちが、SNSでザワザワし始めたんです。「ニューバランスが新しいことを始めたらしい」「ワクワクするよね」って。そういう反応を目にすると、「詳しく言いたいんだけど、まだ言えない!」というもどかしさも含めて、やはりうれしいですよね。
今後、フットボールに関する新しい情報が随時配信される予定ですが、ユーザーの反響ってデジタルの世界では数字で一目瞭然じゃないですか。そういった数字が設定値を上回った時には、やはりやりがいを感じます。
仕事をしていく上でのポリシーを教えてください。
なんでも「とりあえずやってみる」というフットワークの軽さでしょうか。例えば、知らないワードを耳にしたら、とりあえず検索してみる。僕の場合、名刺交換をした相手についても、別れた後にすぐバックグラウンドを検索してしまうほどなんです(笑)。どんなことにでもアンテナを張るのが習慣になっていて、それはもちろんマーケティングのアイデアにも生かされますし、人とのコミュニケーションを円滑にする、会話の引き出しを増やすことにも役立っています。
どんな若者と一緒に働いてみたいですか?
サッカー選手で例えるなら、「オフ・ザ・ボール」の動きが優れている人。ある案件というボールが自分の足元から離れた後も、その後どう進捗しているかを気にすることができる人ですね。それから、自分に直接関係のない業務にもアンテナを張って、人と人のやり取りを観察して、「自分だったらこうしよう」というビジョンを持つことが必要だと思います。
あとは、「ビジネス書を疑える人」ですね。ビジネス書を読んで、すべてを吸収してしまうよりは、「ここは自分の考えと一緒だけど、ここは自分ならこうするな、ここは人に説明するのに引用できるな」といった読み方をできる人は伸びると思います。
今後の目標を教えてください。
フットボール業界でも、ブランドのトップ3に入ることですね。当社のシューズを履いたことがある人の多くが、他のブランドにはない履き心地のよさやフィット感を実感してくれています。それは、もともとランニング分野で培われたテクノロジーの賜物であり、ニューバランス最大の強みでもあります。今後も、有名選手に着用してもらうことでブランドイメージを高めるだけではなく、フットボールをはじめ、あらゆるスポーツを楽しむ人たちのパフォーマンスを支えられるようなプロダクトづくりにこだわり続けたいです。
サッカーの仕事を直接教えてくれた人
山崎祐仁(やまざき・ゆうじん)さん
株式会社ニューバランスジャパン、ブランドコミュニケーションチーム マネージャー。1997年に入社後9年間、情報システム部門にて社内SEや物流・POSなどのシステム企画・運用に携わる。2006年よりマーケティング部門へ配属、Webサイトのコンテンツ管理担当に抜擢され、2014年より現職。「最近、二人の息子がサッカーに夢中なんです。2014年ワールドカップのハイライト録画を何度も見返しては親子で盛り上がるのが、一家団らんの時間です」と話す。
サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた
・「視聴者から反響があった時は本当にうれしい」第1回 岡 光徳さん(テレビ朝日 GetSports)
・「サッカーの仕事を始めたきっかけは、日本サッカー協会への出向」 第2回 松本健一郎さん(西鉄旅行株式会社)