小学生年代でサッカーをする子供を持つお父さん(お母さん)向けに、子供のサッカーの成長、育成に関する各分野のスペシャリストを招き、ジュニアサッカーに必要な知識や考え方を共有するセミナー型のイベント「お父さんのためのジュニアサッカー育成講座」。6月12日に行われた同イベントには、株式会社ビーアンドディー商品部サッカーシューズ・アクセサリーバイヤーを務める中飯信幸氏が登場した。成長期にあるジュニアプレーヤーはどういったスパイク選びをしていくべきなのか。また、プレーヤーの体の一部とも言えるスパイクを長持ちさせるためにはどういった手入れをすれば良いのか――。“スパイクのプロ”が「スパイクの選び方とお手入れ方法」について、余すところなく語った。
今回は「スパイクの選び方とお手入れ方法」についてお話していきます。まず、一つ目が、スパイクの選び方。小学生年代から大人まで、サッカースパイクを選ぶポイントというのは、人それぞれですよね。小学生はカラーやデザイン、着用するプロ選手、誰が履いてるか、友達とかぶらないなどをポイントとして決めている方がほとんどです。しかしながら、最も重要なことは「自分の足にあったシューズを選ぶこと」です。
スパイクを初めて履くまで、多くのジュニアプレーヤーはトレーニングシューズというものを履きます。トレーニングシューズとは、アウトソールと言われている靴底で地面をとらえます。面でとらえるので、グリップ力は落ちるものの、足への負担が非常に少ない。ジュニアプレーヤーというのは、足の筋力が発達していませんので、そういう意味でトレーニングシューズを履いております。それに対して、スパイクはスタッドと呼ばれている足裏のでこぼこが少なくなっており、非常にグリップ力がある。止まったり、走り出す時のグリップ力が非常に強くなっているんです。ちなみに、スパイクを履き始めるのはだいたい小学校の3年生から4年生くらい。これはチームやコーチによって変わるので、一概にどれが正解とは言えないんですけどね。
続きまして、グラウンドについて話したいと思います。まず一つ目。一般的なハードグラウンドと言われている土のグラウンド用のアウトソール。耐久性が強いというのが特徴です。それに対し、ファームグラウンドと言われている天然芝で使用するために作られているスタッド。これは非常に摩耗しやすいんですが、スタッドが高く芝に刺さりやすいです。もう一つ、ソフトグラウンドという、天然芝もしくは雨の土グラウンド用のシューズがあります。これはスタッドが取り換え式かつ、本数が少ないため、雨の土のグラウンド用、土のグラウンドでも強いグリップ力を高く保つことができます。一見、ファームグランド用とハードグラウンド用という二つの種類、見分けがつきにくいですが、これについては選ぶ際に店頭のスタッフに聞いていただければと思います。
続いて、靴底に関して話をしていきたいと思います。ジュニアプレーヤーのスパイクの履き始めというところでは、足への負担を考えて選ぶのが一番です。まず一つ目が、歯形になっているタイプ。ブレード型のタイプと言われているものもあります。走り出す時とか、止まる時にグリップ性が高く、プレーしやすいというのがメリットです。その反面、足への負担が非常に強くなってしまいます。止まる時に足に負荷がかかるのはデメリットですね。
もう一つは丸型のスタッド。ポイントの形が丸くなっているものです。メリットは足への負担が少ないこと。そしてブレード型のタイプに比べてターンがしやすいことです。その一方で、デメリットはグリップ性がブレード型のタイプに劣ることですね。実は、なでしこジャパンの選手のほとんどがこの丸型のスタッドを使っているんですよ。やはり足の筋力は男性よりも女性のほうが少なく、そういうことも関係して、丸型のスタッドを選んでいると言われています。
もう二つほど、スパイクのアウトソールについてお話しさせていただきたいと思います。まず一つは、スタッドが多いことがポイントとなります。先ほど、「トレーニングシューズは面で地面をとらえる」と言いましたが、スタッドの数が増えれば増えるだけ、一つのポイントにかかってくる体重、負荷というのは少なくなりますので、ジュニアプレーヤーの足への負担が少なくなります。あともう一つ、ラバー素材、いわゆるゴム底ですね。まず、衝撃吸収性に優れています。しかし、ゴム素材ですので、耐久性という面では普通のスタッドに比べて劣ります。ただ、若い年代としては、こういったラバー素材を使うのもオススメですね。
アウトソールという意味では、アシックスの商品もオススメです。通常、サッカースパイクはアッパー素材、アウトソールという二つで形成されているのですが、アシックスのシューズには「HG10」というクッション材が入っているんです。このクッション材を入れることによって、足裏にかかってくる負担が非常に少なくなります。
以上がスパイクの選び方になります。購入する際、皆さんやられていると思いますが、スパイクは必ず両足を履いてくださいね。選手によっては、左右の足で1㎝以上もサイズが違うという方もいます。朝、夜によっても、足のサイズが変わってくる。足の大きさは朝の方が少し小さかったりするので、できるだけ練習後だとか、夕方以降に選んでもらうというのもポイントの一つですね。また、ブランドや商品によってサイズが異なることもあります。ですから、必ず両足を履くことと、サイズがあっているかどうかを見極めて選んぶことが大切です。
次に、「スパイクのお手入れ方法」について話していきます。なぜ、サッカーシューズのお手入れは必要なのか。まず第一に、プレーヤーにとってシューズは体の一部であるため。次に、シューズも汗を吸収するため。そしてもう一点、一日でも長くシューズを履くため。これら三点のために、スパイクのお手入れが必要となります。
先ほど、アウトソールと言われている靴底の話をさせていただきましたが、今度はアッパーと言われている、足の甲を覆う革に関して話をさせていただきます。まず一つは、天然革と言われているカンガルーや牛の革を使った革。こちらの良さは、足なじみがよかったりだとか、フィット感が出てくるという点です。それに対して、人工の革の商品もあります。こちらの特徴は、軽量性や耐久性に優れていることです。なおかつお手入れが非常に簡単というのも特徴ですね。
次にお手入れの方法について。まず、天然の革のお手入れの話をさせていただきます。脱いだままの状態ですと、靴ひもや中敷が入ったままになっていますので、まずはこれらを取り出しましょう。雨でびしょびしょになったりだとか、靴の中が濡れてしまったりということもあります。これに関しては新聞紙を詰めて湿気を取ったりだとか、シューキーパーと言われている型崩れ防止のものを使用したりしながら、中の水分を取っていきます。陰干しを行い、湿気を取り除いていきましょう。
次に、ブラシで汚れを落とします。柔らかなブラシでアッパーの土ぼこりを取ります。汚れがひどい場合は雑巾やタオル等を濡らしてもらって、アッパーを拭くことも可能です。「革のシューズはあまり濡らしてはいけない」という声も聞きますが、多少の水分も必要なんですよ。
次はクリーナーで汚れを落とします。先ほどは表面の土の汚れをブラッシングで取りましたが、今度はクリーナーというものを布に取って、拭いてもらいます。表面についている土の汚れなどを取っていきましょう。
表面の汚れを取ったところで、クリームで栄養を与えていきます。やはり天然の革ですので、栄養を与えていかないとダメになってしまうんです。白とか黒のシューズに関しましては、それ用のクリームというのもありますので、それを使うことによって色が剥げてしまったところの補色も可能になります。なお、この後にミンクオイルというもので艶出しをすることもできます。
そしてシューズの内側を拭く。非常に単純なことなんですが、靴も汗をかいていますので拭く必要があります。サッカー選手は1試合で、だいたいコップ1杯から2杯分くらいの汗を靴の中でかくそうですよ
次にシューズの補強。アッパーとソールの間の部分は非常に割れやすいです。割れたままの状態で試合に出ようとすると、審判から「ちょっとそれ危ないですよ」とか、「これ直してきてください」と言われますし、場合によっては、「そのシューズだと出れません」と言われることもあります。ですので、ここまでシューズをきれいにした後に、こういった補強もする必要があります。店頭にはシューズの接着剤も売っていますので、そちらをお買い求めいただければと思います。
最後に靴の紐と中敷を元に戻します。戻した後はシューキーパーを使用して型崩れを防ぎ、風通しの良い日陰で保管をしてください。以上が天然革のシューズのお手入れ方法です。
人工の革のお手入れも、基本的に今の流れと変わりはありませんが、シューズに栄養を与える作業は必要ありません。簡単ではありますが、スパイクの選び方、シューズのお手入れ方法についてお話をさせていただきましたがいかがだったでしょうか。お子さんにあったスパイクを選び、正しいお手入れ方法をしながら、サッカーを楽しんでいただけたらと思います。