[ワールドサッカーキング 2012.05.17(No.214)掲載]
ラダメル・ファルカオは、新天地のアトレティコ・マドリーでその才能を爆発させている。リーガ・エスパニョーラではリオネル・メッシとクリスチアーノ・ロナウドに次ぐ23ゴールを挙げ、ヨーロッパリーグでは2年連続得点王となる12ゴールをマーク。この数字を見れば、彼のスペインでの新たな挑戦は、大成功と言えるだろう。
「僕はアトレティコに大きな成功をもたらすためにこの地にやって来た。チームの勝利のために、持てる力のすべてを出し尽くすつもりだ」
恩師ディエゴ・シメオネへの感謝、ゴールを奪う秘訣、欧州最高峰の点取り屋の言葉を振り返る。
『アトレティコで選手としても、人間としても成長を続けたい』
リーガ1年目で20ゴール以上記録した外国籍選手はここ10年間で4人だけ。ここまで活躍できた理由は何だと思う?
ファルカオーー運が良かったとしか言えないけど、あえて挙げるとすれば序盤で自信を得られたことかな。アトレティコの選手としてプレーした3試合目(ラシン・サンタンデール戦)でハットトリックを決められたおかげで、「スペインでやっていける」という自信が持てたんだ。それまでは多少の不安があったけど、違うリーグに移籍して、しかも世界最高峰のリーガですぐにゴールを決めることができた。すごく大きな自信につながったよ。
祖国のコロンビアではアトレティコ・マドリーへの移籍を“都落ち”だと批判する声もあったみたいだけど、君の決断は間違っていなかったようだね。
ファルカオーーもちろんだよ。アトレティコのような伝統と歴史のあるチームの一員になれたことを誇りに思っているよ。ビセンテ・カルデロンの雰囲気は最高だし、ロヒブランコのファンも最高だ。今ではこの雰囲気にすっかりなじんでいるよ。
ポルトに在籍していればチャンピオンズリーグ(以下CL)の舞台でもプレーできたはずだけど、これについてはどう考えている?
ファルカオーー確かにCLには出られなかったけれど、それよりも今こうして世界最高峰のリーグでプレーできていることのほうが僕にとっては重要なんだ。
昨夏はチェルシーのようなビッグクラブからもオファーが届いていたようだけど、なぜアトレティコ・マドリーを選んだの?
ファルカオーーリーガで自分を試したいと思っていたんだ。そんな時に、スペインで3番目に歴史と伝統を持つチームが僕に興味を示してくれたんだ。これほどの名門チームでプレーするチャンスを無駄にするなんて、それこそ馬鹿げた話だよ。
君にとってアトレティコ・マドリーが理想のクラブだということはよく分かった。でも、その名門クラブが、シーズンの前半戦は結果を出せていなかったね。君自身も苦しい戦いが続いていたと思うけど、原因は何だと思う?
ファルカオーー僕を含めて新加入選手が多く、チームとして機能していなかったことが低迷した原因だと思う。状況を改善しようと懸命にプレーしたけど、チームの調子は一向に上がらなかった。選手も何をすればいいのか分からないという状態だったんだ。
監督がシメオネに代わってからチームは劇的に変わった。最も変わった部分は何かな?
ファルカオーー選手が同じ方向を向いて戦えるようになったところだね。チョロ(シメオネのニックネーム)が選手に求めているのは、常にアグレッシブであることと、全員がチームプレーに徹すること。つまり、選手全員が勝利のためファイトするということさ。
戦術面ではどんな特徴があるの?
ファルカオーー彼の戦術の基本となっているのはコンパクトなサッカーだ。ラインを狭めて相手にスペースを与えず、奪ったボールを素早く前線に展開してゴールを目指す。そういうスタイルだよ。
シメオネ監督の戦い方に君のプレーは合っていると思う?
ファルカオーー彼が求めているのは常にチームのためにプレーすること。そういう意味で、チョロの考えは僕のプレースタイルにぴったり合っていると思う。リーベルでもポルトでも、そういうプレーを続けてきたからね。
君にとってシメオネはリベル・プレート時代の恩師でもあるよね。
ファルカオーー短い期間だったけど、リーベル時代に彼の下でプレーできたのはすごく大きかったよ。おかげで、サッカーへの正しい向き合い方を学べたからね。努力を惜しまない姿勢が必要だということ、1日24時間、プロ意識を持って真面目に過ごすこと……。サッカー人生の基本は彼から教わったようなものさ。
リベル・プレート時代と今のシメオネでは変わったことはある?
ファルカオーー選手に情熱的なアプローチをしたり、戦術面で厳格であったり。リーベルの時と変わったところは特に見当たらないな。ピッチ上で選手が勝手なプレーをするとものすごく怒るところなんか、全く変わってないよ(笑)。
シメオネの監督就任を、君は他の選手より先に知っていたらしいね。
ファルカオーーチョロから直接連絡があったんだ。「今度マドリッドに行くからよろしく」ってね(笑)。彼との再会は楽しみだったよ。
ここからは君のプレースタイルについて聞きたい。君は「ゴールの嗅覚に優れている」と評価されることが多いよね。
ファルカオーーそう言われるとうれしいよ。センターフォワードとしてプレーするからには“ゴールの嗅覚”は欠かせない資質だからね。
君はエリア内で相手のマークを外すのがうまいけど、特別に心掛けていることはある?
ファルカオーー常に次に起こることを予測することだね。リバウンドボールがどこにこぼれるかを予測したり、マーカーの背後のスペースを見つけてポジションを取ったりするようにしているよ。でも、そういったプレーは本能的にこなしている。僕には生まれつき、ポジショニングのセンスがあるのかもしれないね。
それほど背が高くないのに空中戦に強いのも、生まれついてのものかい?
ファルカオーー空中戦では高さより、タイミングが重要なんだ。高く跳ぶ能力ももちろん必要だけど、僕は滞空力を身につけるトレーニングを重点的にやっているよ。相手DFよりも早くボールの落下点にポジションを取るということも、常に意識しているしね。
ストライカーとして君自身が最も自信を持っている点は?
ファルカオーー常にゲームに参加している点かな。僕はエリア内で何もせずパスを待つタイプのFWではないからね。でも、90分間ゲームに絡むためには様々なプレーをこなす必要がある。チームメートを助けるために相手DFにプレッシャーを掛けることもあるし、スペースに流れることもある。ドリブルだってするし、スルーパスも得意だと思っている。そういう意味ではFWだけど何でもできることが一番の武器かな。
じゃあ、自分に欠けている点は?
ファルカオーー左足の正確性はもう少し高めていきたいね。
アトレティコ・マドリーに移籍したことで、君自身のプレーに変化はあった?
ファルカオーーチームやプレーする国が変わったとしても、決して基本的なプレースタイルが変わることはないよ。もちろん所属するチームのスタイルに順応しなくてはならないとは思っている。だけど、それは自分のスタイルを変えるということではないからね。
ポルトガルとスペインのサッカーを比較して何か違いはある?
ファルカオーー両方ともテクニックがすごく高いし、大きな違いはないと思う。美しいサッカーを目指している点や、常に攻撃の意識を持ってプレーしている点も同じだね。あえて言うなら、リーガのほうがプレーのクオリティーが高いということかな。僕にとってはどちらもやりやすいサッカーだよ。
今シーズンの活躍で、君には移籍のうわさが多く上がっている。ビッグクラブでプレーしてみたいという気持ちは持っているの?
ファルカオーー現時点で言えることは、アトレティコで選手としても、人間としても成長を続けたいということだ。ただ、先のことは分からない。特に、移籍に関しては何が起こるか予測できないからね。でもクラブ側から何か言われない限り、僕は来年も再来年もここでプレーするつもりだよ。
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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。
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