昨年のドイツ・ワールドカップで初優勝を果たし、今夏に行われるロンドン・オリンピックでも金メダルの筆頭に挙げられているなでしこジャパン。そんな彼女たちの取材を続け、澤穂希選手や川澄奈穂美選手など、なでしこジャパンの選手を多く抱えるなでしこリーグの最強軍団INAC神戸の番組「INAC TV」(毎月第3・4・5金曜、BSフジ23時~)のオフィシャルキャスターも務める松原渓が、なでしこリーグやなでしこジャパンの動向やこぼれ話などを紹介していきます。
[松原渓のなでしこ体験記より転載]
ロンドン・オリンピックに向けて、着実にチームの底上げを行なっているなでしこジャパン。そんなチームの中から、本大会での活躍が期待されるなでしこを紹介していきます。
[写真]=嶋田健一
第3回は、3月5日に行われたアルガルベカップのアメリカ戦で、代表100試合出場を達成し、今季はINAC神戸の主将を務める大野忍選手です。抜群の得点感覚と切れ味抜群のドリブルを武器に、なでしこジャパンの攻撃陣を支え続けています。
兄の影響でサッカーを始めた大野選手は、神奈川県の横須賀シーガルズFCなどでのプレーを経て、中学生時に読売サッカークラブ女子メニーナ(現日テレメニーナ)に入団。1999年にベレーザへ昇格すると、5年目の2003年には代表デビューを果たします。
その後は、リーグ最優秀選手に3回(2005、07、10)、リーグ得点王4回(07、08、10、11) 、リーグベストイレブンは9回(05年から7年連続受賞中)受賞するなど、なでしこリーグを代表する選手に成長。なでしこジャパンでも2008年2月の東アジア選手権で大会得点王に輝き、なでしこジャパンの初タイトルに大きく貢献。2008月の北京五輪では、史上初のベスト4に貢献しました。
そして、2011年夏のドイツ・ワールドカップでは、全6試合にスタメン出場。グループリーグのメキシコ戦では、FIFA(国際サッカー連盟)選出の「ゴール・オブ・ザ・デイ」に選ばれ、大会優秀選手にも選出されるなど、なでしこジャパンの世界一に大きく貢献しました。
2011年1月には日テレ・ベレーザからINAC神戸に移籍し、プロ契約を締結。背番号「10」を背負い、ワールドカップ優勝後の2011シーズンは、チームメートの川澄奈穂美とともに12ゴールで得点王を受賞します。また、最終戦で大谷未央のリーグ通算150ゴールに並ぶと、2011年の開幕戦ではリーグ新記録となる151ゴール目を決め、現在も記録更新中。文字通り、チームの顔として活躍を続けています。
特徴は、何と言っても緩急のメリハリをつけた鋭いドリブルと一瞬で相手の裏を取る動き、小柄ながらボールを奪われないキープ力と身体能力です。INAC神戸ではバルセロナFWリオネル・メッシの役割を期待されており、攻撃の起点として欠かせない存在になっています。
今シーズンも、女王INAC神戸との対戦に臨む他のチームのモチベーションは高いですが、新キャプテンは動じることなく、こう答えています。
「結果でも内容でも本当に圧倒的なゲームはやっていきたいですし、『やっぱりINACには何しても勝てないよ』って思わせたいですね。見に来てくれた方たちにも、『やっぱりINACって強いんだね』って言ってもらえるようなゲームをしていきたいと思います」
「他のチームも今シーズンは補強をしていますね。INACを倒してやろう、っていう気迫をひしひしと感じますよ。いやいや、あなたたち、その感じをINAC以外のチームにも出しなさい、って言いましたけどね(笑)。とはいえ、自分も、もしINACの選手じゃなかったら、そういうすごい面子や強い集団に対して、勝ちたいという気持ちは分かりますね」
「ゴールは去年以上は絶対にとりたいですね。(星川敬)監督から以前言われたことが印象に残っているんです。『ゴールを決めてほしい選手がシュートを打たないで、どこでどうやってシュートを打つんだ』って。そういう意味ではシュートに対するこだわり、ゴールに対するこだわりはもっと強く持っていくべきかなって思います」
「バルセロナのようなサッカーをしていく中で、メッシ選手のような仕事に近いポジションでやらせてもらっていて本当に光栄です。そのメッシ選手は得点力でもずば抜けていますが、自分に足りない部分はそこだと思うので、こだわっていきたいと思います」
3月に行われた日韓女子リーグチャンピオンシップ(対高陽大教ヌンノビ)の1点目は、中央でボールを持つと周囲をうまく使いながら最後までワンタッチで狭いスペースを抜け出し、GKの逆をついたシュートでゴールネットを揺らしました。細かいタッチのドリブル、タイミングの読めないダイレクトパス、ノールックで放たれるシュートなどは、まさしく女子版「メッシ」と言えるプレーでした。
「自分で細かいところを打開していくゴールを増やしていくのも今年の課題ですね。あのゴールは信用してパスを出してくれたチームメートにすごく感謝していますし、自分だけのゴールじゃないです」
元々は、代表でもクラブ同様トップの位置でプレーすることが多かった大野選手ですが、ドイツ・ワールドカップ前から右サイドハーフのポジションが定着しつつあります。
「(ポジションが違うことについて)コンセプトが違うだけでやるべきことは変わらないのかなって。どちらかだけ守備を頑張るとか、そういう使い分けはありません。今はチームと代表を行き来することが多いですけど、そのまま同じ感覚でいけたらいいなと思うので、チームでも代表でも守備のところで頑張ろうと思いますし、運動量にもこだわりたいと思っています」
ワールドカップに続く世界一が期待されているロンドン・オリンピックがいよいよ近づいて来ましたが、まずはメンバーに選ばれてからというのが本音のようです。
「あっという間に大会を迎えますね。まずはメンバーに選ばれることが一番だと思っています。そこから実際にオリンピックでどういう結果を出したいかっていうのも言うべきだと思いますし、なでしこで金メダルを取りたいという強い気持ちは持っています。そのためには本当にINACで結果を出して代表に選ばれて、選ばれた際には誇りを持って金メダルを取りに行きたいと思っています」
ロンドンでは世界がなでしこの戦いぶりに注目するはずで、プレッシャーは相当なものになることが予想されますが、経験豊富な大野選手が持ち前の明るさとプレーでチームを盛り上げてくれるでしょう。なでしこジャパンでもメッシのような活躍に期待大ですね。
2011年、女子ワールドカップ ドイツ大会優勝、ロンドン五輪アジア最終予選を突破し、五輪出場権を獲得したなでしこジャパンに7人もの選手を送り出していた「INAC神戸レオネッサ」にスポットを当てる、日本の女子サッカーチームでは初のオフィシャル番組。
松原渓/著 定価:1,365円(税込)
【松原渓】(まつばら けい)1983年8月25日生まれ。タレント。スポーツライター。女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」に所属。「INAC TV」(BSフジ)オフィシャルキャスターを務める。2008年よりスポーツライターとしての活動を始め、『サッカーゲームキング』などで連載を持つ。父親の影響で幼少時からアウトドア体験は豊富で、普段はハーレー(FXDL)などを乗りこなす。公式ブログはこちらから!