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[プレイバックインタビュー]金崎夢生/怯まず、驕らず、溌溂と(Jリーグサッカーキング2007年8月号より)

2015.11.16

 2010年10月以来、約5年ぶりに日本代表復帰を果たした金崎夢生。2015年11月12日に行われた2018年ワールドカップ ロシア大会アジア2次予選のシンガポール戦で、20分に日本代表初ゴールとなる鮮烈な一撃をを決めて、チームをグループリーグ首位に導く快勝に大きく貢献した。

 今回は、当時18歳、大分トリニータに入団して3カ月のときにJリーグサッカーキング2007年8月号(2007年6月24日発売)で取材した金崎夢生のインタビューをお届け。今も変わらないサッカーへの思いを当時の言葉から読み解く。懐かしい写真とともに、お楽しみください。


「怯まず、驕らず、溌溂と」。これは、彼がプレーした滝川第二高サッカー部のモットーである。サッカーへの愛情と、勝利への欲求ゆえなのだろう、淀みなく語るのを聞いているうち、不意にこの言葉が脳裏に浮かんできた。その若さにして、すでにプロとして活躍する。彼の言葉に耳を傾けると、その理由が分かる。

インタビュー・文=菅野浩二
写真=足立雅史、松竹 豊

 恐るべき若者だ、金崎夢生は。

 ついこの間までは高校生。その笑顔にはあどけなさが残るが、しかし、今や歴戦の男たちと互角に渡り合う。王者相手には軽やかな浮き球で先制弾を演出、豪快なヘディングですでに、自身でもゴールネットを揺らしている。

 左足のねん挫によりしばしの休養を強いられた。それでも、故障までの動向を振り返ると、彼の存在価値が変わりそうにはない。わずか18歳ながら開幕から10試合に出場。そのほとんどが、いわく「負けている時とか引き分けている時、点がどうしても欲しい時」だった。苦しい時間に起爆剤の働きを期待される男は、だから、下位に低迷する逆境の今こそ、誰よりも必要とされる存在なのかもしれない。

 約3カ月で手応えはつかんだ。Jの舞台で通用するプレーを把握した今、不要な恐れはない。若いからと言って躊躇(ちゅうちょ)することなく、先輩たちにも怯まずに意見を伝えたいと言う。それは何も、慢心や驕りからではない。溌溂と、躍動感溢れるプレーも、すべては大分のため――。恐るべき若者は、強く、強く、勝利を望んでいる。

自分がピッチに入ったら絶対に何かを変えたい

金崎夢生

――2007年5月24日の練習中に左足関節をねん挫して、戦列を離れていました。今日から全体練習に参加しましたが、ケガの具合はどうですか?

金崎夢生 もうだいぶ良くなって、全然気にならないくらいです。今日も割とトップスピードで走れましたし。やっぱり久しぶりにボールを蹴ってみると楽しいですね。

――負傷したのはトゥーロン国際大会のメンバー入りが発表された2日後でしたね。

金崎夢生 やっぱり、ああいう大会でぜひプレーしてみたいという気持ちがあったんで、当然、落ち込む部分がありました。でも、ケガをしてしまったのはしょうがないと思ったんで、すぐに切り替えましたね。絶対にまだチャンスがあると思うんで、U―20ワールドカップの本大会のほうに切り替えて、そのために頑張ろうって(編集部注:残念ながら2007年6月15日に発表された大会メンバーには登録されず)。

――やっぱり、世界で自分を試してみたい?

金崎夢生 そうですね。海外の選手はすごく強いとか、そういうのを聞くばっかりで、実際、僕は体験したことがないんで。だからやっぱり実際に強さであったり、スピードであったりを自分で体験して、たくさんのことを吸収したいっていう気持ちがあります。

――ちょうど昨日、トゥーロンから梅崎司選手、福元洋平選手、森重真人選手が帰ってきましたが、何か話はしました?

金崎夢生 海外の選手はみんな大きくて強いっていうのは聞きましたね。でも、全然通用しないわけじゃないってみんな言ってました。だから、世界でも通用したあの3人に負けないように自分も頑張ったら、自然と海外の同じ年代でも通用するっていうのは、話を聞く範囲では分かりましたね。もちろん、何より自分の肌で実際に感じたいというのはありますけど。

――では、リーグ戦の話を聞かせてください。高校を卒業したばかりですが、リーグ戦では10試合に出場し、1得点を記録しています。これだけ使ってもらえるというのはイメージできていましたか?

金崎夢生 いや、イメージはホントできてなかったです。でも、開幕戦には絶対メンバー入りするっていう目標を立ててキャンプからずっとやっていたのはありました。

――ホームで行われた新潟との開幕戦で早くもベンチ入り。あの時はやっぱり緊張したんじゃないですか?

金崎夢生 やっぱり、もう、なんて言うんですか、心臓がバクバクっていう感じでした。ベンチに座っているだけで緊張したっていうか。スタジアムのサポーターの数も今まで経験したことがないくらいで、応援の声もホントに大きかった。「あープロっていうのはすごいなあ」って肌で感じましたね。

――開幕戦では1点ビハインドの状況でピッチに投入されました。

金崎夢生 ピッチに入る前はいろいろなことを考えていたんですけど、いざピッチに立った瞬間は頭が真っ白になってしまいました(苦笑)。実際は、がむしゃらにボールを追ってっていう感じでしたね。

――デビュー戦以降も途中出場が多いですが、途中から試合に入るのって難しいですよね。途中出場の時はどんなことを心掛けていますか?

金崎夢生 僕が出る時っていうのはだいたいが、負けている時とか引き分けている時、点がどうしても欲しい時なんです。だから、自分がピッチに入ったら、絶対に何かを変えたいという、そういう気持ちでいつも入っていますね。前半は、あそこのスペースが空いているとか、こういうプレーをするとチャンスになるんじゃないかとか、そういうのをイメージしています。外からじっくり試合を見ることができるんで、今の僕にとって前半はホントに良い時間です。

フリーな選手をどんどん使ってボールを回していくほうが良い

――約3カ月、Jの舞台でプレーして、通用するなと思った部分は何かありますか?

金崎夢生 サイドでの仕掛けですね。もちろんボールを取られたこともあったんですが、通用した場面もあった。これからも、サイドでの仕掛けは積極的に、失敗しても良いからサイドでボールを持ったら積極的に仕掛けていきたいですね。相手にとっては絶対に嫌になってくると思いますし。

――サイドでの仕掛けというのは、左右のどちらが特に?

金崎夢生 だいたいは左サイドが多いですね。高校の時から左サイドでの仕掛けっていうのは得意だったんです。左サイドで右足でボールを受けた時のほうが視野が取りやすいというか、左サイドで右足で持つと、ピッチの全体が見える。そうすると、縦にもいけますし、中に切り込んでシュートにもいけるんです。

――サイドは中央よりプレッシャーがゆるいっていうのもあるんじゃないですか?

金崎夢生 そうですね。サイドから直接シュートっていうのはあんまりないんで、相手の選手も距離を開けてくれるんです。その間に自分が前を向いたり、自分のペースで仕掛けられるっていうのはありますね。だから、サイドだと割と余裕を持ってプレーできるんだと思います。

――初スタメンを果たした浦和戦では松橋章太選手にパスを入れて、高松大樹選手のゴールを演出しましたよね。あれはダイレクトのパスでしたけど、ああいうふうに割とシンプルなプレーを意識しているように感じるのですが。

金崎夢生 そうですね、やっぱりフリーな選手をどんどん使って、ボールを回していくほうが良いと思うんです。変に持たずに、はたいてもう一度もらうほうが相手にとっては嫌でしょうし。自分で持って仕掛けるっていうのはサイドだけ。それ以外では、前に大きなスペースが空いている時以外は、近くの味方を使ってまたもらうとか、そういうことを意識していますね。

――金崎選手は、トップ下とボランチと両方こなせますが、自分としてはどちらがやりやすいですか?

金崎夢生 特にどちらかっていうのはないですけど、攻撃がホントに好きなんで、オフェンシブな位置と言うか、少しでも前でやりたいっていう気持ちはあります。でも、ボランチも後ろから上がることによって、フリーでボールをもらえる場面はたくさんありますし、ボランチでの展開っていうのもホントに楽しい。だから、別にどっちがやりやすいとかいうのはないです。

――では、トップ下でプレーする際に気をつけていることは?

金崎夢生 守備の部分ですね。トップ下の時は、攻撃の面では自分が思ったことをやろうと思うんですけど、トップ下の選手がディフェンスを頑張ることで、チームとして全然違うんですよね。前の選手が守備を頑張ることによって、中盤で取れるボールが増える。できるだけ高い位置で取ったほうがチャンスになるし、そういう意味でもボランチでやる時よりもトップ下でやる時のほうが守備の意識を高く持つようにしています。

――ボランチの時に気をつけていることは?

金崎夢生 相手のキーマンとなる選手を絶対にフリーにさせないこと。それと、ボランチっていうのはやっぱりチームの核なんで、全体のバランスを見て、ポジションが悪い選手がいたらなるべく積極的に声を掛けたりとかですね。攻撃面ではボールを展開すること、こっちのサイドが混んでたら、逆サイドに展開とか、そういうことを意識しています。

年齢は関係なくもっと自分の意見をぶつけていきたい

金崎夢生

――それでは、チームの話を聞かせてください。ここまで13戦で3勝3分け7敗の15位。なかなか調子が上がりませんが、要因は何なのでしょう?

金崎夢生 どうなんですかね……まあ、やっぱりケガ人も多くて、なかなか同じメンバーでずっとできてないっていうのが一番大きいのかなっていうのは感じます。ケガ人が多いんで、なかなか連係を築けないし、どうしてもみんなケガを気にして練習中も思い切りできない。そういうのはあると思います。

――それ以外に何か気になる部分は?

金崎夢生 例えば、フロンターレ戦の時はホントに危機感を持ってみんなが練習に取り組んだんです。そして、それがしっかり内容になって結果となって出た。だから、あの時みたいに、練習に取り組む姿勢とか試合に臨む気持ちをもっと高くしてやったら、全然違う、もっと良いサッカーができると思うんです。確かに川崎F戦は内容も結果も伴った試合でした。でも、次のナビスコカップの磐田戦に1-3で負けて、リーグ戦の横浜FC戦にも1-2で負けてしまいました。

――今シーズンは良いサッカーをなかなか持続できませんよね。

金崎夢生 勝った時ほど気を引き締めないとダメだと思うんです。勝った日は喜んで良いんですけど、次の日は勝ったことは忘れて次の試合にっていう切り替えをちゃんとやるべきというか。そういう切り替えをチームの全員ができるようになれば、良い試合を続けていけると思います。

――今、言ったようなことはチームメートに伝えているんですか?

金崎夢生 試合前のミーティングで自分の意見を言うくらいで、特に気持ちの面とかについてはあまり言わないです。メンタルの部分はどうしても個人個人のことだし、やっぱりみんなプロでやってるんで、そういう部分はしっかりできると思うんで。僕が言うのは、練習中に「もっとこうしたい」とか「もっとこうしたほうが良い」とか言うくらいですね。

――若いということで、やっぱり多少遠慮してしまう部分もある?

金崎夢生 最初から比べたら少しずつなくなってきてるんですけど、まだまだ遠慮している部分もあると思います。でも、それではチームのためになっていないというのも感じているんです。だから、間違ってても良いと思うんで、今後は自分が思っていることを素直に言っていきたいですね。それに対して周りの選手も思うことはあると思うし、勝とうという目的はみんな同じですから。ピッチ上ではあんまり関係ないと思うんで、年齢は関係なくもっと自分の意見をぶつけていきたいです。

若いからこそいっぱい動いてチームのために全力を尽くす

――前半戦を振り返ると、ここまで13試合で13得点と、ゴールが少ないのは気になりませんか? 13点のうち、流れの中から取った点は少ないですし。

金崎夢生 みんなで守備をして、相手が前掛かりになった時に全員でカウンターに行く。やっぱりそういう速い攻撃が大分のサッカーだと思うんで、そういう意味ではみんなで守備を頑張って、相手より早く切り替えて攻撃に移るというサッカーを、全員がもっと意識してやるべきだと思いますね。

――そのへんの意識は、状況によって多少ずれがある?

金崎夢生 ボールを取って安心してしまって、しっかり後ろでパスをつなぐこともあるんですけど、そこで相手にプレッシャーを掛けられてボールを取られてしまうという場面がいくつかありました。やっぱり、うちが得意としているのは速い攻撃だと思うんで、ボールを取った瞬間、前のフリーな選手にどんどん預けて、後ろから上がって行ってというプレー、そういうのをもっと意識してやっていけば、自然とチャンスも増えるし、自然とゴールも増えるんじゃないかなと思います。

――13試合で24失点という守備面はどうでしょう? 今シーズンはボランチの2人がなかなか固まっていませんが、そのへんも守備がまとまらない要因の一つのように思えるのですが。

金崎夢生 確かにボランチは真ん中にいるから一番指示も出しやすいし、そういう意味ではしっかりと固まっていたほうが守備もやりやすいとは思います。でも、ボランチにかかわらず、全員で声を掛け合ってやっていけばいいのかなっていうのはありますね。みんなで守備を頑張って、みんなで相手より早く切り替えて攻撃に移るっていう、そのスタイルで良いと思うんです。

――金崎選手は今18歳と最年少の一人ですが、若いからこそ何かチームのためにできることはありますか?

金崎夢生 若いからこそいっぱい動いて、チームのために誰よりも全力を尽くすっていうのが大事なのかなと思います。僕たち若い選手が頑張っていたら、ベテランの選手とか他の選手もすごく刺激になると思うんです。僕たち若手の選手が頑張ることによって、周りの選手が競争というか、「あいつ頑張ってるから負けんとこ!」って、そういう気持ちがチームに広がって、全体のレベルが上がって、良いチームになって、リーグで上位に行ければいいなと思いますね。

By サッカーキング編集部

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