写真=平柳麻衣、兼村竜介
第90回全国高等学校サッカー選手権大会で優勝を果たした先輩たちの姿に憧れ、市立船橋高校に入学した。迎えた最終学年、チームの“顔”となった永藤歩は、大きな期待を背負いながら出場したインターハイの準決勝で負傷。チームは決勝で敗れ、永藤自身はその後、リハビリ途中の再負傷に苦しみ、長期離脱を強いられた。自らの輝きを取り戻すため、そして悲願の全国タイトル獲得へ、モンテディオ山形加入内定の俊足ストライカーは学生最後の大会に臨む。
選手権では日本一を狙って自分の力を全部出したい
――まずは、今シーズン全体を振り返っていかがですか(取材は12月15日に実施)?
永藤 プレミリーグEASTでは夏前まで負けなしと調子が良く、インターハイ(全国高校総合体育大会)では日本一になるチャンスがあったんですけど、準決勝で左太もも裏を肉離れして、決勝に出られなくなってしまい、チームも負けたので悔しかったです。その後、3カ月くらいチームを離脱して、今やっと試合に出られるようになってきたので、選手権(全国高校サッカー選手権)では日本一を狙って自分の力を全部出したいなと思っています。
――けがをする前までの、個人としての出来や手応えはどうでしたか?
永藤 1、2年生の頃は夏に走れないとずっと言われていたのですが、3年生になった今年は走れるようになって、裏への抜けだしやシュートまで持ちこむプレーがしっかりできていたと思うし、特にインターハイは良いコンディションで臨めていました。
――決勝の東福岡高等学校戦はどのような想いで見ていたのですか?
永藤 ずっとベンチから見ていたのですが、1点取られても絶対勝てると思っていました。最後の最後に(工藤)友暉がFKを決めて、いい流れになったんですけど、結局PK戦で負けてしまい、悔しかったですね。
――けがをしてからは選手権予選での復帰を目標としていたのですか?
永藤 少しでも早く復帰したくて、最初はプレミアリーグのFC東京戦(第14節、9月13日開催)前に復帰できそうだったんですけど、リハビリ中のロングダッシュの時に再びけがをしてしまったんです。それまで体はすごく動いていたので、ショックは大きかったです。その後も何度か危なかった時があり、復帰までに時間がかかってしまいました。
――リハビリ中にチームの状況を外から見ていて、いかがでしたか?
永藤 みんなレベルアップしている中、自分は筋トレしかやっていなかったので、焦りはありました。
――特にリハビリで強化していた部分はありますか?
永藤 お尻と太ももの筋力がまだ弱いと言われていたので、重点的に筋トレしていました。
――その後、選手権予選の準決勝で復帰を果たしました。
永藤 準決勝で10分、決勝で15分くらい出場しました。決勝では得点も取りましたけど、本当に「得点だけ」という感じで、ドリブルは全部つっかかってしまいましたし、何もできなかったという印象です。
――けがをする前のプレー感覚と今の感覚は違いますか?
永藤 コンディションは良くも悪くもないという感じですが、足の運びや間合い、タイミングといった細かい部分の感覚がけがをする前とは全然違いますね。でも、1週間ごとに良くなってきているので、選手権までにさらに感覚を取り戻していきたいです。
――最も得意なプレーを教えてください。
永藤 スピードが武器で、どんどん仕掛けていくことや裏への飛びだしを武器にやっています。
――ポジションはずっとFWですか?
永藤 2年生の時はサイドアタッカーをやっていて、3年生になってからは1トップも務めるようになりました。一番やりやすいのはFWです。
――目標にしている選手はいますか?
永藤 サンフレッチェ広島の浅野拓磨選手の仕掛けていく姿勢がすごいと思います。
――永藤選手自身は、足の速さはどれくらいですか?
永藤 50メートル走は中学生以来測ってないんですけど、当時は6.1秒でした。今はもう少し速くなっていると思います。
朝岡監督は、今までのサッカー人生で一番影響を受けた人
――市立船橋に入学した理由は?
永藤 元々、千葉県の成田市出身で、中学2年生の時に和泉(竜司/明治大、名古屋グランパス加入内定)さんたちの代が選手権で全国優勝した姿を見て、入りたいと思いました。
――千葉県内には他にもサッカーの強豪校がありますし、クラブユースという選択肢もあったと思います。
永藤 やっぱり選手権の影響が強いですね。あとは、市船の雰囲気や伝統を知って、入りたいなと思ったのも理由の一つです。
――実際に市立船橋に入学して、良かったなと感じた部分はありますか?
永藤 1年生の頃からずっと、朝岡(隆蔵)監督に強い口調で自分のプレーのダメな部分を指摘してもらったことです。仕掛け方やタイミングについてずっと言われて、どうやったら自分の特長を活かせるか考えるようになりました。そのおかげで自分の武器であるスピードやドリブルをさらに伸ばしてもらいました。朝岡監督は、今までのサッカー人生で一番影響を受けた人ですね。
――来シーズンからモンテディオ山形に加入します。加入を決めた理由を教えてください。
永藤 山形を含め2つのクラブからオファーをいただきました。山形に決めたのは、インターハイの前です。一度、3日間練習参加させてもらったのですが、選手たちに本当に良くしてもらって、チームの雰囲気も明るくていいチームだなと感じました。
――来シーズンの舞台はJ2となりました。
永藤 一つでも上のレベルでやりたいという気持ちはありましたが、自分が1年目から試合に出て、J1昇格のために貢献していければと思っています。
――間もなく開幕する選手権についてお聞きします。市立船橋は2年前の選手権でベスト8でした。当時の印象は?
永藤 試合には出ていないのですが、先輩たちの姿に憧れを抱きました。
――今年のインターハイで惜しくも優勝を逃しているだけに、選手権にかける想いは強いと思います。
永藤 そうですね。夏に日本一になれなかった分、今回こそは優勝したいと思っています。
――プレミアリーグEASTでも、最終節で対戦した鹿島アントラーズユースが優勝した場面を見ています。
永藤 最終節で鹿島に勝って優勝することを今年の目標にやってきた中で、柏レイソルU-18戦(第17節)で勝ちきれなくて優勝のチャンスがなくなってしまいました。やっぱり自分たちの目の前で優勝されるのは悔しいですし、大事な試合で勝ちきれないのが今年のチームの課題だなと感じました。
――選手権で対戦してみたい学校はありますか?
永藤 東福岡です。インターハイの時、自分は出られなかったので。
――お互いに勝ちあがれば、3回戦で対戦することとなります。
永藤 今回の組み合わせが決まった時に、率直にうれしかったです。初戦でも決勝でも、どこでもいいのでとにかく1回対戦したいと思っていたので。
――選手権に向けて取り組んでいることはありますか?
永藤 やっぱりまだ体は動けていないし、運動量も全然足りないので、意識的に走るようにしています。
――まずは初戦からスタメン出場することが目標になりますか?
永藤 もちろんスタメンで出たいとは思っているんですけど、市船は本当にみんなうまいので、今のままでは実力的にみんなより劣ってると感じています。なので、選手権までにコンディションをしっかり上げて、自分のプレーを出してアピールしていきたいです。
――最後に、選手権に向けての意気込みをお願いします。
永藤 やっぱり日本一になることが一番の目標です。
By 平柳麻衣