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レピュコムジャパン代表取締役社長が語る「日本のスポーツ・スポンサーシップの課題」/後編

2016.03.14

アメリカン・フットボールで日本一を経験、ソニー時代にはFIFAのグローバル広告戦略を担当し、現在は世界最大のスポーツマーケティングリサーチ企業レピュコムジャパンの代表取締役社長を務める秦英之氏。幼少期はスポーツビジネスの本場米国で過ごすなど、あらゆる立場で一流のスポーツ現場に触れてきた同氏に、これまでの歩みと日本のスポンサーシップにおける課題について話を伺った。

インタビュー・文=細江克弥
写真=兼子愼一郎

――ソニーでのプロジェクトを成功させ、秦さんはスポーツビジネスのコンサルタントとしての独立期間を経て、2013年から現職であるレピュコムジャパンの代表取締役社長に就任されました。その経緯について教えてください。

秦英之 FIFAとのプロジェクトに携わらせてもらったことで、この経験を転用してスポーツ界全体の役に立てたいと考えていました。当時の私が考えていたのは、「数値化」することの強みでした。どんなに素晴らしい企画でも、ビジネスの世界では数値に裏打ちされたロジックが弱ければ人の心には響きません。私はプレーヤーとしてスポーツのアナログな魅力を体感し、ソニーでの業務によってデジタルな側面を、しかもグローバル規模の最前線で学びました。この2つの経験を、何らかの形で必ず活かせると考えていたのです。

そんな時に声を掛けてもらったのが、レピュコムでした。当社はアメリカに本社を構え、スポーツマーケティングのための情報収集や分析、戦略化を実現するスポーツ専門の調査コンサルティングを行っています。つまり、当時の私にとっては、これ以上の環境はないと言っていいほどベストなオファーだったのです。

――意志に沿って、未来が開かれていった。

秦英之 そうかもしれませんね。やはり、自分にとって「何を継承したいか」というモチベーションが大切だと思います。私の場合はスポーツに恩返しをしたい。スポーツを通じて、自らの経験を継承したい。スポーツ界の発展のために自分が何をすればいいのかを考え、その時々でベストな判断を下すように努めてきたつもりです。ソニーを退職して独立した際には、ソニーでの経験からスポーツ界には“数的根拠”が欠けていることを実感していました。そのスペシャリストであり、世界最前線のノウハウを持っている会社が、日本での展開を考えている。そういうタイミングでのオファーだったので、何らかの形で貢献したいと思い、決断しました。

私のミッションは、当社を大きくすることはもちろんですが、それは結果的なことでしかありません。それよりもまず考えるべきことは、世界のスポーツ界に落ちている知見を、いかにして日本のスポーツ界に引き込むかということ。その結果として日本のスポーツ界が潤い、それがまた世界に飛び出していく。そういう流れを作るのが仕事だと考えています。

――「日本のスポーツ界は数的根拠が曖昧である」という話は、特に近年、よく耳にします。レピュコムジャパンは、具体的にはどのような事業を展開されていますか?

秦英之 スポーツを応援してくださる企業、すなわちスポンサーに対して、投資に対するリターンを最大化するツールを提供することです。主に調査やメディア評価を行っているのですが、銀行で資金を調達したり、投資したりする際には、数値を明確に示して可視化しなければなりません。その考え方や仕組みを作り、財源として必要な要素を流動化させる。それを徹底して行っています。

――スポンサーシップの意味を“見える化”するということですね。

秦英之 はい。これはよく「難しいこと」と言われますが、決してそうではありません。

スポンサーシップの目的は、一般的には4~5つあると言われています。1つ目はブランドの告知や価値の向上。2つ目は売上。3つ目はホスピタリティ。4つ目は社会貢献。5つ目は社員教育、あるいは意識向上という意味におけるインナーマーケティング。大切なのは、ピッチに看板広告を出して終わりではなく、その価値を最大化するために活動することです。

しかしその方法はいたってシンプルです。先ほどもお伝えしたとおり、最初の目的が如何にしっかりしているかによって結果を測ることができる。最初の目的が曖昧なら、結果も曖昧なものになってしまいます。私たちは、その目的をいかにして具現化するかというツールを提供しているのですが、そのほとんどは非常にシンプルな方程式によって導き出されています。いずれにしても、目的によって結果が変わる、それがスポーツ界におけるスポンサーシップの醍醐味であると思います。

――日本のスポーツ界においては特に「目的」が曖昧で、だからこそニーズが高まっている。

秦英之 間違いないと思います。そのロジックを理解してもらうことが何よりも重要で、数値化によって目的意識を明確にすれば、スポンサーシップはより価値のあるものになると考えています。

――今回の講義においては、そのあたりの具体例などをお話しいただけるとお聞きしました。

秦英之 はい。専門領域であるスポーツ・スポンサーシップの変革、その基本となる考え方やベストケースの事例、そういった内容をよりシンプルに、且つよりストレートにお伝えしたいと考えています。スポーツ・スポンサーシップの活用や効果測定、構図、考え方、実態というのは、なかなか伝わっていません。その実態を、いろいろな角度から分かりやすくお伝えしたいと思います。

――スポーツの見方が、大きく変わりそうですね。

秦英之 少なからず、新たな発見があるのではないかと思います。皆さんのご期待に応えられるよう、私が経験から学んできたことはもちろん、これからのスポーツ界にとって必要なことを共に考え、学べる場にしたいですね。

レピュコムジャパン代表取締役社長が語る「今のビジネスで活きているアメフト日本一の経験」/前編

レピュコムジャパン代表取締役社長が語る「ソニー時代のFIFA広告戦略担当経験」/中編

株式会社レピュコムジャパン
代表取締役社長
秦 英之(はた ひでゆき)

1972年生まれ。明治大学卒。
大学卒業後、ソニー株式会社で働く傍ら、アメリカン・フットボール選手としてアサヒビール・シルバースターで日本一を経験。同社には2012年まで在籍し、国際サッカー連盟(FIFA)とのトップパートナーシップ等、全世界を束ねるグローバル戦略の構築を担当。南アフリカワールドカップをはじめ、数々のFIFA大会を絡めた活動を推進。
現在はワールドワイドで展開するスポーツデータリサーチ会社であるレピュコム・インターナショナル社の日本法人の代表として、スポーツ・スポンサーシップに対する投資価値を同社独自の方法で評価・測定。サッカー(FIFA、UEFA、英国プレミアリーグ、リーガエスパニョーラ、ブンデスリーガ、セリエAなど)、野球(MLB)、アメフト(NFL)、バスケ(NBA)、ゴルフ(PGA)、アイスホッケー(NHL)、クリケット(国際クリケット連盟)、大学スポーツ(NCAA)等の団体に「生きたデータ」を提供し、企業とスポーツがより一層相乗効果を計れる仕組みを創出している。(日本ではJリーグやプロ野球チーム等と契約)
またスポーツに出資する企業にも、マーケティング戦略に不可欠なデータとして数多く採用されている。

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