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新天地川崎からリオへ、DF奈良竜樹「あの練習のおかげでピッチが広く見える」

2016.03.21

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インタビュー・文=安田勇斗 写真=ナイキジャパン

 昨シーズンはFC東京でリーグ戦不出場。しかし、リオデジャネイロ・オリンピックのアジア最終予選で4試合に出場し名誉挽回、今シーズンからプレーする川崎フロンターレでも開幕スタメンを飾り堂々たるプレーを見せた。上昇気流に乗る奈良竜樹は今何を思うのか。不完全燃焼の昨シーズンから歓喜のアジア予選、そして心機一転して迎えた現在の心境に迫った。

――今シーズン、川崎フロンターレに加入しました。移籍はどういう形で決まったのでしょうか?

奈良 (コンサドーレ)札幌に戻ることも考えたんですが、なんか逃げる感じがしてどうしようかなと。FC東京で1年間試合に出られなくて、J2に戻っただけになってしまうので。FC東京からも「残ってほしい」と言っていただいたのですが、森重(真人)選手と丸山(祐市)選手がいる中でポジションを確保することの難しさはわかっていますし、そんな中で川崎から話をもらいました。川崎は見ていて面白いサッカーをするチームという印象を持っていて、まさかオファーが来るとは思っていなかったんですけど、迷った末に川崎に行くことを決めました。

――川崎の一員になって驚いたことなどはありますか?

奈良 外から見ているよりもテンポが速いことですね。まだそのテンポに付いていけないですし、ボール回しとかも難しいなと感じています。

――川崎の練習では、狭いエリアで大人数でのミニゲームをよくやっていますが、パスがなかなかつながらず難しいトレーニングに見えます。

奈良 そうなんですよ(苦笑)、パスをつなぐスペースがないですから。でもああいう練習を毎日やっているおかげで、試合の時はピッチがめっちゃ広く見えるんです。まだ全然パスがつなげないですけど、あの練習が良い訓練になることはわかっていますし、その成果を試合で出していければと思っています。

――今シーズンは新天地でのスタートになりますが、学生にとってもこれから新学期を迎えるタイミングです。新しい環境で何かを始める時に心がけていることはありますか?

奈良 同じチームだったらそれほど変えることはないですけど、場所が変わる時は周りのやり方をずっと観察します。まずは自分の特徴を出していくのではなく、他の人たちがどういう感じでやるのか、どういう特徴を持っているのかを観察して、環境になじめるようにしています。

――話は変わりますが、リオデジャネイロ・オリンピックのアジア予選についてお聞きします。大会全体を振り返って、自身のパフォーマンスはいかがでしたか?

奈良 正直そんなに良くなかったと思います。FC東京で試合に全く出られなくて、「自分の良さって何だろう」って迷ってたところもあって。岩波(拓也/ヴィッセル神戸)や植田(直通/鹿島アントラーズ)が試合に出ている中で、「どうやったらあいつらに勝てるんだろう」っていろいろなものが定まらなくて、ふわふわした気持ちのまま終わった感じでしたね。

――アジア予選で優勝に貢献して、川崎でも開幕戦のサンフレッチェ広島戦でスタメンフル出場を果たし、評価は高まっていると思いますが……。

奈良 その準決勝のイラク戦とか広島戦とかの1試合で評価されるのは、結局それまで何もできていないからなんですよね。ポーンって出てきたってだけで。常に活躍している選手ならそれぐらいで評価が変わることはないので。だからちょっとしたプレーで驚かれなくなるぐらい、活躍を続けていかないとダメだなと。

――性格的には意外と慎重なタイプのようですね。

奈良 そうですね。元々どの世代でも飛びぬけた存在ではなかったですし、小、中、高と常に自分より上の選手がいたので。悪く言えばネガティブ(苦笑)、良く言えばあまり浮かれないタイプだと思います。

――自分の一番の持ち味は何だと思いますか?

奈良 ポンと出てこないんですよね(苦笑)。一対一が強いとか、ヘディングが強いとか言ってもらうことはありますけど、思い返すと一対一であっさり抜かれることもありますし、ヘディングで勝てない時もあるので。そう考えているうちに、自分は「弱点がない選手」になりたいと思うようになりました。前に行けるし、カバーにも行けるし、ヘディングもそこそこ強くて、パスをつなぐこともできる。そういう選手になりたいなと。

――それは「何でもできる選手」という意味でしょうか?

奈良 そうですね。ただイメージ的には「何でもできる」ではなく、「できないことがない」という感じです。微妙なニュアンスの違いですけど。

――参考にしている選手はいますか?

奈良 チアゴ・シウヴァ(パリSG)ですね。よくプレーも見ますし、参考にしています。昔は(カルレス)プジョル(元バルセロナ)が好きでカッコいいなと思ってたんですけど、その後(ニコラス)オタメンディ(マンチェスター・シティ)がいいなって思うようになって、でも2人にも弱点というか苦手な部分があって、そう考えているうちにチアゴ・シウヴァに行き着いたんです。ダメなところがない選手ですごいなって。ただ好きな選手は結構ブレるんですよ(苦笑)。この選手いいなって思ってても、違う選手を見てこっちがいいなと思ったり。まあ今はいろいろなものを吸収する時だと思うので、いろいろな選手を参考にしていきたいなと思っています。

――最後に今シーズンの抱負をお願いします。

奈良 クラブで1年間、試合に出続けるイメージでやっていきたいです。その上でDFなのでリーグ戦では1試合1点以内、34試合で33点以下に抑えることができれば優勝も狙えると思っています。ただ具体的な数字よりも、個人的には前線の選手がやりやすい環境を作ることをより意識していきたいなと。自分たちがずるずる下がると、前の選手は攻撃に集中できなくなりますし、そういうストレスを与えないことが大事だと思うんですよね。攻撃的なチームなので4バックでも1人上がって、3人で守る場面が多くなるんですけど、そこでもしっかり対応できるようになれば、チームはより攻撃的に戦えるかなと。

――試合に出続ければリオ五輪のメンバー入りも見えてきます。

奈良 本大会はアジア予選よりも登録の枠が少ないですし、オーバーエイジ枠もあるので、クラブで試合に出てない選手が呼ばれるほど甘い選考にはならないと思っています。クラブで輝いている選手しか選ばれないと思うので、まずはクラブでしっかり結果を出してメンバーに選ばれること。その上でメダルを取ることを目標にしていきます。

By サッカーキング編集部

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