【レポート】ガンバ大阪社長が語る、新スタジアム建設からみる経営戦略

3月23日(水)に大阪府吹田市の市立吹田サッカースタジアム記者会見室にて、サッカーキング・アカデミー特別セミナー「新スタジアム建設からみるガンバ大阪の経営戦略について」が開催された。当日は10代から60代までの幅広い年代から100名を超える参加者が訪れ、講師の言葉に熱心に耳を傾けた。

今回の講師は株式会社ガンバ大阪 代表取締役社長 野呂輝久氏。名古屋大学を卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)に入社し、システム営業担当、秘書課長、広報部長など幅広い経験を積む。その後、2012年にパナソニックからの出向という形でスタジアム建設本部本部長としてガンバ大阪に入り、翌2013年に代表取締役社長に就任した。

現役のJリーグクラブの社長がクラブの経営戦略を語るこのセミナーは、チームの紹介から始まった。ホームタウンとするエリアや、アカデミー出身選手の割合の高さ、そして日本代表経験のある選手について、さらには過去数年間の戦績に話がおよんだ。

過去の戦績に触れる上で避けて通れないのが、2012年のJ2降格に関する話題である。その時の経験から「我々の居場所はやはりJ1だと確信しました」と苦労をのぞかせた。しかしガンバ大阪は圧倒的な強さを見せ、わずか1年でJ1復帰を果たし、翌年にはJリーグ、ナビスコカップ、天皇杯の三冠を獲得する。この一番の要因について「どんなビジネスでも共通だと思いますが、やはり中長期的な計画が非常に重要です。私たちは5年先を見越し、選手の年俸計画まで立てています」と先を見通すことの重要性を述べた。

話題は募金団体設立から5年半の歳月を掛けて建設された、新スタジアムに移る。募金活動時のエピソードや、建築中に発生した諸問題について解説。「募金活動はホームゲームではもちろん、地元商店街でも行いました。選手にも数名でいいので参加して欲しいと伝えたところ、ほとんどの選手が協力してくれました。嬉しかったと同時に、やはり選手たちも専用スタジアムが欲しいのだと感じた瞬間でした」と当時を振り返った。

また、今後の展開としてスタジアムの新たな活用法や、アジアからのインバウンドに合わせた観光スポットとしての展開についても語った。今後はスタジアム規格の変化に伴い国際スポーツ大会を誘致出来るようになったことや、試合日以外の”にぎわい”を創出することでスタジアムを活用していく。また、既存の観光施設や関西圏の他サッカークラブ、野球球団とも協力し、スポーツツーリズムとして関西圏全体を盛り上げる中心を担っていく。新スタジアム建設に伴い、960億円以上の経済効果が見込まれるとの試算結果も明らかにした。

終始参加者の心を惹きつける野呂社長の講演であったが、時折「脱線ですが」と前置きをして話すこぼれ話も、多くの笑いを呼んでいた。そして最後に「ぜひこのスタジアムで試合を観戦していただきたい」と語り、セミナーは幕を閉じた。

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