ほんの15年前まで、日本人が欧州のビッグクラブでプレーすることは『キャプテン翼』の世界でしか起こり得ない夢物語だと思われていた。
1996年のアトランタ・オリンピックで日本がブラジルを破った際には”奇跡”と表現された。1998年のフランス・ワールドカップでは全敗で大会を去った。日本と世界との距離は、確実に遠かったのだ。
しかし日本サッカーは以降、目覚しい発展を遂げ、オリンピックでスペインを破っても「実力」と認知されるようになった。44年ぶりのベスト4へ進出してなお、メダルを取れなかったことへ対する不満を口にするようになった。
クラブチームにおいても三浦知良、中田英寿、中村俊輔らが着実に道を切り開き、いまや日本代表の半数以上が海外組という時代を迎えた。
そして、その最先端を行く男がサッカーの母国イングランドにおいて旋風を巻き起こしている。いや、まだ序章にすぎないその活躍だが、1888年にプロリーグが発足した世界一の伝統を誇る国で最も注目される選手の一人となったことに疑いの余地はない。しかも所属するのは、世界有数のビッグクラブ、マンチェスター・Uだ。
プレミアリーグを2節消化し、イングランドの人々も気づきはじめた。香川が、アジア人にユニフォームを売るために買われた選手ではないことを。香川が、ドルトムントを2連覇に導いてきた選手だということを。
香川真司が与えた鮮烈な印象を、海外紙や指揮官の評価とともに振り返っていこう。
文=松岡宗一郎(サッカーキング編集部)
主要各紙が香川を高評価
第2節フルアム戦の採点
『スカイスポーツ』7
『サン』8
『デイリースター』8
『ガーディアン』マン・オブ・ザ・マッチ(採点なし)
何の不思議もないスタンディングオベーション(デイリーミラー紙)
『デイリーエクスプレス』
「香川真司に求められているのは、ポール・スコールズから中盤のゴールマシーンとしての役割を引き継ぐこと」
『ガーディアン』
「ユナイテッドはエヴァートン戦で0−1と敗れた。しかし香川のタッチ、ヴィジョン、そして動きは印象的だった。マンチェスター・シティはダビド・シルバというロックピッカー(車の鍵が開かなくなったときに使う特殊な工具)がいる。チェルシーにおけるフアン・マタもそうだ。ユナイテッドが復権するための、攻撃面の鍵を握るのは香川だ」
「香川が輝きを放ち続ければ、ルーニーもスタメンに戻れるように努力することだろう」
『サン』
「昨シーズン、ドイツでナンバーワンと評価された実力を証明した」
『デイリーミラー』
「香川が交代する際にスタンディングオベーションが起こったが、何の不思議もない出来事だった。彼のスピードやパスがフルアムを脅かしていた」
『caughtoffside.com』
プレミアリーグ“新戦力トップ5”に選出
「日本代表の香川はドイツでブンデスリーガ2連覇に貢献。今はイングランドのトップリーグでも同じような働きをすることを、サー・アレックス・ファーガソン(監督)に期待されている。1200万ポンド(約15億円)の移籍金はバーゲン価格だった。エヴァートンに敗れた開幕戦でも、彼は本物のクオリティを見せていた」
香川ならシーズン10点は取れる(ファーガソン監督)
「ブライアン・ロブソンは1ダースの得点を挙げることもあったし、最盛期のポール・スコールズなら10ゴール前後は取っていた。最近はMFのそんな得点数を見ていない。ロビン・ファン・ペルシーも加わったし、私は香川ならそれができると信じている。得失点差でタイトルを失うのはもうごめんだし、得点数は重要なんだ」
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