[ワールドサッカーキング 0920号掲載]
ペルーの英雄、クラウディオ・ピサーロが5シーズンぶりに古?バイエルンに舞い戻った。ブンデスリーガの戦いを知り尽くす歴戦の勇者は、バイエルンの復権に貢献できるのか。新たな挑戦に燃えるピサーロが、今シーズンに懸ける思いを語った。
インタビュー・文=ディルク・ギーゼルマン 翻訳=阿部 浩 アレクサンダー
「クラウディオ・ピサーロとマリオ・マンジュキッチがいたら、チャンピオンズリーグ決勝でチェルシーに敗れることはなかった」
2人の加入が決定した時、ユップ・ハインケス監督はこう語った。ドルトムントの勢いに押され、ドイツサッカーの盟主としての立場が揺らぐバイエルンにとって、これ以上の失敗は許されない。失地回復の切り札として獲得した2人のストライカーに大きな期待を寄せるのは当然のことだ。
ピサーロにとっては実に5年ぶりのバイエルン復帰となった。2001年夏からの6年間の在籍では、公式戦通算100ゴールを達成した。その後、チーム編成上の都合で退団を余儀なくされたが、ブレーメンでも持ち前の得点感覚を遺憾なく発揮。ペナルティーエリア内での抜け目ない動きと勝負強さは今でもブンデスリーガで群を抜く。その点が評価され、今回バイエルンからオファーが届くに至ったのだ。ピサーロは自分に何を求められているのかを十分に理解している。円熟のストライカーの新たなチャレンジが始まった。
ここは優等生の仲良しグループじゃ勝ち残れない世界なんだ
まずは率直に聞きたい。なぜ、バイエルンへ復帰することにしたの?
ピサーロ 33歳になったけど身体的な衰えは感じていない。今まで素晴らしい経験を積んで、キャリアとしてはピークにあると思っているくらいだ。だから、もう一度タイトルを獲得するためにプレーしたかった。そのためにバイエルンを選んだのさ。
フランツ・ベッケンバウアー名誉会長は過去2年間のバイエルンの不振について「個性的な選手を欠いていたからだ」と分析している。このことについてはどうだろう?
ピサーロ 正論だよ。俺はずっとドイツサッカーを見ているけど、闘志溢れるリーダーがピッチにいてこそチームは機能する。オリヴァー・カーン、シュテファン・エッフェンベルク、マルク・ファン・ボメル、ミヒャエル・バラックといった連中が引っ張っていたからこそ、バイエルンは強かった。ここは優等生の仲良しグループじゃ勝ち残れない世界なんだ。
じゃあここ何年かのバイエルンにはリーダーがいなかったということ?
ピサーロ いや、バスティアン・シュヴァインシュタイガー、フィリップ・ラーム、マヌエル・ノイアーがいたけどね。
でも、それじゃ足りないと感じたからこそ、クラブは君を復帰させた……。
ピサーロ もちろん、リーダーの一人としてチームを引っ張ろうと思っている。俺はこう見えて責任感が強いんだ。ブレーメンでもそうだったしね。
チームにおけるリーダーシップというのは、具体的に何なのかな?
ピサーロ 大事なのは、チームが結束して一つの目標に向かっていくことだ。そのためには試合でも練習でも、仲間から信頼され、若い選手たちの模範でなくてはいけない。そう、全員から認められてこそリーダーと呼ばれるんだ。
でも、バイエルンに復帰した君を待ち受ける声には厳しいものがあるね。
ピサーロ ああ、知っているよ。つまり年寄りってことだろ(笑)。でも俺はまだ33歳なんだけどな。15年間プロとしてやってきたけど、まだまだ活躍できるつもりだ。周囲がどう言おうが、俺はプロとして十分な準備を整え、新しい冒険に乗り出す覚悟だよ。
今シーズンの目標は?
ピサーロ リーグ優勝だ。絶対に優勝しなくてはいけないと思っている。優勝は俺個人のためでもあるし、クラブのためでもある。もちろん、ドイツカップでもしっかりと勝たないといけない。バイエルンは昨シーズン、ドルトムントの“ダブル”を許した。こんなことを繰り返すわけにはいかない。