[ワールドサッカーキング 1004号掲載]
セバスティアン・ケールはチームの主力がどれだけ入れ替わろうとも、ドルトムントの実力を確信する。11年間、チームのために戦ってきた男が、今、改めて自身の忠誠心について語る。
インタビュー・文=アンディ・ミッテン
僕はこのクラブの落胆や成長を見続けてきた
今シーズンのドルトムントは3連覇を達成できると思う?
ケール 僕らは自分たちの力を誇っていいと思う。素晴らしいシーズンを2年連続で過ごしたんだからね。しかもクラブ創設103年目にして初めて、リーグとカップの両方を勝ち取ることができた。とてもすがすがしい気持ちだし、この経験は僕らを更に強くすると思うよ。全員が「3連覇も夢じゃない」と感じているのは事実だけど、新シーズンはまだ始まったばかりだ。現時点ではどのクラブも横一線だということを肝に銘じるべきだね。
ドルトムントがタイトルを防衛した時、ユルゲン・クロップ監督は君に対して「ドルトムントはケールのチームだ」と言った。これはどういう意味だと思う?
ケール 僕が移籍してきた2002年当時は、クラブ経営はボロボロだった。だけど今、このチームは信じられないような成功を収めている。つまり、僕は長い間ドルトムントにいて、このクラブの落胆や成長を見続けてきたわけさ。監督は、僕がチームの苦しい時代を知っているからこそ、信頼してくれているんだと思う。それに、キャプテンの僕はチーム全体を引き締めていかなければならない立場にある。だから監督は期待を込めて、そう言ってくれたんだよ。
若くして素晴らしい活躍を見せているマリオ・ゲッツェやマッツ・フンメルスといった選手たちが、ドルトムントとの契約を延長した。彼らの契約延長は、3連覇を狙うチームにとって重要なことだったのでは?
ケール 彼らのような才能ある選手がドルトムントと長期間の契約を結んでくれてうれしく思う。優れたクラブは若く有能な選手を正当に評価するものだ。ドルトムントが彼らに対して好条件のオファーを出したのは、正しいことだったと思うよ。でも、たとえ有能な選手がこのクラブから離れて行っても、僕らは良いチームであり続けなければならない。クラブというものは常に変化していくものだしね。
今シーズンのCLに懸ける思いはかなり強いよ
昨シーズンのドルトムントは、国内リーグで良い結果を残した一方、チャンピオンズリーグでは散々だった。ヨーロッパの舞台で好成績が残せなかったのはどうしてだと思う? そしてあの失敗から君たちは何を学んだのかな?
ケール 確かに昨シーズンの僕らはCLで良い戦いを見せることができなかった。これに関して言い訳するつもりはないよ。でも、僕らはたくさんのことを学ぶことができた。ヨーロッパでの戦いに求められるスタイルやスピリットはどんなものかということをね。だから、今シーズンこそは良い結果を残すことができるはずだ。昨シーズンの苦い経験はきっと生きると思うよ。
ドルトムントは今シーズンの目標をどこに設定している? 欧州制覇? それともすべての大会で優勝することかな?
ケール 僕らは近年のCLで良い戦いができていない。だからあの大会に懸ける思いはかなり強いよ。だけど欧州制覇というのは、ちょっと目標が大きすぎるかもしれない。まずはグループステージ突破を最初の目標に設定して、それが達成できたらあとは1試合でも多く大会を楽しみたいという感じかな。今言えるのはそれだけだよ。
君は現在32歳だ。ドイツ代表からは長い間遠ざかっているけど、まだ代表でプレーしたいという気持ちはある?
ケール 僕は代表の一員として、たった34試合にしか出場していない。この数字は正直、物足りないと感じているよ。だけど、背中に古傷があって、リーグ戦と代表戦の両方を戦うのはなかなか難しい。体はうそをつかないからね。
ドイツ代表としてプレーすることは、君にとってどれぐらい重要なもの?
ケール その国で最も重要なチームが代表だ。そういうチームでプレーするということは、プロサッカー選手にとって何ものにも代え難い価値がある。でも、さっきも言ったように僕には古傷がある。だから代表とクラブでの戦いを両立させるのは難しいんだ。それに、僕はドルトムントのファンを愛している。彼らはいつだって僕ら選手を温かく応援してくれるからね。そんなファンにもっと喜んでもらえるよう、僕はこのクラブで努力を続けたいと思っている。
国外でプレーしてみたいとか、ドルトムント以外のチームでプレーしてみたいという気持ちはない?
ケール 僕は今、ドルトムントとの契約下にある。そして、このクラブに忠誠を誓っているんだ。家族もこの街に住んでいるし、毎日をハッピーに過ごしている。移籍する理由なんてどこにもないよ。実は、この夏にスペインやイングランドのクラブからオファーを受けた。でも、将来について迷いはなかったよ。最初からここに残ると心に決めていたからね。