[サムライサッカーキング2月号掲載]
ロンドン・オリンピックで日本のベスト4進出に大きく貢献し、ドイツからオランダへと戦いの場を移した大津祐樹選手。ウインターブレイクの帰国中に、前半戦の手応え、後半戦の抱負を語ってもらいました。
「2013年はすごく大事な年になる」
世界の舞台で躍動する“大津祐樹の2013年”に注目です。
インタビュー・文=浅野祐介 (@asasukeno ) 写真=佐山順丸(CRACKER STUDIO)
シーズン前半戦のポジティブな手応え
──新天地での今シーズン、前半戦を振り返ってご自身での評価はいかがですか?
大津 夏に移籍して、(ロンドン)オリンピックでちょっと出遅れましたけど、やっと慣れてきたかなというのは感じます。
──VVVは第18節を終えた段階で16位。なかなか浮上のきっかけをつかめていませんが、今のチーム状況をどのように感じていますか?
大津 12月に入り、数試合は本当に良い戦いができていたので、2013年に向けてはとてもポジティブになったと思います。
──シーズン半分を終えて、移籍をして良かったと思う点は?
大津 昨シーズンはあまり試合に出ることができなかったので、そういう意味では、出場機会という部分ですごく良かったと思っています。でも、本当の意味で移籍が正解だったか、そうでなかったかは、1年を通して結果が出た時に分かることだと思いますし、これからが大事になると考えています。
──VVVはこれまで本田圭佑選手、吉田麻也選手、そして現在のカレン・ロバート選手と、日本人選手が多く在籍しています。彼らと比べられることはありますか?
大津 日本人への評価という点ではすごく高いところもあるので、温かく迎えてくれるクラブだと感じます。他の日本人選手と比べてどうこうというよりは、そっちのほうが強いですね。
──土壌として、日本人を迎える環境が整っていると。
大津 チームメートもそうですし、やっぱり日本に対して興味を持っている選手もすごく多いです。すぐに「日本語教えてくれ!」と言ってくるので(笑)。
──具体的にはどんな日本語を教えているんですか?
大津 麻也君とか本田さんがいたので、自分が来た時には、もうちょっとずつは覚えていて、「こんにちは」とか「元気ですか?」とか、あいさつレベルの言葉は全部いけますね。最近はちょっと難しい言葉を教えてあげることもあります。
──どういった言葉ですか?
大津 この間は「愛してる」をマスターしてもらいましたね。あとは、ちょっと言えないのとかもあります(笑)。
──けっこう似たような話を聞きますけど、「ちょっと言えない」言葉のほうが多かったりしますよね(笑)。
大津 多いですね(笑)。
── では、あまり深掘りするのはやめて、話題を変えます(笑)。先ほど日本人選手の話をうかがいましたが、カレン選手は大津選手にとってどういう存在ですか?
大津 ボビさん(カレンの愛称)は、いろいろと苦労を経験している選手だと思うんです。どんな時も黙々とやっていて、今、また試合に出る機会がすごく多くなってきていますけど、その姿を間近で見ている自分としては、すごく尊敬できて、すごく心強い存在の選手です。ケガとかもあってプレーできなかった時もありますけど、高校生の時から本当にすごい選手だし、気持ちの面でも勉強になるところがたくさんありますね。
──カレン選手以外で仲の良いチームメートは?
大津 基本的にみんな仲が良いですけど、ウチェ(ヌウォフォル)とかヤニック(ヴィルスフート)ですね。
──チームメートからは何と呼ばれているんですか?
大津 「ユウキ」って呼ばれたり、「ユキトリ」って呼ばれたりします。
──ユキトリ?
大津 「ヤキトリ」と「ユウキ」をかけて「ユキトリ」です。もともと、「ヤキトリ」という言葉を覚えていて、その流れで「ユキトリ」に。それが今、みんなの中で流行っていますね。ヤニックとかは「ヤニトリ」って呼ぶとめっちゃ喜ぶ(笑)。そんなくだらないことをやってます。
──連載の中で、「守備的になって結果が出るようになった」と話していましたが、改めて、VVVはどんなスタイルのチームですか?
大津 今は本当に守備が安定してきていて、年内最後の試合はちょっと崩れちゃいましたけど、それまでは失点も抑えていました。ただ、フェンロのスタイルは難しい。表現しづらいんですよね。
──分かりづらいと。
大津 そう、分かりづらいです。本当に分かりづらい(笑)。でも、攻撃は自由にできるので、自分としてはすごくやりやすいですね。
──チームの中で自分に求められている役割はどんな点にあると思いますか?
大津 攻撃の面では、アイデアであったり、結果の部分でもあったり、そういう部分は求められていますね。ディフェンスも「チームとしてはやってもらいたい」とよく言われますけど、自分は攻撃の選手ですし、攻撃のところで自分の力をより発揮できるようにと考えています。
──ドイツでの経験が役に立っている部分はありますか?
大津 ドイツでの経験というよりは海外での経験ですね。そういう意味では、オランダもドイツもあまり変わらない。もちろん、チームの戦術が違ったりはしますけど、海外での生活には変わりがないので、そういう部分は役に立っていると思います。いろいろなことが分かるというか。
──ドイツとオランダで、どちらが住みやすいというのはありますか?
大津 ドイツの時に住んでいたところから30分しか移動していないんで、変わらないです(笑)。
──確かに、近いですもんね。
大津 もう少し遠くなれば違いも分かるかなと思いますけど、今は全然感じないですね。
──普段の食事は?
大津 食事は自分で作ってます。
──得意料理は?
大津 ハンバーグですね。味には自信があります。
2013年はすごく大事な年
──先ほど「12月に入り」という話が出ましたが、大津選手自身、得点やアシストといった部分で結果も出始めています。その要因はどういうところにあると思いますか?
大津 一試合一試合、こだわりを持ってプレーすることがすごく大事になってくるので、本当に結果を毎試合出すつもりでプレーしているからだと思います。
──シーズン半分を終え、手応えとして得たものと、逆に後半戦に向けての課題と感じているところはいかがですか?
大津 後半戦に向けて良い状態に持っていかなければいけないと思っています。課題というよりは、やらなければいけないと思っていますし、ネガティブな要素は全くないですね。半年間、オランダのサッカーを経験して、だいぶ慣れてきましたし、後半戦はすごく楽しみです。
──後半戦のチームとしての目標と個人としての目標を教えてください。
大津 チームとしては、勝ち点をどんどん積み重ねていくことがすごく大事になってくるので、毎試合、勝つつもりで戦って、順位を一つでも上げられるように頑張るだけですね。個人としては、やっぱり結果が大事になってくるので、アシストでも得点でも、とにかく数字に残るようにプレーしたいと思っています。
──半年間プレーしてみて、「オランダサッカーの楽しみ方・見所」というのはどういうところにあると思いますか?
大津 縦に速い、面白いサッカーをするので、ウイングの戦いだったり、前に仕掛けるスピード感が魅力的なリーグだと思います。ドイツとか日本の場合は堅実な部分もありますけど、オランダの魅力は「とにかく前に」というところかなと。
──印象として、一対一の局面がすごく多いように感じます。
大津 そうですね、対人はすごく多いです。僕はオフェンスの選手なので、そういうところも、すごく楽しいですね。
── 日頃から海外でプレーする中で、今、大津選手が理想とする選手像はどういうものですか?
大津 やっぱり、結果を残す選手。選手として数字を残すことは、自分の中で重点を置いています。プレー内容ももちろんそうですけど、内容が良くても点を取らなかったり、アシストをしなかったら意味がないと思うので、今はもっと結果にこだわりを置いています。
──ドイツ、オランダという環境でサッカーに触れてみて、改めて感じた日本サッカーの魅力についてはいかがですか?
大津 足元の技術がしっかりしているし、それは今までJリーグでやってきてすごく良かったなと感じています。それから、戦術の理解度。技術や戦術は日本の強みだと思っています。
──では逆に、世界と戦う上でレベルアップすべきだと思う部分は?
大津 球際であったり、メンタルの部分であったり、“強さ”というところは、まだちょっと欠けているかなと思います。
──環境面での違いはいかがですか?
大津 スタジアムの規模やサポーターの数だったり、そういうのは本当に違うなと感じます。フェンロは少なめですけど、ドイツでやっていた時は観客が5万人もいましたし、どの試合もホームのようでした。これは、すごく大きいことだと思います。
──海外で周囲からの信頼を勝ち取るために重要なことは何ですか?
大津 それこそ結果だと思っています。結果を出せば、みんながついてくると思うし、普通に考えて、たくさん点を取るヤツが目の前にいればアシストしたくなりますよね。それと同じように、FWからしても、何度も良いパスをくれる選手からボールをもらおうとするし、結果主義だと思っています。
── 12年はロンドン五輪もあり、移籍もあり、忙しい一年でしたね。
大津 忙しく、いろいろと経験できて、変化がすごくあった年だと思っています。
──五輪を経て、日本代表への思いで変わった部分はありますか?
大津 また日本代表に選ばれたいという気持ちは強くなりましたね。目標の一つですし、黙々とやるだけです。
──久しぶりの帰国だと思いますが、日本でやりたいことは?
大津 美味しいものを食べたり、高校の友だちと会ったり、(柏)レイソルのチームメートと会ったり、いろいろな人に会うことでリラックスもできるので、楽しみたいですね。
──今、一番何を食べたいですか?
大津 焼肉を食べたいですね。
──美味しいものと言えば、オランダの料理はいかがですか?
大津 クロケットとか、ヘハックトバルっていうミートボールですかね。美味しいんですけど、味が濃いので、毎日は食べないですけどね(笑)。
──分かる気がします(笑)。では、オランダと日本との違いでカルチャーショックを受けたことはありますか?
大津 ドイツの時もそうでしたけど、あまりないですね。
──以前、内田篤人選手に尋ねたら「みんな時間にルーズ」と言っていました。
大津 僕の場合は、自分が一番ルーズですね。チームでいつも言われてます(笑)。もともとマイペースなので、時間のルーズさは感じたことがないですね。
──そういう意味でも合っているのかもしれないですね(笑)。
大津 そうですね。海外向きかもしれません(笑)。でもやっぱり、日本人のほうがテキパキしてますよね。だから余計にルーズに感じるんじゃないですか。そういう意味で、外人なのかな僕は(笑)。
──では、違いを感じる部分はゼロ?
大津 一つありました。違いを感じたのは、コミュニケーションの部分。日本との差は、グイグイ来るところですね。みんなすごくコミュニケーションを取ろうとするし、うるさかったりします(笑)。
──もう慣れました?
大津 慣れました。
──自分からも主張はするんですか?
大津 もちろんです。自分からいかないと相手にしてくれないですから、ガツガツいきます。
──久しぶりの帰国で感じた「日本ってここが良いな」という部分は?
大津 全部じゃないですかね。環境もそうだし、サービスも良いし、日本語も通じますし(笑)。本当に、良いとこだらけだと思います。でも、それってやっぱり日本を離れてから気付くこともあって、日本にいる時は「それが当たり前」だと思っていましたし。
──シーズン中のオフは何をして過ごしているんですか?
大津 買い物に出かけたり、旅行したりですね。買い物はデュッセルドルフが多いです。便利だし、日本食もあるし。服もデュッセルドルフで買うことが多いです。フェンロだとあまりないので、あとはベルギーに行ったりもしています。
──今、はまっているものは?
大津 買い物と旅行ですかね。ただ、買い物や旅行は「はまっている」というより生活の一部みたいになっちゃってますけど(笑)。僕のリフレッシュ方法です。
──服の収納は大丈夫なんですか?
大津 たまる一方なので大変です。家のクローゼットが心配ですね。もうけっこうパンパンですし(笑)。冬物買っちゃうと、特にかさばるので。
──語学の上達はどうですか?
大津 フェンロに入った時よりはかなり上達しました。ドイツ語から英語に切り替わって、英語の勉強を週3のペースでやっています。
──家庭教師ですか?
大津 いや、クラブです。練習が終わったら、すぐに授業が始まる感じです。練習よりも授業のほうが長い場合もありますけど、自分としては「それも練習の一つ」だと思っているので苦にはなっていません。少しずつ分かるようになってきているし、すごく良いことだと思います。
──ドイツ人女性、オランダ人女性、日本人女性、一番魅力を感じるのは?
大津 日本人ですね。海外の女性は、ちょっと気が強いイメージがあるので。
──気が強い女性は苦手ですか?
大津 そういうわけでもないですけど、みんなが思っている「気が強い」以上に「気が強い」と思うんですよね(笑)。
── なるほど( 笑)。では、次の質問。サッカー選手になっていなかったら、どんな職業に就いてみたかったですか?
大津 美容師ですね。本気でなりたいと思った時期もあります。
── 10年後や20年後の自分をイメージすることはありますか?
大津 ありますけど、何が起きるか分からないですし、先は見えないです。でも、今はサッカーのことだけ考えていればいいかなと思います。
──では、最後に13年の抱負を教えてください。今年は大津選手にとってどういう年にしたいですか?
大津 今以上に大きく成長できるように、個人でも結果を出しつつ、チームも良い順位にもっていかないといけないので、そういう意味ではすごく大事な年になってくると思います。自分のスタンスとして、具体的な数字目標は掲げませんけど、一試合一試合を大切に、1点取ったら2点目というように僕は言い続けているので、そのスタンスは13年も変わらないですね。
──読者に向けてのメッセージもお願いできますか?
大津 支えてください(笑)。でも、本当に応援してほしいですね。チームが勝てるように祈っていてください。