三浦知良インタビュー「デビュー戦でドゥンガにこっぴどく叱られた」

[サムライサッカーキング 3月号掲載]
今年で10回目を迎えたグアムでの自主トレーニング。日の出とともに目覚め、ランニングし、美味しい朝食を摂る。15歳でブラジルに旅立ち、18歳でプロ契約を果たすも、「そんなに甘くはなかった」と振り返るブラジル時代。SAMURAIたちの先駆者として、いち早く世界への扉を切り拓いた三浦知良が語るサッカーへの純粋なまでの熱き思い。46歳を迎える今年も、カズは変わらずボールを蹴り続ける。


インタビュー・文=岩本義弘 写真=高須力

実力がすべて、というのが本当の体育会だと思う

──15歳で単身ブラジルに渡り、厳しい環境に打ち勝ちプロ選手となりましたが、プロ選手になってから大変だったことは何ですか。

三浦 タッサ・サンパウロ(サンパウロ州の21歳以下の大会)で活躍して、プロ選手になり、プロ選手相手の紅白戦に出たら、これが結構やれるんですよ。ただ、試合になると通用しなくなる。プロの本番の試合は、全く別モノなんです。練習と試合では動きが全く違うというところも、プロのすごさの一つだと今でも感じますね。それはJリーグでも言えることで、生きの良い大学生がパッと入って、即レギュラーでできるかというと、試合ではうまくいかない、なんてことが多々あります。きっと、それが経験なのかと。実際、僕もブラジルでやっていた頃は、あの大観衆の中でやるのは震えていましたから。それと、(サントス時代)僕はチームメートにドゥンガがいて、デビュー戦でドゥンガにこっぴどく叱られた影響で萎縮してしまって、何もできなかった苦い思い出があります。僕はまだ19歳だったし、とにかくドゥンガの迫力にビビっちゃったんですよね(笑)。ドゥンガは遠征とかで同部屋の時はすごく優しいんですけど、試合になると言葉は汚いし、うるさいし(笑)。彼の中ではああやって気持ちを盛り上げているのかもしれないですけどね。ジュビロ(磐田)でもすごかったですし、ブラジル代表でもベベットとかに怒鳴り散らしてるのを何度も見ました。本当にすごい。まあ、ドゥンガの場合は、いつもそうなわけですから、そんなに気にすることはなかったのかもしれないですが、「日本人で未熟だから言われてるんだろうな」って思ってしまって、結果的に委縮しちゃっていましたね。

──プレー中に委縮するカズさんは、あまりイメージできませんが……。

三浦 そうですね。調子が悪い時や、コンディション面で不安を抱えている時に、グラウンドで自信が持てない、という時は時折ありますけど、委縮した経験はあの時だけかもしれません。プロデビューだったというのもあるし、ドゥンガが当時既にブラジルのユース代表の選手で、ワールドユース(現U- 20W杯)でも優勝したメンバーの一人だったということもあるかもしれません。あの時、僕が19歳で、ドゥンガは23歳、当時のサントスには、82年W杯ブラジル代表のFWセルジーニョ、のちに柏レイソル監督も務めたウイングの名手ゼ・セルジオ、ウルグアイ代表GKのロドルフォ・ロドリゲスといったメンバーが顔を揃えていて。ブラジル人選手たちの半数以上は、ブラジル代表経験があったと思います。そんな豪華なメンバー相手にもかかわらず、移籍してきたばかりの若いドゥンガが、大先輩たちにスラングで罵声を浴びせるんです。ドゥンガはまだブラジルのA代表の経験はなかったはずなのに、元代表やベテランの選手が相手でもすごく口汚く罵っていた。試合中とはいえ、若手とは思えないような態度の大きさでした。もちろん、言われるばかりじゃなく言い返す人もいましたけど、ドゥンガは自分自身も厳しく律してしっかりとやるべきことをやるから、僕の知る限り、グラウンドの中で陰湿な関係はなかったです。サントスは週に1回、必ずみんなでサントスの海から少し行ったところにある島でシュラスコパーティーをやっていました。年齢関係なく、実力がすべて、というのが、本当の体育会系だと僕は思っています。

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